【悼む】車輪の一歩
斎藤洋介さんが亡くなり、今日は初七日くらいだろうか。
三宅裕司のSETを立ち上げた人。山本麟一さんに健さん、田中裕子さんを輩出した明大出身でもある。
氏はVシネマ『口裂け女2』(実は、蓋し名作です)でも岐阜で養鶏場を営む、すこぶる温厚な父親を演じていた。家族を娘たちを守らんとして猟銃ブッ放し、それが悲劇の元となる。
しかし斎藤洋介さんがブレイクしたのは、『男たちの旅路』より「車輪の一歩」。
1979年に放送。当時社会現象となり、確か法律まで変えたのではなかったか。
俺は当時高校生。何より、衝撃的であった。
迷惑なんかさ、かけちまえばいいんだよ。生き残るためにはそれも必要。つーかさ、迷惑をかけてかけられて、それでみんな生きてきたんちゃう? いわばフラット。
生存そのものを賭されている人に迷惑じゃなんじゃ、そんなことを言う社会こそ害悪。「もう放っておいて下さい」、そこまで言わせる世間が悪い。俺は、そう思う。
※しかし往時の人々は徹底的に議論。話しあった。これって民主主義の基本よね。「その指摘は当たらない」で済ます、どこかの馬鹿と違って。
山田太一が書いた台詞は今なお新しい。そして鶴田のオッさんにせよ赤木春恵さんにせよ、このホン(脚本)に共鳴したからこそ出演し、名演技をしたものだろう。
あれから40年。つらつら思うに障害者(あるいは弱者)に対する社会の目線は、少しでも変わったのだろうか。
法整備はされ、マナーも向上はした。だが、心底では障害者や在日、貧乏人、生活保護の人、被差別部落の人らに対する意識は何も変わっていないのではないか。むしろ悪くなっているんじゃないだろうか。
※ヤクザを「犯罪者・汚れ(ケガレ)」として排除するのも、こんな心と共通だ。
せっかくの車輪の一歩が、半歩進んで二歩下がる。
ちなみに本作のBGM は、
◆根津甚八 ー 墓場の島
https://youtu.be/Pz3P_3JWlLo
や、
◆アリス ー 夢去りし街角
俺は悼む。トータル的に。
斎藤洋介さん、安らかにお眠りください。