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[活動報告書]ケニア共和国ニャンザ州ウゲニャ県ウクワラ郡 地域住民によるHIV/エイズ母子感染予防啓発事業

はじめに

先日、玄人向けの堅苦しい活動報告書を書いたところ、意外や意外、結構読んで頂けたので、「国際協力NGOの経営ノート」と題して、マガジン化しました。

今回も、お堅い活動報告書を書いていきます。すごく長いので、心して読み進めて頂かなければ、途中で心が折れてしまうかもしれません(笑)

こちらの報告書は2011年9月中旬~2014年9月中旬の3年間に実施した「ケニア共和国ニャンザ州ウゲニャ県ウクワラ郡 地域住民によるHIV/エイズ母子感染予防啓発事業」についてです。

この事業はJICAの草の根技術協力事業(協力支援型)に採択され、さらに多くの支援者様のご寄付によって実施されました。

既に終了している事業なので、計画から実施、評価までをまとめて共有致します。報告書に使用しているデータは当時のもので、社会制度等も現在とは異なる部分があることをご理解、ご了承の上、読み進めてください!

このnoteはこんな方にお役に立てるのではないかと思います。

・PLASで海外事業スタッフとして働いてみたい!
・NGOで海外事業を担当している
・PLASに寄付をしていて、しっかりと事業について知りたい
・大学などでNGOの活動、開発援助などについて学んでいる
・NGOやNPOの事業評価に関心がある
・開発コンサルや外務省で働いていて、NGOの草の根の活動のやり方に関心がある
・アフリカでビジネスをやっていて、アフリカで活動するNGOの活動のやり方に関心がある

ではでは、ここから突然、硬い文章になりますが、どうぞお付き合いくださいませ。

1 事業実施の背景と必要性

1-1 事業実施地域の概要

事業実施の対象地域は、ケニア共和国ニャンザ州ウゲニャ県ウクワラ郡であり、ウクワラ郡は、ウクワラ区及び北ウゲニャ区、北西ウゲニャ区、西ウゲニャ区の4区で構成されている。


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(地図1)ケニア共和国地図。赤色がニャンザ州。

元々、ウゲニャ県は旧シアヤ県の選挙区の位置づけであったが、2008年末に旧シアヤ県がシアヤ県、ウゲニャ県、ゲム県の3つの県に分割されている。また2009年11月までウクワラ郡は6つの区からなっていたが、そのうちの2区がシハイ郡として分割された。

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(地図2)ケニア共和国ニャンザ州旧シアヤ県地図。地図北西の旧ウクワラ郡(現シハイ郡を含んでいる)、北のウグンジャ郡の2郡が現ウゲニャ県。

事業対象地域のウクワラ郡と対象外となっているシハイ郡の間をキスムからブシアへ向かう幹線道路が横断している。この幹線道路は住民の生活範囲や情報伝達、人的交流の境界線となっており、ウクワラ郡のうち、幹線道路より西側の地域が本事業の対象となる。

また、この幹線道路は対象地域となっているウクワラ郡北ウゲニャ区を一部通っており、北ウゲニャ区内の4準区のうちの一つ、セガ準区の幹線道路を挟んで東側に位置する地域は対象地域として実質的に除外されている。

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(地図3)ケニア共和国ニャンザ州ウゲニャ県旧ウクワラ郡地図。オレンジの線が区の境界線。赤色の線は準区の境界線。

2009年8月の国勢調査結果はまだ公開されていないため(※)、10年前のデータとなるが、1999年に実施された国勢調査を見てみると対象4区の人口は、58,108人である。
(※)ニーズ調査等を行ったのは2009年以前であるためこのような記述となっている。

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(図表)ウクワラ郡人口・世帯数・面積・人口密度データ。出典:Kenya Population Census1999, Central Bureau of Statistics。

また、旧シアヤ県全体をみると農業に従事している家庭が60%で、農村地帯の自営業者は8%であり、対象地域の住民は農業従事者がほとんどであると予想される。

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(写真)地域の様子。赤土の道がつづく。

また農作物は、メイズ、モロコシ類、豆類、キャツサバ、サツマイモやトマトスクマビキなどが代表的である。また鶏や牛、豚、ヤギなどの家畜を飼育している住民も多く、これらは主に緊急時や子どもの就学時などまとまったお金が必要な場合などに販売するケースが多い。

旧シアヤ県の開発関連指標をみてみると、農村地域の住民の57.93%が絶対的貧困層であり、経済状況は非常に厳しい。

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(図表)旧シアヤ県の開発関連指標データ出典 Siaya District Development Plan 2002 - 2008。


1-2 事業実施地域のHIV/エイズを巡る状況

1-2-1 HIV感染の状況

ケニアはサハラ以南アフリカの中でもHIVが最初に拡大した地域であり、特にニャンザ州に位置するビクトリア湖の周辺地域では80年代後半には感染拡大が大きな問題となっていた。

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(写真)ビクトリア湖

当該事業地はケニア共和国で最もHIV感染率が高いニャンザ州に位置しており、HIV感染者数がケニア共和国全体で約8.3%であるのに比べ 、ニャンザ州は14.0% である。

当該事業地のHIV/エイズをめぐる状況はより深刻で、当該事業地が位置していた旧シアヤ県のHIV感染率は”Siaya District Development Plan 2002-2008”によると、2002年の時点で38.4%であった。


1-2-2 ケニア政府のHIV対策

ケニア政府のエイズ対策を概観すると、モイ政権においてHIV/エイズが「国家的災厄」であり国家としての対策を打ち出す必要があると宣言されるまで、それは極めて低調なものであった。その後、「国家エイズ管理委員会」や「国家エイズ・性感染症管理プログラム」などが設置され、自発的カウンセリング・検査や在宅ケアの推進など、エイズ対策が進められているが、感染の拡大は、依然、続いている。


1-2-3 事業実施地域におけるHIV感染拡大の諸要因

続いて、感染拡大の要因として、当該事業地の特徴として考えられるのは、一夫多妻制や、夫の死後、妻が夫の兄弟の妻となる、「妻の相続」と呼ばれる習慣である。また、地理的にも都市のキスムからウガンダとの国境のブシヤを結ぶ幹線道路が通っているため、人の往来が多いことや、それに伴う買売春の存在もHIV感染拡大の原因となっていることが推測される。


1-3 医療機関の状況

当該事業地には、公立の医療機関 が、それぞれウクワラ区にウクワラヘルスセンター 、北ウゲニャ区にバラチュース診療所 、北西ウゲニャ区にニャングー診療所、西ウゲニャ区にシクヨ診療所があり、これら4つの医療機関で母子保健サービスを受けることができる。

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(写真)ウクワラヘルスセンターの様子

1-3-1 ウクワラヘルスセンター

ウクワラ区にあるウクワラヘルスセンターは、1957年に設立され、現在Clinical Officerが1名、公衆衛生管(Public Health Officer:以下PHO)が1名、看護師が4名、業務補助を行う者が5名、清掃員が1名、15名のコミュニティヘルスワーカーがいる。

同ヘルスセンターは母子保健サービスを提供しており、出産に関する入院受け付けも行っている。産科を含む全体の病床数は13である。

妊婦検診の受診者は2009年8月に228名、9月に175名、10月に187名、そのうちVCTサービスを受けたのは8月に95名、9月に60名、10月に88名である。妊産婦検診の受診者は新規受診者も含んでおり、新規受診者はほぼ全員がVCTサービスを受けるため、VCTサービスを受けた者の人数と新規受診者の数は同数と容易に推測される。

出産数は2009年8月に10件、9月に16件、10月に12件となっている。また、カップルカウンセリングも実施しており、2009年8月から10月の3カ月で15件の相談があった。

一般VCTサービスも行っており、サービスを受けた男女の合計人数は2009年8月に20名、9月に15名、10月に19名となっている。


1-3-2 バラチュース診療所

北ウゲニャ区にあるバラチュース診療所は、1999年に設立され、現在看護師が2名と4名のコミュニティヘルスワーカーがいる。

同診療所は妊産婦検診などの母子保健サービスはあるが、出産については他の医療施設にリファーしており、緊急時のみ受け入れている。現在、病棟を建設中で、完成したら入院や出産も可能になる。

