
2024年 個人的・ベスト展覧会 / 作品
2024年も最終日。今年も「1年間に見た ベスト展覧会・作品」を振り返りたいと思います。
2024年に見た展覧会(イベント含)は、美術館・ギャラリー等合わせて400展示 +35イベント(公演、トーク含)。
このなかから、
1) 展覧会
2) 作品単独
3) ギャラリー(美術館以外)での展覧会
で個人的に印象に残ったものを振り返ります。
1) 「展覧会」BEST10
今年、印象に残った展示のほとんどが「個展」で、広い意味での「写真・映像」(光の捉え方、記録のしかた etc)に関する展覧会が多かったです。
昨年も、「目の前のものをどう観るのか?それをどう他者と共有するのか?」を考える展覧会が多く、自分の中ではそれがアート以外の分野でも大きな関心だと改めて感じました。
【1位】 いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ (東京都写真美術館)
岩井俊雄さんの作品ひとつひとつのインパクト、東京都写真美術館所蔵の19世紀の映像装置群の歴史的価値、そして、レプリカでそれらの原理に触れられる体験…と、様々な観点で素晴らしい展覧会でした。

岩井俊雄さんの《時間層 Ⅰ》〜《時間層Ⅳ》までをすべて続けて見られたり、《映像装置としてのピアノ》など好きな作品に再開できたことに加え、東京都写真美術館の所蔵作品で展示は今回が初めてという《Floating Music》を初めて見られたのも嬉しい展覧会でした。

いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ (東京都写真美術館)展示風景

いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ (東京都写真美術館)展示風景
図録も、古い映像装置の詳しい解説から、《映像装置としてのピアノ》《時間層 》シリーズの再生までの話まで、読みものとしても本当に面白かったです。
https://sfumart.com/column/22475/
※取材とは別に再訪問しています。
【2位】 野村 在 「Can’t Remember I Forgot You - 忘れたことすら、覚えていない」(トーキョーアーツアンドスペース本郷) / 第17回 shiseido art egg 野村在 展 (資生堂ギャラリー)
2つは別の展覧会ですが、比較的近い時期に見た、私が野村在さんの作品を初めて知った展示であり、テーマとしてもつながるものがありました。

まず、亡くなった人の写真を水に印刷する写真装置や、写真プリントを綿菓子へと変換してしまう作品など、作品のインパクトが強かったです。

物質的な「記録」を、かたちのない「記憶」へと昇華する方法は、時に暴力的にも感じられる部分もありつつ、そうした変換を経て逆説的に「忘れてしまう」ことへの恐怖が軽減されるようでもあり…ひとつひとつの作品がとても印象に残った展覧会でした。
どちらの展示でもたまたまトークを伺う事ができたのも良かったです。
【3位】フィリップ・パレーノ:この場所、あの空 (ポーラ美術館)
こちらも、作品ひとつひとつが印象的だったのに加え、「展覧会」というこれまで”当たり前”に思っていた枠組みを崩すような鑑賞体験のインパクトが強かった展覧会です。

展覧会とともに、会期の初期に都内でフィリップ・パレーノのトークを伺えたことも大きく、”「Audience」ではなく「Public」の鑑賞体験”、”「オブジェ」ではない作品のかたちの追求”など、そうした作品についての考え方を聞けたのも大きかったです。
【4位】チームラボボーダレス
今年、お台場から麻布台ヒルズに移転・リニューアルオープンした「チームラボボーダレス」。あまりにも規模が大きいので、「展覧会」として比較するのが適切か分からないくらいですが・・・

チームラボボーダレスでの展示風景
チームラボの作品は、屋内外、年に複数訪問しているものの、やはり各作品のための専門の施設で展示される作品の強度は桁違いでした。

チームラボボーダレスでの展示風景
特に印象的だったのは、光と物質の境界が曖昧になるような《Light Sculpture》、そして《Bubble Universe》などに見られた「認識上の彫刻」と呼ぶ光だけで異なる物質の質感を作り出す表現、また、立体ディスプレイを使い、現実と映像の境界を曖昧にしてしまう作品など、わたしたちの「知覚」や「認識」を揺さぶる作品群が衝撃的な展示でした。
https://sfumart.com/column/18370/
※取材とは別に再訪問しています。
【5位】Nerhol 水平線を捲る (千葉市美術館)
Nerholの作品はこれまでにも様々な展覧会で拝見してきたけれど、今回、まとまったかたちで拝見することで、シリーズごとのテーマの違いと、「写真」や「映像」がもつ様々な側面(記録、記憶、物質性、絵画的表現etc)が浮き上がって見えてくる展覧会でした。

