自然と連動する「不均質」な美を体験する美術館 【不均質な自然と人の美術館】
森と海に囲まれた岬にあるキャンプ場。その中にある小さな美術館「不均質な自然と人の美術館」。
「美術館」といったら、光や温度が管理された部屋で、いつでも同じ作品が同じように見られる空間。そんなイメージを覆す「不均質」な体験を楽しめる美術館でした。
▍インタラクティブな 《太陽と月の部屋》
最初の部屋は、天井に多くの丸い窓があいた部屋 《太陽と月の部屋》。部屋に足を踏み入れると、天井の小窓が開き、部屋にピアノの音が鳴り響きます。
小窓から差し込む陽だまりを踏み、室内を移動すると、自分が立っている場所に日差しが差し込むように別の窓が開き、陽だまりがついてきてくれました。
光は、天井から差し込む、太陽の日差し。動くたびに、スポットライトのようにまっすぐに自分が照らされます。
動くとピアノの音も変化するので、あちこち動き回りたくなり、なんだか自然にダンスしているような動きになってきました。
こちらの作品は、文化庁メディア芸術祭で第25回 アート部門 大賞を受賞した、anno labの作品。ずっと、体験してみたいと思っていた作品でした。
太陽の日差しなので、その光は角度も強さも時間によって変化。陽だまりのできる場所は太陽の動きで刻々と変化していくのに、ちゃんと自分のいる場所に光が差し込む窓(午後だったので、実際に自分が立っている位置からはかなり離れた窓)が開くのに驚きます。
この日は日差しが出たり曇ったりの天気だったので、スポットライトのようにハッキリとした光線が見える時もあれば、ぼんやりとしたひだまりだかが見える時もあり。まさに「不均質」な作品体験ができました。
▍周囲の環境と連動する 《森の部屋》
こちらは円筒状の映像の展示《森の部屋》。黒い背景の中に、微生物のような、有機的な白い像が映し出されます。
こちらの映像は、美術館の周りの風力や風向など、環境の情報をもとに生成されるジェネラティブな映像作品。その映像は、手描きでアニメーション素材がもとになっているそうです。
この日は、風は穏やかだったので、小さな像がところどころに発生していました。風がもっと強い日には、映像がもっと動いたりするそう。
この日はもうひとつ、周囲の自然の映像を使った映像作品も見せていただきました。
▍「不均質」な鑑賞体験を通じて
天候によって鑑賞体験が異なる作品を体験して感じたことは。
せっかく美術館を訪問したのなら、一番いいコンディションの作品が見たいな、と思ってしまうのも半分。一方で、今、この瞬間にしか見えない光景と出会える面白さも半分。
この美術館にはもうひとつ、「海の部屋」という、宙に浮かぶような映像が体験できる展示室もありましたが、訪問した日には残念ながら調整中。修理が終わるまでにはまだしばらくかかるようでした。
修理が終わる時期について、スタッフの方とお話をさせていただくと、おそらくひまわりが咲く頃とのこと。その頃には、訪問した時期には菜の花が植えられている美術館の前が、一面のひまわり畑になるそう。
お話をする中で、数年前には桜と菜の花が同時期に満開になってとても美しかったというお話や、昨年はひまわりが満開の時期に週末の天候がずっと悪くて残念だったというお話なども。
そんな話をしながら、「確かに自然ってそういうものだな。いつ行っても絶対に同じ光景が見られる訳じゃないから、特別に夕日がキレイだった日とか、面白い雲を見つけた日とかに嬉しい気分になれるんだなぁ」と、「不均質」だからこその面白さを感じました。
(美術館の中で揺らぐサインも不均質で面白いです。)
この美術館のコンセプトには、「私達自身が自然の一部である以上、私達の日常にも様々な不均質な体験が潜んでいて、気づかないうちにそれを心地良く感じています。」という言葉も。わたしたちも、「不均質」な自然の一部なんですね。
「不均質」だから、また違った鑑賞体験もしてみたいし、「海の部屋」も見てみたい。是非、また訪問したい美術館になりました。
【MUSEUM DATA】 不均質な自然と人の美術館
URL:https://nature-and-human.art/
住所:〒872-1207 大分県豊後高田市4060 長崎鼻リゾートキャンプ場内
休館日:火・水・木(ただし、祝日を除く)
開館時間:12月~2月/10時~16時
3月~11月/10時~17時
入場料:一般:700円 子ども:300円