病床は10台設置される予定である。妊産婦検診の受診者は2009年8月に71名、9月に48名、10月に61名である。そのうち新規受診者は2009年8月に36名、9月に24名、10月に27名であった。また、妊産婦検診受診者のうちVCTサービスを受けたのは、2009年8月に19名、9月に19名、10月に32名である。

一般VCTサービスは診療所内にはなく、他団体の支援で出張VCTサービスのみを不定期で提供している。


1-3-3 ニャングー診療所

北西ウゲニャ区にあるニャングー診療所は、1996年に設立され、現在2名の看護師と4名のコミュニティヘルスワーカーがいる。

同診療所では母子保健サービスを提供しており、出産に関する入院も受け付けている。産科を含む全体の病床数は2台である。

妊産婦検診の受診者は2009年8月に61名、9月に52名、10月に63名である。そのうちVCTサービスを受けたのは8月に29名、9月に23名、10月に36名である。出産数は2009年8月から10月の3ヶ月間で30件であった。

一般VCTサービスも行っており、サービスを受けた男女の合計人数は2009年8月に14名、9月に16名、10月に27名となっている。


1-3-4 シクヨ診療所

西ウゲニャ区にあるシクヨ診療所は、1996年に設立され、現在3名の看護師と1名の栄養士、1名のDefaulter Tracer がいる。

同診療所では母子保健サービスを提供しており、出産に関する入院も受け付けている。産科を含む全体の病床数は10台で、内6台は産科のものとなっている。

妊産婦検診の受診者は2009年8月92名、9月に100名、10月に71名である。そのうち新規受診者は2009年8月に29名、9月に33名、10月に26名であった。また、妊産婦検診受診者のうちVCTサービスを受けたのは8月に25名、9月に23名、10月に23名である。出産数は2009年8月に15件、9月に20件、10月に18件であった。

一般VCTサービスは行っておらず、PITC(Provider Initiative Testing & Counselling) 時のみにVCTを実施している。


1-4 母子感染問題に係る医療機関外での出産について

 HIV母子感染の問題も深刻で、医療機関外での出産によって母子感染予防をすることができず、子どもにHIVを感染させてしまい、子どもが早くに亡くなるケースが後を絶たない。

本事業はこのような状況を、HIV/エイズと母子感染予防について住民に知らせ、医療機関へ行くことを促し、母子感染を予防することを目的とする事業である。

そのため、本事業では、母子感染を予防すること、すなわち上位目標(医療機関での出産数が増え、母子の健康が改善する)達成のために、施設分娩を重要な要件として位置づけている。

ここでは、医療機関外での出産を妊産婦が選んでしまう理由を下記のように、経済的理由、地理的理由、社会的理由、宗教・文化的理由の4つに分けて説明する。それぞれの理由は複雑に絡まりあい、妊産婦から施設分娩を遠ざけている。

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(写真)ウクワラの住宅の様子。施設分娩ができない場合、自宅出産するケースが多い。


1-4-1 地理的理由

まず、1つ目の地理的な理由を見てみる。Siaya District Development Plan 2002 – 2008を見てみると、旧シアヤ県住民の自宅から最寄りの医療機関への平均距離は6kmであり、出産前の通時は徒歩もしくは自転車で通院する妊産婦が多い。病院までの道はコンクリートで舗装された道路ではなく、未舗装の道で、病院まで徒歩で4時間かかると答えている住民もいる。

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(写真)舗装されていない道がほとんどである。

1-4-2 経済的理由

2つ目は、医療費や医療機関への交通費が払えないという経済的な問題である。医療機関での妊産婦検診や出産にかかる費用は医療機関や受診の時期によってばらつきがあるが、概して通院には約20円~50円程度、出産にかかる費用は、280円~560円程度であり、入院や緊急手術等を行った場合は1130円~2260円程度であった。 

また、出産時の交通費については、住民への聞き取り調査によると、徒歩もしくは個人所有の自転車に乗せられて医療機関へ向かうなどして交通費がかかっていない場合もあるが、バイクタクシーやタクシー(車)を使用した場合は、60円から100円程である。

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(写真)バイクタクシー。ドライバーの後ろに乗ることになる。

これらの費用が捻出できないために、施設分娩ができないケースもある。また、これらの費用に対しての準備をあらかじめしないため、突然の陣痛に対応できないといったケースも多い。

しかし、経済的理由で施設外分娩をしたと答える住民らに、出産費用をヒアリングしてみると、実際には医療機関での出産と同程度の出費となっているケースが多いことが分かった。

医療機関外での出産時に住民が一般的に利用しているのは伝統的助産婦(以下TBA)の介助による出産であるが、この費用についてみてみると、無料~560円程度であった。

住民らはTBAを選ぶ理由として、安価であると一様に答えているが、実際には、医療機関での出産費用以上の支払いをしているケースも多くあり、TBAに320円~560円を支払っているケースが最も多い。

以上のことから見えてくるのは、TBAの利用は医療機関の利用よりも安価であるという認識が広く住民にいきわたっているが、実際には、必ずしもTBA利用の方が安価であるわけではなく、医療機関での出産の方が安価である場合も十分にあるということである。

当然、TBAの利用を無料で行っている住民も一定程度おり、2009年10月の調査では、TBAを利用している10件へのヒアリングのうち、2件は経済的に深刻な問題を抱えており、TBAの利用が無料であった。

このような現状を踏まえると、経済的理由による施設外分娩について、2点の事が指摘できる。
1つは、プロジェクト目標の「住民が母子感染のリスクと予防の重要性を知る。」ことが達成されることで、住民が医療機関での出産を選択するケースが多数でてくる可能性があること。
2点目に、医療機関での出産を希望していても、経済的理由で医療機関外での出産を余儀なくされる妊産婦については、出産費用の問題を解消することによって、医療機関での出産を促すことが可能となる。


1-4-3 社会的理由

1-4-3-1 母子感染予防についての情報不足

HIVが母子感染する可能性があること、そして医療機関に母子感染予防プログラムがあることを知らない住民が多いことも、大きな理由の一つである。

例えば、当該事業地が位置するニャンザ州立病院での調査をみてみると、来院した妊産婦の52.4%が母子感染予防について初めて病院で知り、31.1%がラジオから、12.6%が新聞から、3.9%がその他から母子感染予防について知ったと答えている。

母子感染のリスクについて正しく認識している住民は多くない。「遺伝で感染する」「必ず母子感染する」という認識を持っている住民から、母子感染をする可能性について全く知らない住民もおり、様々である。母子感染についての正しい認識がないために施設分娩の必要性を感じていない住民が多くいる。

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(写真)産科の待合の様子


1-4-3-2 HIV/エイズに対するスティグマ

HIV/エイズに対するスティグマも妊産婦を施設分娩から遠ざけている。妊産婦検診初診時にHIV検査を受けることが求められているが、医療従事者からのカウンセリングや検査についての適切な説明がないままにHIV検査を受けている例もあり、そのような中で特に感染していた場合は検査結果を受け入れることができず、検査後医療機関から遠ざかってしまい、結果的に母子感染予防の措置をとらないまま出産を迎える場合がある。

また、「妊産婦はHIV検査を必ず受けなければならない」と聞き、検査を受けたくないがために医療施設へ行かない選択をする住民もいる。HIV/エイズに対する間違った知識や噂がこれらのスティグマや差別を助長しており、「天罰によってHIVに感染する」「呪いである」といった誤解や、「感染者と一緒に食事をすると感染する」「手をつなぐと感染する」といった間違った知識を持っている住民も少なくなく、また感染経路を知っていたとしても、性的接触により感染することを理由に「HIV感染者は淫乱である」「浮気をしている」などといった偏見も多くある。


1-4-3-3 ジェンダー

ジェンダーについても様々な側面が影響している。一つは、女性が医療機関に行く意思があっても、男性の理解がなければ、交通費や通院費・出産費を家計から捻出することができず、医療機関に行くことができない場合がある。また妊産婦検診時に女性のHIV感染が分かり、夫に相談したところ、検査結果を夫が受け入れず、医療機関へ続けて通院することができなくなる場合もある。