また、千葉市美術館の所蔵作品とともに展示することで、相互の作品に違った視点が与えられる展示方法も印象的で。こうした所蔵作品と現代アートとの掛け合わせの展示は近年増えているように感じましたが、そういった中でも非常に面白いアプローチでした。
【7位】あざみ野コンテンポラリーvol.15 SHIMURAbros 雲をつかんで虹を見た (横浜市民ギャラリーあざみ野)
【8位】SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット (ワタリウム美術館)
【9位】evala 現われる場 消滅する像 (NTTインターコミュニケーション・センター [ICC])
evalaさん「現われる場 消滅する像」@ ICC、とても良かったです!展覧会だけれど、その多くは視覚を使わず「耳で視る」作品。
— ぷらいまり。 (@plastic_candy) December 15, 2024
多数のスピーカーを使って空間に立体的に響く音や、無響室をつかった展示など、その場で「体験」しないと観えてこない作品ばかり。
特に《Embryo》という新作が良かった。… pic.twitter.com/gaYWi3qhi7
【10位】坂本龍一 | 音を視る 時を聴く (東京都現代美術館)
坂本龍一 | 音を視る 時を聴く@東京都現代美術館、とても良かったです!
— ぷらいまり。 (@plastic_candy) December 22, 2024
生前の坂本龍一さんが残された構想を軸に、様々なアーティストとコラボレーションした大型インスタレーションの作品展示で、新作や日本初公開作品も多数。
特に岩井俊雄さんの《Music Plays Images x Images Play Music》は、… pic.twitter.com/QzSsworK3a
このほか、以下の展覧会も印象に残っています。
▍明和電機 ナンセンスマシーン展 in 札幌 @札幌芸術の森美術館
▍視覚の冒険者たち @高崎市美術館
▍フランシス真悟「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」 @茅ヶ崎市美術館
▍未来のかけら: 科学とデザインの実験室 @21_21 DESIGN SIGHT
▍遠距離現在 Universal / Remote @国立新美術館
▍村上隆 もののけ 京都 @京都市京セラ美術館[ 新館 東山キューブ ]
▍ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と @岡本太郎記念館
▍石田尚志 絵と窓の間 @神奈川県立近代美術館 葉山
▍Perfume Disco-Graphy 25年の軌跡と奇跡 @TOKYO NODE
▍日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション @東京都現代美術館
▍連続する共鳴 真鍋大度新作個展 @VS.
▍岡本太郎に挑む 淺井裕介・福田美蘭 @川崎市岡本太郎美術館
▍ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子 ―ピュシスについて @アーティゾン美術館
▍アートドキュメント2024 岩崎貴宏「もし、アップルパイを最初からつくろうと思うなら、君はまず宇宙を作らなきゃ」 @金津創作の森
▍田村友一郎 ATM @水戸芸術館 現代美術ギャラリー
2) 「作品」BEST5
【1位】束芋 新作映像インスタレーション 「触れてなどいない」
まるで劇場のようなインスタレーションで、次に何が起こるのか想像がつかない状態で、徐々に映像に没入していき、後半は一目では作品が捉えきれず、鑑賞者の作品との関わり方でも見え方が変化してくるような作品でした。全く違った世界観の、国籍も異なる4名の映像作家とのコラボレーションという試みも挑戦的。

個人的には、現代アートというものを知った(衝撃を受けた)きっかけの1人である束芋さんのお話を伺えたこと、また別途、この音響を手掛けた中原楽さんのお話を伺えたことも大きかったです。
【2位】《ヌル庵》 / 落合陽一
(落合陽一「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」 @Gallery Restaurant 舞台裏)
落合陽一さん個展「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」、体験してきました!ディスプレイの中のエフェクトではなくて、鏡の中で、目の前の物体と同じ解像度の像が水面に映る風景のように波打って変容して。また、茶室自体が直前に見てきた作品群を取り込む映像装置にもなっているような作品。… pic.twitter.com/Uugzk0TmMY
— ぷらいまり。 (@plastic_candy) January 13, 2024
【3位】《Mid Tide#3》/ 古澤龍
(古澤龍個展 Mid Tide @art space kimura ASK?、ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ @NTTインターコミュニケーション・センター [ICC])
ヨフのメンバーでもある古澤龍さんの個展「Mid Tide」、面白かったです!動画を構成する静止画を積層してできたブロックを様々な角度で切って、新しい時空の映像として再生する作品。
— ぷらいまり。 (@plastic_candy) January 24, 2024
それが「何か」は分かるまま、岩は飴のように、海は水銀から樹脂、氷…といったように刻々と質感が変化していく。… pic.twitter.com/RHbfBAJNmh
【4位】《Deviation Game ver 2.0》/ 木原共 + Playfool
(CCBT COMPASS 2024 @SusHi Tech Square)
CCBT COMPASS 2024、SusHi Tech Squareの展示に改めて訪問。木原共さん+Playfoolの《Deviation Game ver 2.0》は、AIにバレずに人にだけわかるように絵を描くゲーム。どうしたらAIにバレないかを考えすぎると人にも全然伝わらず、単純なのに難しい…!… pic.twitter.com/HU9xmBcvp4
— ぷらいまり。 (@plastic_candy) May 16, 2024
【5位】《太陽と月の部屋》/ anno lab
3) 「ギャラリー(美術館以外)での展覧会」 BEST5
【1位】三原聡一郎 レシピ:空気の芸術 (慶應義塾ミュージアム・コモンズ)