1-4-4 宗教・文化的理由

この地域の人々はキリスト教を信仰しているが、一見それと矛盾する伝統呪術への信頼も強いように推察される。例えば2009年10月に実施したCBOリーダーらへの聞き取り調査によると、出産した後に胎盤を家の庭に埋めることで赤ちゃんが健康になる、や、病院や診療所で生むとよくないという土着宗教の教えがあるため、信望者に影響を及ぼしており、そのような場合は、信望者の中の産婆的役割を担っているものが出産を手伝い、病院や診療所よりも高い費用を払わなければならない、というような発言などが見られた。


1-5 伝統的助産婦(以下TBA)の存在

1-5-1 地域におけるTBAの位置づけ

施設分娩をしない場合、多くの妊産婦が選ぶのがTBAである。TBAは特に資格などを持つわけではないが、これまでの助産経験などから、地域からの信頼を受けているようにみられる。

また、突然の陣痛で医療機関へ行くことが物理的にできない場合は、多くのケースでTBAを利用している。

経済的理由でTBAを選ぶと答えている住民も多いが、TBAの費用については千差万別で、無料の場合から、医療機関よりも高額な料金を請求している場合もみられる。ただし、ケニア政府がTBAを利用しないよう働きかけていることもあり、TBAよりも医療機関を利用すべきという認識は広がりつつある。


1-5-2 本事業におけるTBAの位置づけ

上記の状況から、当会としては、さまざまな理由から地域住民が医療機関での出産を望んでいてもTBAに頼らざるを得ないという状況を踏まえ、TBAの利用について積極的に否定する立場は取らずに、医療機関での出産を奨励しながらも、最終的な決定権は住民にゆだねるような形での啓発活動を行う。

これは、TBAを利用することへの恐怖心や医療機関に行かなければならないという強迫観念を植え付けるようなメッセージの伝え方ではなく、医療機関を利用するメリット、デメリットを住民に示し、特に母子感染の面(実際には母子感染予防の面だけでなく安全なお産においても)では医療機関を利用することが予防に決定的に寄与することを伝え、住民が自発的に自身と子どもの健康について考え、行動を選択することが重要だと考えるからである。

また地域に多数存在するTBAが一定程度の信頼を地域住民から得ており、TBAを一方的に否定することで、一部の地域住民やTBAから、事業への理解が得られなかったり、地域でのスムーズなコミュニケーションが難しくなったりする可能性も考えられる。そこで、そのような地域での摩擦を避けるためにも、このような立場をとることとする。


2 当会のこれまでの取り組みと事業実施地域のニーズ

2-1 当会のこれまでの当該地域での取り組み

当会は2007年から当該地域にてエイズ孤児が多く通う小学校に対して農業事業を通した支援、Community-baced Organization(以下CBO)や医療機関と連携したエイズ啓発活動などを行ってきた。

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(写真)支援を行ったマシワ小学校

この過程で、複数のCBOと関係を深め、彼らがエイズ啓発を積極的に行う一方で、母子感染予防についての知識や啓発スキルなどを持ち合わせておらず、活動が差別解消やエイズ予防啓発に偏っていることを知った。

また、当会では現在いるエイズ孤児やエイズ予防啓発の活動に加えて、母子感染問題に取り組むことによって、子どもの命を救う活動を展開したい、また活動を行う際には、地域の人々が地域を変えていく後押しをし、彼らの活動を促進することが、ひいては地域住民全体へその裨益が浸透していくものと考え、そのような活動の可能性を探り、協議を繰り返してきた。

2009年1月、JICA市民参加協力事業の協力を得て、母子感染予防についての研修を実施した。計画段階では一般的なエイズ啓発を企画しており、感染経路や予防、差別解消のためのワークショップの実施をすべく進めていたが、協力先のNGOやCBO、保健省関係者らと協議を行う中で、エイズ啓発の中でも特に母子感染についての啓発が極端に少なく、またエイズ啓発を行うCBOメンバーらでさえも正しく十分な知識がないことが分かった。そこで、当会としても兼ねてから検討していた母子感染予防に特化した研修を開催する運びとなった。

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(写真)研修の様子

またCBOメンバーらから母子感染予防に関する啓発活動を地域で行っていきたいとの希望を受け、HIV/エイズについての知識が一定程度あるCBOメンバーらに対して、母子感染予防に焦点を当てた研修を行った。本事業の対象地域のうち3区(ウクワラ区、北ウゲニャ区、北西ウゲニャ区)より約20名が参加した。 

研修後に、参加者らが自発的に各区でグループを作り、月に1~2回程度の母子感染予防啓発活動を地域で行うようになった。そこで、啓発でのメッセージに偏りがないか、伝える情報が正確であるかなどの啓発の質を保つため、フォローアップの研修および啓発活動のモニタリングを市民参加協力事業後も行ってきた。

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(写真)研修後に参加者が開催した啓発活動の様子。参加の待合で行った。


2-2 母子感染予防啓発におけるCBOリーダー育成のニーズ

2-2-1 当該事業地の草の根の住民組織

当該事業地には多くの草の根の住民組織が存在しており、これらを大きく分けると、サポートグループ、セルフヘルプグループ、CBOがある。

サポートグループは主にHIV感染者から組織されており収入向上やエイズ啓発、感染者への相談受け付けなどを主な活動内容としており、50名から150名程度の規模までさまざまである。

また、セルフヘルプグループは所属メンバー同士が協力して収入向上を目指し、メンバー同士の助け合いに重点を置いた活動が目立ち、比較的規模は小さく1つの団体に10名から40名程度が所属している。

CBOは準区のグループや女性グループなどがあり、地域の貧困解消やHIV/エイズ啓発、社会的弱者への救済などを行っている。またCBOは他の草の根住民組織やNGO、政府関係者などをネットワークする役割を担っている場合もあり、メンバー数は50名から150名程度である。

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(図表)草の根住民組織の活動内容・規模・構成員・特徴


2-2-2 啓発の主体としてのCBOの妥当性

本事業の対象者としては、CBOのリーダーもしくはリーダー候補、アクティブなメンバーが最も適していると考える。

理由は、第一に、上記の三者の中で、一般住民に広くアプローチを最もしやすいのがCBOだからである。サポートグループは主にHIV感染者によるHIV感染者のための組織であり、またセルフヘルプグループは所属メンバーの相互扶助によって成り立っており、これらの二者が日常的に関わり合う住民は比較的限定されている。それに比べて、広く地域のために公益の活動を積極に行っているCBOは不特定多数の地域住民に定期的かつ継続的に啓発活動などを通してアプローチを行っておいる。

第二に、CBOはすでにエイズ啓発活動などをはじめとする啓発活動を定期的に行っており、CBOリーダーらは、啓発に関する経験を一定程度、蓄積している。

第三の理由は、CBOは地域でさまざまなアクターをつなぐ役目を担っているからである。啓発から行動変容を促す本事業においては医療施設などの行政との連携は必要不可欠である。また、サポートグループやセルフヘルプグループが啓発の対象者となる場合や地域のリーダー(例えば長老や区長、助役など)の協力を得て啓発活動を行うことも予想される。CBOはこれらの様々なアクターや人とネットワークを構築し、信頼の上に良好な関係を保っており、啓発主体として適切であると考える。

本事業においてはCBOとサポートグループやセルフヘルプグループとの間に公式な連携は想定していないが、支援発生的に活動の受益者としてセルフヘルプグループやサポートグループが啓発活動に参加することも考えられる。


2-2-3 母子感染予防についての知識不足

CBOはエイズ啓発活動において、感染経路や治療に関する情報を伝えたり、検査の重要性や差別撤廃の必要性を訴えたりしている。

啓発の方法はさまざまで講義形式のものからドラマや歌などを通じた啓発、冊子やポスターの配布、家庭訪問での相談などがあるが、母子感染予防に関しての啓発は、感染経路として母子感染があるという事実を伝えること、また劇などを通して母子感染を防ぐことができるという「可能性」のみに触れた啓発が、一部のCBOによりなされているのみである。

どのように母子感染するのか、どうすれば防ぐことができるのか、医療機関でどのようなサービスが受けられるのかなどについては触れられておらず、普段エイズ啓発に携わっているCBOメンバーやそのリーダーでさえも知識がなかったり曖昧だったりするのが現状である。


2-2-4 母子感染予防啓発におけるCBOリーダー育成の必要性

これまで当会では、エイズ啓発活動などをCBOと協力して主に小学校などで保護者や地域住民向けに行ってきた。それらを通してCBOとコミュニケーションをとるうちに、母子感染予防のために医療施設へ行く必要があるが、多くの住民が自宅出産をしていること、また、それらに対しての啓発活動が地域の中で不十分であるという声を度々聞いてきた。

CBOリーダーやメンバーへの聞き取り及び質問票の調査によると、これまで母子感染や母子感染予防についてのトレーニングを受けた経験があると答えている者も多数いるが、知識を確認すると曖昧な者ばかりであった。そこで、継続的なトレーニングと育成および、得た知識やスキルを継続的に使うことが必要であると考える。

継続的にエイズ啓発に従事し、地域からの信頼も厚いCBOのリーダーを中心とした草の根住民組織のリーダーが、母子感染とその予防について正しい知識を持ち、啓発を活性化させることによって、効果的に母子感染予防に関する知識が地域に広がり、行動変容を促すと推測している。

また、前述したとおり、母子感染について住民と限りなく近い目線で「伝え」「行動を促す」ためには、地域に広くネットワークを持ち、普段から公益のための活動を行っているCBOのリーダー及びリーダー候補者を第一の対象者とすることが妥当であると考える。

また、「2-1 当会のこれまでの当該地域での取り組み」でも触れたとおり、2009年1月に行った母子感染予防についての研修を受けた20名は自発的に地域での母子感染予防啓発活動を始め、交通費や通信費も自己負担をし、手弁当で活動を続けており、活動に対する意欲は大変高いことがうかがえる。これは、彼ら自身が活動の必要性を地域で感じているのみならず、啓発活動に対して、住民や医療施設などからの要望が多く、その期待にこたえたいという彼らの意欲によるものでもある。


2‐2-5 政策「コミュニティーヘルス戦略」と本事業の相乗効果

2-2-5-1  コミュニティヘルスワーカーとは

現在ケニアでは、公衆衛生省が「コミュニティーヘルス戦略」を推進しており、コミュニティヘルスワーカー(Community Health Worker)の配置を進めており、本事業との相乗効果が期待されている。

コミュニティヘルスワーカーはコミュニティと医療機関を結ぶ役割として、育成されており、現在事業実施地域を含めた対象地域において、人口5000名に対して、50名程度の育成を目指している。このコミュニティヘルスワーカーは2週間ほどの研修を受けた後に、各々が担当地域を持ち、担当地域の各家庭を訪問し、健康状態や家庭の衛生状況などについてアドバイスを行ったり、軽いけがの処置等を行うなどしており、より専門的な対応が必要なケースについては、医療機関へリファーするなどしている。また、HIV感染者でARV服用者や服用を辞めてしまった住民らへの服用のアドバイス等を行っている。

このように、コミュニティヘルスワーカーの取り扱う分野は保健や公衆衛生、HIV/エイズなど多岐にわたっており、母子感染予防についても、アドバイスを行うこととなっている。


2-2-5-2 県保健省による事業の必要性の認識

そこで、本事業の提案にあたり、「コミュニティヘルス戦略」と本事業が互いに効果的になされるよう、行政との連携を強化すべく、2011年2月に、当会と県保健省で会合を実施した。

その際に、母子感染予防について住民が正しい理解を持っておらず、それに対し、コミュニティヘルスワーカーの活動のみでは、住民に対する母子感染予防についての啓発が十分でないという課題が指摘された。特に、啓発に携わる人材が不足している点が県保健省より指摘され、本事業はその課題を解決する一助になると期待されている。

また、同打ち合わせでは、県保健省が、住民に向けて母子感染予防の啓発が実施される必要性を感じていることも分かった。

現在、母子感染予防について、医療従事者向けの研修や施設の充実などで受け入れ態勢ができているにも関わらず、受診する住民が少ないのが現状である。住民を啓発することで、医療機関へ住民が足を運び母子感染予防プログラムの受診者が増えるよう対策を立てることが期待されている。

後述するコミュニティヘルスワーカーはHIV/エイズや母子感染予防についても住民らにアドバイスを行うことになっているが、健康や衛生全般について取り扱うため、十分に全住民へ知識やアドバイスを提供することが難しい。そこで、本事業による住民への啓発がコミュニティヘルスワーカーの活動と相互補完的に作用し合い、行動変容を効果的に促進することが期待されている。


2-2-5-3  コミュニティヘルスワーカーと本事業の役割分担

コミュニティヘルスワーカーが個別訪問にて、各家庭の健康状態や家庭の衛生状況等にアドバイスを行う中で、必要に応じて母子感染についてアドバイスを行うのに対して、本事業ではCBOリーダーが、一度に複数の住民に対して、ワークショップを通してアプローチし、母子感染予防について特化して啓発を行う。

啓発活動は、妊産婦や妊娠適齢期以外の住民、文化的にあまり妊娠・出産に関与しないと言われている男性らも対象としている。

すなわち、コミュニティヘルスワーカーの母子感染予防に関するアドバイスは、母子感染についてアドバイスが欲しい住民や、コミュニティヘルスワーカーがアドバイスが必要であると判断した住民に対して行われることとなる。

それに対して、本事業の活動は、広く地域住民に啓発活動を提供することで、母子感染予防やHIV/エイズに対する差別や偏見を軽減し、妊産婦が母子感染予防を受ける環境を促進することに寄与すると考える。

この二つのアプローチが地域に存在することで、より効果的に母子感染予防に取り組むことができる。

本事業により、男性など普段、妊娠・出産に関わらないもしくは関わりたがらない住民を含んで啓発を行うことで、地域全体の母子感染予防への理解が深まり、住民が実際に妊娠・出産した際や家族計画を考える際には個別の相談をコミュニティヘルスワーカーに住民から行うことができる。

また、コミュニティヘルスワーカーと本事業で育成するCBOリーダーらが情報交換をすることで、それぞれの事業を効率的、効果的に行うことができると考える。

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(図表)コミュニティヘルスワーカーと本事業で育成するCBOリーダーの比較一覧


2-3 当会の目指すリーダーの育成と地域開発

当会は海外事業において、地域住民の自主性を尊重し、住民の自立を志向することをその活動方針として掲げている。

これは、HIV/エイズを巡る状況を改善していくために地域の住民が自ら立ち上がり、住民らがその変化の担い手となることが重要であると考えているからである。特にCBOなど地域のために活動する住民組織とそのリーダーを様々な方面から力づけすることで、住民自身が社会をよりよくするバックアップを行いたいと考えている。


3 実施経過

3-1 モビライザーの選出

啓発事業実施に先駆けて、2011年11~12月の2か月間で、対象4区から計50名のモビライザー(地域の啓発リーダーのことで、本noteではモビライザーと呼ぶ)を選出した。

同地域には、過去他団体によって育成されたコミュニティヘルスワーカーなどが散見され、保健省からはこのような既に実績のある住民からモビライザーを選出してほしいという要望があったものの、既存のコミュニティヘルスワーカーのモチベーションが必ずしも高くはないことが懸念された。

一方、区長や助役等の地方行政からは一般住民(CBOのリーダーら)を採用するよう要望が上がっていたため、コミュニティヘルスワーカーと一般地域住民(CBOリーダー)枠を半数ずつとることとした。また、コミュニティヘルスワーカーが未配置の地域については、すべて一般住民(CBOリーダー)枠とした)。


3-1-1  選出のプロセス

モビライザーの選出にあたっては、地域より民主的に選出されるというプロセスを重視しておこなわれた。そのため、対象区の区長及び助役に協力を求め、彼らが定期的に実施する地域会合にて選出をおこなうことで選出に際しての透明性確保した。