https://sfumart.com/column/21247/
【2位】nomena まだ意味のない機械 ― phenomenal #03 (nomena gallery Asakusa)

【3位】ライゾマティクス 「Rhizomatiks Beyond Perception」(KOTARO NUKAGA(天王洲))/ ライゾマティクス「recursive」(OMOTESANDO CROSSING PARK )
KOTARO NUKAGA(天王洲)の「Rhizomatiks Beyond Perception」額賀さんと、ライゾマティクス真鍋大度さん・花井裕也さんによるクロージングトークに参加。独自の生成AIを使った今回の展覧会と、表参道での「recursive」展についてのお話。… pic.twitter.com/6bao1eYHii
— ぷらいまり。 (@plastic_candy) October 12, 2024
【4位】井村一登「commission work」(Kanda & Oliveira)
井村一登さん個展「commission work」、Kanda & Oliveiraの3フロアを使った展示。
— ぷらいまり。 (@plastic_candy) December 6, 2024
1階で浜松町の世界貿易センタービル解体現場の瓦礫の”素材”と「鏡の反射率が100%ではない」という”テーマ”とのつながりが、初めはよく分からず見始めたけれど…… pic.twitter.com/224i1wJoTb
【5位】Web as a Medium (NEORT++)
Web as a Medium展@ NEORT++、とても面白かったです!
— ぷらいまり。 (@plastic_candy) May 17, 2024
webをメディウムとして捉えた10名のアーティストの展示。デジタル作品で、オンラインでスマホの中でも見られるけれど、フィジカルの面白さがあって、ギャラリーの方に詳しくご説明もいただけて、観に行って良かったです。
exonemoの《Find My… pic.twitter.com/rmNGfNekXk
過去の「BEST展覧会」はこんな感じでした。
◆2023年」2023年 個人的・ベスト展覧会 / 作品:2023年は「目の前のものをどう観るのか?それをどう他者と共有するのか?」を考える展覧会が印象に残りました。
◆2022年:2022年に観た 個人的・ベスト展覧会 / 作品 振り返り:2022年は ”今までに見てきた作品の良さを改めて認識する”ような「個展」が中心になりました。
◆2021年:2021年の 個人的・ベスト展覧会:2021年は「コラボレーション」と「オンライン展示の新しい試み」が印象に残った年でした。
◆2020年:2020年の 個人的・ベスト展覧会:2020年は「個展」が印象に残った年でした。
◆2019年:2019年の 個人的・ベスト展覧会:2019年は「アートってなんだろう?」と、制作・展示・鑑賞というそれぞれの過程について考え直すような展示が印象に残りました。
◆2018年:2018年 展覧会 ベスト10 :2018年は「”人間らしさ”ってなんだろう?」「技術の変化の先に、どんな新しい”感覚”や”感情”が生じてくるんだろう?」ということを考える展覧会(作品)が強く印象に残った年でした。
◆2017年:2017年 展覧会 BEST10 【美術館編】
◆2017年 展覧会 BEST10 【ギャラリー編】
◆2016年:● 2016年 展覧会 BEST 5 ●
◆2016年 アート作品 BEST 5 ●
◆2015年: かってに選ぶ BEST展覧会 -2015
◆2015年:かってに選ぶ BEST作品 -2015◆2014年:かってに選ぶ BEST展覧会 -2014
◆2013年:展覧会2013(展覧会BEST3)
◆2012年:展覧会2012(展覧会BEST3)
◆2011年:展覧会 2011(展覧会BEST3)
2025年も、素敵な展覧会・作品と出会えますように!
いいなと思ったら応援しよう!