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(写真)モビライザー選出の会合の様子

また、選出にあたっては最低参加者数を設置することで、一部の地域住民によって恣意的に選出されることを回避することができ、民主制を確保した。
選出までのプロセスとして、以下の3ステップをとった。

1) 対象4区の区長及び助役との打ち合わせ
モビライザー選出にあたり、広報のための地域会合及び選出のための地域会合の開催協力を依頼。この時点で、区によっては広報を区ベースで行って選出は準区ベースで、広報・選出ともに準区ベースで実施されるかが決定。

2) 広報会議の実施
1) の打ち合わせで合意された日程にて、モビライザー選出にあたる広報のための地域会合に参加。当会の紹介や本事業の説明、求めるモビライザー像や条件を地域住民と共有。モビライザーの選出は一度きりであり、将来的に脱退等があっても追加選出は行わないこと、また啓発する対象を考慮して選出するモビライザーの男女比にも留意してほしい旨についても説明。同会議にて、次回の選出のための地域会合の日程、また選出会議を実施するにあたっての条件(住民の最低参加人数)を住民と共に合意する。

3) 選出会議の実施
2) で合意された日程にて、モビライザー選出の会議を実施。事前に合意していた最低参加人数を満たしていることを確認し、選出に入る。2) の会議と重複にはなるが、事業についての説明およびモビライザーの役割や条件について再度説明を行い、自薦・他薦で候補者を募る。各候補者が住民の前でモチベーションを示すためのスピーチを行い、住民と合意した方法で選挙をおこなって選出。
実施前の時点で最低参加人数に満たなければ、延期の日程を合意して、次回へ持越し。
選出会議実施にあたり、大多数の準区は1度の実施で選出することができたが、最低人数を満たせずに会議が延期となった準区もいくつかあった。地域によって事業へのモチベーションや期待値が大きく異なることが伺え、その際に協力を依頼していた地方行政のリーダーシップ力も影響していると考えられる。


3-1-2  選出されたモビライザー

上記のプロセスを経て、計50名のモビライザーが選出された。50名中、13名が男性、37名が女性。

また、選出時点では全50名中17名がコミュニティヘルスワーカーを兼任していた。選出時点では保健省主導のコミュニティヘルスワーカーが育成されていない準区もあったため、そのような準区は一般地域住民からのみ選出をおこなっている。


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3-2 研修の実施結果

本事業期間中、全8回の研修を実施した(本研修1回、フォローアップ研修7回)。

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(写真)専門家より講義を受ける様子


3-2-1 研修実施日程

本研修は2012年2月に実施し、その後1年目は四半期に一度、2年目以降は半年に一度の頻度でフォローアップ研修計を実施した。参加人数と研修の質を考慮し、フォローアップ研修は最終回を除いて、全体を2つのグループに分けて実施した。

出席率は平均90%以上となり、概ね良好だったと言える。連絡のない欠席や遅刻が目立つようになった時点より、それらの参加者に対する条件を厳しくするなどして対処したこと、また通常の啓発活動を実施しない者については研修参加に条件を付けるなどした。

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(図表)研修出席率一覧


3-2-2 研修内容概要

本研修は対象4区を2区ずつに分け、2012年2月に各5日間で実施された。研修では母子感染予防に関する以下の内容を網羅した。

・HIV/エイズの基礎知識
・カウンセリングと検査
・HIV感染を防ぐために個人で行うことが出来る行動計画
・抗レトロウイルス薬
・日和見感染症
・母子感染予防のための介入
・家族計画
・乳幼児の食事法
・家庭における母子感染予防
・スティグマと差別
・男性の母子感染予防への参画
・HIV感染経路

2012年5月以降に開始したフォローアップ研修では、啓発活動のモニタリングを通じてモビライザーが苦手とする分野を把握するなどし、モビライザーの理解度に合わせて内容を組みたて、さらなるスキルアップを図れるような手法をとった。

フォローアップ研修は第1回から第4回までは苦手分野を補強する講義が主要な内容であったが、第5回目以降は講義に加え、ディスカッションの時間を多めに設けるなどした。

ディスカッションでは小さなグループに分かれるものと全体で話し合うものなどを織り交ぜたが、モビライザー同士で学び合うという点、また地域の現状やモビライザーの本音を引き出す点において重要な内容であった。

また、通常啓発活動をおこなっているグループ単位での啓発実演も定期的に組み込み、モニタリングの際には指摘しきれない点等について当会専門家より補足をおこなった。

啓発実演後には、聴衆のモビライザーからも良かった点や改善すべき点を指摘し合うことで、それぞれが学び合えるよう工夫した。


3-2-3 2014年8月実施第7回フォローアップ研修

最終回である第7回フォローアップ研修を、2014年8月に実施。全地区のモビライザー合同で8月4-8日の5日間で実施した。


3-2-3-1 参加者数

フォローアップ研修には、対象32名のモビライザー全員が参加した(部分参加を含む)。その内訳は、ウクワラ区10名、西ウゲニャ区7名、北ウゲニャ区6名、北西ウゲニャ区9名。一部欠席者については、親類の葬式、体調不良などによるが、事前に欠席の連絡があった。

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(図表)参加者一覧


3-2-3-2 研修内容

I. 当会専門家による講義

母子感染予防の本研修以降取り扱った内容をすべて網羅した。2-2に記した項目に加え、前半期のフォローアップで取り扱ったコミュニケーションの取り方や啓発のための広報活動なども再度確認した。本講義は同フォローアップ研修で配布したマニュアルを参照しながら実施し、必要であればモビライザーがマニュアルに書き込みながら進める方法をとった。

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(写真)専門家より講義を受ける様子

II. よくある質問への返答方法の練習

啓発活動の際に地域住民から度々聞かれる質問に関してどのように回答すべきかを、活動を共に行ってきた準区のモビライザーでグループを組んで話し合い発表した。

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(写真)グループワークの様子

これまで複数回にわたって回答経験がある質問のため、モビライザーは慣れた様子で回答していたものの、内容に誤りがあったり、要点がはっきりしない伝え方をするモビライザーもいたため、細かな訂正・補足が当会専門家より行われた。(HIV/エイズの歴史、ハマダラ蚊がどのようにマラリアを媒介させるか、など)取り扱った質問は以下の通り。

1) HIVはどこから来たのか。
2) 沢山の未亡人が地域において見られるように、妻を残してHIVに関連する病によって亡くなる男性が多い。この理由にはどんなものが考えられるか。
3) 衣服をHIV陽性者と共用することで感染することはあるのか。
4) HIVステータスの異なる(一方が陽性、もう一方が陰性)カップルが、産まれてくる子どもにHIVを感染させないためにはどんなことが出来るか。
5) 男性のパートナーがHIV検査の受診を拒否する際、私たちには何が出来るか。
6) 男性パートナーがコンドームを使用したくない場合は、どのような対応を取ることが出来るか。
7) HIVステータスを知るための検査は何度受診できるのか。
8) HIV感染予防を用いない性行為を行った場合、性行為後に曝露後の予防措置を執ることは可能か。
9) なぜ注射型避妊薬を使用しても妊娠してしまう女性がいるのか。
10) 妊娠中、どのように胎児がHIVに感染するのか。
11) なぜ地域住民の中でパートナー間のHIVステータス不一致が起こりえない(パートナー同士のステータスは必ず一致する)と思う人がいるのか。
12) 抗レトロウイルス薬を服用するHIV陽性者はどのくらいの間生きることが出来るか。
13) なぜ注射器や針、外科用の施術器を他者と共用することがHIV感染の危険につながるのか。
14) 自発的検査とカウンセリングを、3か月間隔で3回受診したが痩せ続けている場合、この問題に対してどのようなことが出来るか。
15) 乳児に母乳以外の食事を与え始めるのは生後何か月ごろが適当か。
16) コンドームの潤滑剤にHIV含まれているというのは本当か。
17) 家族計画用の注射型避妊薬を処方した女性の中で、大量の出血がある女性がいるのはなぜか。
18) なぜ避妊薬を使用している女性はとても痩せているのか。
19) もし母乳の中にHIVウイルスが存在するとしたら、どのようにして子どもをHIVに感染させずに母乳を与えることが出来るか。
20) なぜ抗レトロウイルス薬はHIVを完治させることができないのか。
21) 啓発活動の際に、孤児支援のための物品や金銭面での支援を求められた際には、どのような説明を地域住民にすることが出来るか。
22) ハマダラ蚊は、マラリア原虫をどこで体内に取り入れるのか。
23) 産後に医療施設で施される予防接種が安全ではなく、乳児を病気にさせるものだと思っている地域住民がいる場合、産後における母親と乳児の健康のため、病院で提供される医療サービスの大切さをどのように説明することが出来るか。
24) 啓発活動の際に、モビライザーはHIV陽性者と決めつける地域住民がいる。モビライザーとしてどう思うか、また啓発活動に関わる人々をHIV陽性者と考える地域住民にどのような説明ができるか。


III. 啓発活動の際、留意を要する項目

啓発活動で地域住民との対立や誤解を防ぐため、重点ポイントを再確認するグループワークを行った。

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(写真)グループワークの様子

これらの項目は現在も地域でおこなわれている文化的な慣習であり、言及する際は最新の注意をもって発言する必要がある。

a) 「妻の相続」未亡人継承の慣習
現在も実施されている繊細な問題であり、頭ごなしにこの風習を否定するような発言をするのは望ましくない。この慣習をおこなっているのは高齢の男性に多く、少しでも否定するような発言をとれば、彼らが行動を変えることはない。慣習自体を否定するのではなく、この慣習のどの行為にHIV感染の危険があるのかを説明し、どのように予防できるか説明することで行動変容を促す。最終的には住民の選択を尊重する。

b) 伝統的助産師の利用

医療機関を利用した場合の利点と、伝統的助産師との比較を伝えた上で、医療機関利用の利点を最大限に説明する。また、医療機関利用の際に課題として挙がる点(費用、交通機関等)の解決先を一緒に考え、事前に計画する重要性を伝える。

c) 薬草の処方

伝統的な薬草には実際に効果が確認されているものもあるが、病気の正確な診断及び確実な治療のためには医療機関の受診が重要である。

d) 一夫多妻制の慣習

お互いのHIVステータスを知った上で、コンドームを用いた性行為を推奨する。


IV. 三年間の活動振り返り

参加した全てのモビライザーより、3年間を通しての成果、課題、最も嬉しかった経験、の3点について発表する時間を設けた。

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(写真)3年間を振り返るモビライザーの様子

モビライザーは3年間の活動に困難や課題を感じていたものの、母子感染予防に関する知識や啓発の技能取得を通して、概して満足している様子であった。また、啓発活動を通して地域住民から医師や教師のような存在として頼りにされることを誇りに思うモビライザーが複数おり、住民からの信頼をモチベーション維持につながることが期待できた。

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(写真)3年間を振り返り、発表するモビライザーの様子

以下に内容の一部を記載する。

1) 成果
・一番の成果は、母子感染予防事業で得られた、抗レトロウイルス薬服用やスティグマと差別についての知識と啓発経験である。
・大勢の人の前で話すことが苦手だった自分が、堂々と啓発活動を出来るようになった。
・母子感染予防の知識で妊産婦を病院へ照会することによって、医療機関で出産をするよう妊婦たちを促すことが出来た。

2) 課題
・ 参加人数が啓発活動開催のための必要人数(モビライザーが2名のグループの場合は20名)に達しなかったこと。特に雨期の農繁期においては地域住民が農作業で忙しかったり、雨で人が集まらなかったりした。
・ 啓発活動でHIV/エイズを取り扱うことで、参加した地域住民にモビライザーが(たとえ陰性だとしても)HIV陽性者だと思われてしまうことがあった。
・ 準区が広く移動が大変であった。

3) 最も嬉しかった経験
・ これまでのフォローアップ研修を通して知識を深められたこと。研修後、自信をもって啓発内容を地域住民に伝えることが出来るようになった。
・ 啓発活動を通して、HIV/エイズに対するスティグマと差別が減ったと感じられた。
・ モビライザーとして地域住民に知られたことにより、健康について問題を抱える人が自分の下に相談に来るようになった。


V. マニュアルの配布及び活用方法

今回の研修で、各モビライザーに母子感染予防のマニュアルが2部ずつ配布された。使用方法について当会専門家から説明後、マニュアル今後の活用方法についてモビライザーから以下のような案があがった。

モビライザーから出たマニュアルの活用案
・ 地域住民からの質問で答えられないものがあればマニュアルを読み返して正しい回答に役立てる。
・ 知識を風化させないためにも、マニュアルを読み続けていきたい。
・ 葬式参列時など、地域の有力者が集まる際、事前にメモにまとめておいたマニュアルの重要項目と内容を伝え、地域の啓発に努めていきたい。
・ 自分が議長をしている学校関連の地域住民組織でマニュアルを貸与、もしくは寄贈し、学齢に達した児童、青少年への啓発となることを期待する。


3-2-4 理解度自己評価

毎研修後、モビライザーには質問票を記入してもらっているが、その中に内容への理解の自己評価を5点満点で評価する項目を設けている。(質問票のフォーマットは5.参考資料添付を参照)

以下の表は、全フォローアップ研修の自己評価平均値を一覧にしたものである。

第1回目から6回目までの平均値と最終回を比較すると、全項目でおよそ10%程度自己評価が上昇していることが見て取れる。

<自己評価が大きく改善した項目>
・個人で行うHIV感染予防
・乳幼児のHIV感染
・母子感染予防への介入

<自己評価が他に比べて低い項目>
・CD4細胞
・体内のウイルス量及び抗レトロウイルス薬
※上記項目はその他の項目と比較しても、事業期間を通じて全体的に理解度の低い項目であった。説明の際に専門用語の使用を避けて通れないこと、またそれらを住民にわかりやすく説明するという点についてモビライザーが困難を感じていたと考えられる。

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(図表)理解度自己評価の結果及び評価上昇率


3-2-5 研修理解度テスト

モビライザーには2-4.で記載した通り、内容への理解度の自己評価を求めているが、客観的に理解の状況を確認するために簡単なテストを作成し、研修受講前後で同内容のテストを実施した。テストは母子感染予防の主な項目について12問を設定し、選択形式とした。

事業実施期間中テストは同内容で計4回実施され、テスト実施初回が平均7.4点であったのに対し、最終回では平均8.6点と改善が見られ、テストを受けた32名中18%にあたる6名は満点を取得した。


3-3 啓発活動概要

2012年3月から2014年7月までの29か月間で、事業対象4区全体で合計811回、述べ25,842人の地域住民に対して母子感染予防啓発活動を実施した。

活動は2013年3月に実施された大統領選挙や研修実施月のような時期を除き比較的安定して継続され、2014年3月末日時点で、事業終了時の目標値である2万3千人の地域住民への啓発活動の提供を達成した。

啓発活動は、事業初期に地域会合で民主的に選出された50名のモビライザーが、近隣準区のモビライザーとグループを組み、1グループ3~4名で活動を実施。グループごとに活動実施日や対象グループ等を決定し活動計画書を提出、それに合わせて活動を実施するという形式をとった。

各グループは月に最大4回(2014年4月以降は6回)の啓発活動について、当会より交通費・通信費の補助を受けられることとなっているが、自発的な活動については制限を設けていない。本資料のデータについては、当会側で実施状況を把握している活動についてのみ計上しており、モビライザーが個々に自発的に実施した活動については計上していない。

以下、啓発活動実施回数及び啓発活動に参加した地域住民数については各区の内訳を記載する。また、地域住民の性別比、対象の内訳、啓発活動で取り扱った内容の分布については、事業初期と事業終盤(いずれも半年間)の状況を比較した。


3-3-1 対象4区の活動実施回数内訳

以下のグラフは、啓発活動実施全期間を通じて実施された啓発活動回数を、区ごとに示したものである。ウクワラ区が4区中最も多くの活動を実施しているが、これは同区が他区に比較してモビライザーのグループ数が多いことが要因と考えられる。

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3-2 啓発活動に参加した地域住民数の対象4区内訳

3-1の活動実施回数内訳のグラフに比例するように、ウクワラ区が最多の地域住民に啓発活動を実施している。

一方、北西ウゲニャ区と北ウゲニャ区を比較すると、北西ウゲニャ区の方が活動回数自体は少ないものの、より多くの住民に啓発を届けていることがわかる。これは北西ウゲニャ区の方が一度の活動でより多くの住民を集めて実施しているためと考えられる。

活動2


3-3 啓発活動に参加した住民の性別比

以下のグラフは、啓発活動に参加した地域住民の性別比を示している。

事業初期と事業終盤を比較しても性別比に大きな違いは見られず、事業期間を通じて啓発対象者の過半数は女性となっている。これは以下3-4に記載の通り、モビライザーが啓発対象として選ぶ大部分が地域住民組織であり、ほとんどの地域住民組織は女性から編成されていることが要因と考えられる。

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3-4 啓発活動の対象者の分布

啓発活動の対象者の分布をみてみると、事業初期に比べると事業終盤は地域住民組織を対象とした活動が増えているのが見て取れる。活動回数の実数を比較しても、事業初期と比べて事業終盤には倍近くの活動が住民組織を対象に行われている。

これは、事業後半になると多くの地域住民組織が当会モビライザーの活動を聞きつけて啓発を依頼したり、新たな住民組織を紹介されるケースが増えて、モビライザーたちが住民からの要望に応えるために住民組織への活動割合が増えたものと考えられる。

また、妊産婦検診を対象とした活動が減少していることがわかる。これは、ウクワラ区以外の3区の医療機関は規模が小さく患者数も少ないため、啓発事業を実施する上でのルールとなっていた最低住民数を満たすことができず活動が中止となってしまったり、活動実施までに長時間待機しなければならないなど、実施上の困難が伴うためモビライザーが敬遠していたと考えられる。

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(グラフ)啓発活動の対象者の割合分布:事業初期

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(グラフ)啓発活動の対象者の割合分布:事業終盤


3-3-5 啓発活動で取り扱われた内容の分布 

1回の啓発活動は40分から1時間程度のことが多く、全ての内容を網羅することは不可能であるため、内容を細かく区切り一度の啓発で1項目に集中して啓発することとなっていた。

下記のモビライザーが啓発活動の際に取り扱った内容の分布を示したグラフを見てほしい。事業終盤はいくつかの項目に偏りがあることが見て取れる。目立った増加を見せているものとしては、日和見感染症、差別とスティグマ、男性の参加、の3項目ある。

日和見感染症は地域で大変一般的な問題であるため、住民から取り扱ってほしいという要望が多くあったことが推測される。差別とスティグマは、母子感染予防を成功させるための行動変容を促すのに一番大きな障害となっており、モビライザーからも地域におけるHIVに対する差別や偏見が未だに残っている点が懸念として度々報告されていたことからも、地域の現状を考慮して取り扱われたと推測できる。

さらに男性の参加については、母子感染予防を成功させるためにはパートナーの協力が必要不可欠である一方で、男性優位のルオ族社会で男性を巻き込むことは大変困難であり、これらを実現するために多く取り扱われるようになったと考えられる。

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(グラフ)事業書記と終盤での啓発活動で取り扱われた内容の分布


3-3-6 月例反省会

月例反省会とは、モビライザーが毎月区ごとに集まって成果や課題を共有し、課題への解決策を話し合うために実施された会議である。

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(写真)ウクワラ区月例反省会の様子

研修実施月や大統領選挙など、特段の理由がない限り毎月実施された。月例反省会を通じ、以下のような変化が見られた。

①司会進行を持ち回りにし、全体をまとめるスキルを向上
月例反省会では話し合う内容をある程度固定し、モビライザーが議長を持ち回りで担当することで、小さな会議ではあれ議題に沿って話を進めたり、人をまとめるスキルを身につける機会を作った。事業終盤までに全てのモビライザーが議長役を最低1度は経験し、現地調整員が介入しなくとも他のモビライザーが助け合って議論を進めることができるようになった。

⓶事業開始当初に恒常的にあがっていた、“対象とするグループがいない”“住民からの質問に答えられない”という課題は、対象グループについては地道に活動を継続していく中で住民から他のグループを紹介してもらったり、質疑応答についてはリフレッシャー研修への参加により改善され、事業後期は課題としてあがることはほとんどなかった。

➂月例反省会で課題をあげるだけではなく、それに対し自分たちでできる解決策の話し合いを徹底したことで試行錯誤を繰り返し、事業後半は課題自体がほとんどあがらなくなった。地域や啓発活動で起きることには概ね対応できるようになった、という自信がモビライザーに表れていた。

④成果発表の際に「地域住民が喜んでくれた」など抽象的なものだけではなく、「○人の地域住民を医療機関に紹介した」「○○の問題を抱える人が自分のところへ相談に来たため、一緒に医療機関へ付き添った」など、活動回数を重ねるにつれて具体的な事例の紹介が増え、啓発による行動変容を促していることが伺えた。

➄モビライザーの存在が地域で認識され、住民からの依頼が増えるにつれ、当会からの交通費・通信費支給がない場合でも自主的に啓発活動を実施するモビライザーもいた。住民の期待に応えようと努力する姿が見て取れ、事業終了後の自主的な活動継続の素地になると考えられる。

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(写真)西ウゲニャ区における月例反省会の様子


3-3-7 活動のモニタリングによる報告

全ての啓発活動には当会の現地調整員または調整員補助がモニタリングに同行することとなっており、事業期間内に実施された全ての啓発活動でモニタリングが実施された。

また、啓発活動終了後はモニタリングを担当した職員が観察報告書を作成する。以下は英語で記載された報告書を日本語訳したものの抜粋で、啓発活動で取り扱われることの多かった主題を取り上げた。

啓発活動は通常以下の流れに沿って行われる。

1) 活動開始30分程前に集合し、準備会議を実施。
準備会議では取り扱う主題と副題、また各モビライザーが担当する副題を決定し、啓発内容の確認に付随して、その日に扱う主題で地域からよく質問される項目を復習する。


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(写真)準備会議の様子

2) 啓発活動の実施(45分~1時間程度)
準備会議で話し合われた流れに沿って、モビライザーが順番にファシリテーションを行う。啓発の最後に住民から質問を募り、答える。

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(写真)啓発活動の様子

3) 振り返り会議を実施
啓発活動終了後、活動について15~20分程度振り返り会議を持つ。啓発内容についての自己評価やその日の活動への考察、感じた課題等について共有する。また、当会職員より気になった点を共有する(例:当日遅刻のモビライザー等がいた場合の指摘等)

4) 報告書の提出
後日、モビライザーが活動報告書を記載し、当会事務所または職員に提出する。

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(写真)活動報告書

ここでは2012年5月22日と2013年11月5日の活動報告書を一部抜粋して紹介する。

①実施日:2012年5月22日
啓発内容:スティグマと差別
・日時 2012年5月22日  14時10分~14時50分(50分)
・実施者 1.  Dorine Orega 2.  Collete Oduor 3. Joseph Omondi
・場所 西シフヨ Kamalunga Village
・観察者 ベン ターゲット Konyruok Ber women group
・啓発主題 スティグマと差別
・参加者 大人 男性:1人  女性:31人 子ども 男性:0人 女性:0人 合計:32人

1. 特記事項
・Dorineは対象グループのメンバーである。啓発開始前、同グループが月例集会を実施していたため、書記役を務めていたDorineも同週回に参加せねばならず、45分程遅れて準備会議を開始。

2. 活動内容
準備会議(14時10分~)
副題と発表者
1)イントロダクション-Dorine
2)スティグマの原因-Collete
3)スティグマの影響-Joseph

議論内容
まず、モビライザーは5月15日にKaramogi’A’にて実施された活動の反省を行った。ここから浮かび上がった主な反省点は“PLAS”の説明(※)の仕方、リスク要因としての母乳育児の説明にmixed feedingを含めること、母乳を始めとするHIVを含有する体液の紹介である。同日の啓発準備は、モビライザー同士で事前に話し合いを持ち「スティグマと差別」を主題として選んできていたため、準備会議では同主題の内容を話し合い、副題を振り分けた。対象グループの集会が終わるのを待ってから、啓発を始めた。
※補足:Positive Living AIDS orphan Support organizationというプラスの正式名称からプラスがエイズ孤児の直接的な支援を行っている団体なのだと地域住民が誤解し、食糧配布などの支援の要望を訴えてくる傾向があるため、モビライザー側が団体紹介の仕方に配慮するべきという反省だと思われる。

議題
1)イントロダクション-Dorine
・対象グループのメンバーでもあるDorineが他モビライザーの紹介を担当。啓発を行わせてもらえる機会に感謝の意を述べた。同グループを対象に活動を実施するのは今回が2回目であったため、前回(3月14日W1)受けた質問の回答から話を始めた。
・スティグマと差別とは、HIVに感染している人、或いはHIV/エイズに影響を受けている人に対する否定的な態度や言動のことである。HIV陽性者を孤立させる、仕事から解雇する、陽性者に対し不適切な言葉を使用する等が主な例だ。しかし、人は自分自身に対してスティグマを持つこともある。ANCでHIV検査を受けることを恐がる女性達はこの種のスティグマを抱いている。彼女達は、自分がHIV陽性であるかもしれないという恐れを抱いているのだ。自らのHIVステイタスを知ることを恐れている女性が自宅出産を選んだり、HIV陽性と診断された後医療機関に戻らなくなり治療を受けられなくなったりするため、スティグマは母子感染と闘う上で大きな弊害となっている。地域における感染を減らすためにも、住民同士が助けあうことを奨励する。

2)スティグマの原因-Collete
・スティグマの原因の一つが言葉の選択である。否定的な言葉を向けられたHIV陽性者は、自らの存在を社会の役に立たない、周りとは違う、他人よりも劣っている等と感じるようになってしまう。具体的にHIV/エイズの治療やHIV陽性者を指す言葉の使用もスティグマに繋がる可能性がある。例えば、“Ayaki”“Angilican”“Member”等の語の使用やHIV陽性者を特別な存在として見ることも誠実さに欠けている。
・医療機関では看護師らがHIV陽性者に対して失礼な態度をとったり、厳しい言葉を投げかけることがある。これもまたスティグマである。一般患者同様、HIV陽性者も治療を受ける権利を持っており、決して彼らが差別されるようであってはならない。
・幾つかの宗教ではスティグマや差別が増長されているため、教会を通してHIV陽性者が差別されることがある。HIV陽性と疑われる人の葬儀や結婚式をとり行うのを拒む牧師もいる。また、教会がHIV感染は罪人への神からの罰だとHIV陽性者を責めることで、陽性者が罪の意識を感じ、周囲からより孤立してしまう、或いは孤立させられてしまう。
・最後に、HIV/エイズに関する知識と適切な情報の不足は、最も深刻なスティグマの原因となっている。ほぼ全ての差別やスティグマは作り話や誤解から生じたもので、この傾向は特にHIVの起源と感染にまつわることが多い。地域住民には、今後も正しい情報を求めHIV/エイズをきちんと理解することが奨励される。正しい情報の獲得と理解が地域のHIV陽性者やHIVの影響を受けている人達をサポートする助けとなる。

3)スティグマの影響-Joseph
・時間に限りがあったため、PMTCTにおける影響に特化して啓発を行うことになっていたが、スティグマが夫婦間の不和や責め合い、個人の恥の意識にどのような関係性を持つかから説明を始めた。HIV陽性のステイタスが多くの家庭崩壊を招いてきたこと、そしてHIV/エイズへの誤解や夫婦間の責め合い(女性が責められることが多い)が家庭崩壊の原因となっていることを説明。
・スティグマが及ぼすPMTCTへの最大の影響は、ANCの低参加率である。スティグマは、妊娠や出産の域を越えたPMTCTの主要目標が達成されるのを困難にしている。スティグマがANCに及ぼす影響には、女性たちがHIV検査を恐れてANCへ来なくなることが挙げられる。検査を受けたとしても、陽性と診断された後一切医療機関を訪れなくなってしまう女性もおり、重要な治療の機会を全て逃してしまっている。スティグマは、多くの女性がTBAの立ち合いのもと自宅出産をする要因でもある。自宅出産を選ぶ女性の中には、以前(スティグマを持った)看護師に立ち合ってもらった過去の出産経験を踏まえ、あえて病院には行かず自分で出産をする人もいる。しかし、出産には高いリスクが伴うため、自宅出産はそのリスクを悪化させるだけである。
・最後に、同日の啓発内容のまとめが述べられた。自らのHIVステイタスを知ることは、スティグマと闘い、これから生まれてくる子どもをHIV/エイズから守るための第一歩であると述べ、その他に同日話した内容を手短にまとめて啓発を終えた。

地域住民から挙がった質問事項
1)HIV/エイズを“Ayaki”と呼ばないようにと言っていたが、ルオ語で何と呼ぶのが最も適切か。
→“Ayaki”は、人々がウイルスで最も苦しんでいた時代に使われ始めた言葉で、直訳すると“suffering and death”(苦痛と死)となる。この言葉は非道徳を連想させるため、HIV陽性者に罪の意識やスティグマを感じさせてしまう。“HIV”という単語は英語が分らない人でも理解できるため、Ayakiの代わりにこの単語を使うのが良い。
2)医療機関では、陽性者サポートセンターと一般患者用の棟で場所が分けられているが、これはスティグマではないのか。
→治療場所の区別はスティグマを配慮してのことである。HIV陽性者と一緒に治療を受けるとなると、一般患者が医療機関に来るのを恐れてしまうかもしれない。(地域の)スティグマが無くなったら、現在は別々に提供されている二つのサービスを一緒にすることができる。
⇒HIV陽性者は、特別で時間に添った注意とサービスを必要とするため、医師と看護師一人ずつではそのような対応を取りきれないこともあるからだ。陽性者サポートセンターのサービスには、理解を持ってサービスに取り組める訓練された人材が必要なのだ。
3)HIVは、ウイルスに感染している血液に触れることで感染するというが、交通事故のような緊急の場合で、手袋もポリ袋も持ち合わせていなかったらどうすればいいのか。けが人をただ死なせてしまっていいのか。
⇒事故などでHIV感染に曝された人のための特別な治療があり、主にヘルスケア提供者や性的暴行の被害者が同治療を受けている。この薬は、post exposure prophylaxis (PEP)と呼ばれ、感染の危険に曝されてから72時間以内に治療を受けなければならない。3ヵ月後、感染しているか否かを調べることになる。あなたの挙げた例はこのカテゴリに当てはまるだろう。

3. モビライザーへの指摘事項
特になし。

4. スタッフの考察(ベン)
モビライザーに関して
・モビライザー達は、活動計画上の啓発内容の十分なノートを持ち合わせていなかったため、スティグマと差別に内容を変更していた。
・以前Ugoma Villageで同グループを対象に第1回目の啓発活動を行った時に残された部分に関して、同日説明を加えることができた。
地域住民に関して
・同グループのメンバーの態度から前向きな変化が伺えた。1回目の活動では、啓発内容に全く興味を示さないメンバーがいたものの、今回は皆啓発に対して前向きな姿勢がみられた。特に、一人の年配の男性は前回の啓発の際は失望していた(あるいはその様に見えた)が、今回は、与えられた情報の重要性を認め、モビライザーに、啓発の対象となり得る別のグループを紹介してくれた。


② 実施日:2013年11月5日
啓発内容:日和見感染症
・日時 2013年11月5日  15時50分~17時25分(95分)
・実施者 1. Dolphin Otieno 2. Helida Akoth 3. Gerald Owino
・場所 西ドーホ準区 Ma Aringo Luodo
・観察者 ジョスフレッド、トビアス ターゲット Alara Women Group
・参加者 大人 男性:5人 女性:20人  子ども 男性:0人 女性:0人 合計:25人

1. 特記事項
特になし。

2. 活動内容
準備会議(14時55分~15時43分)
副題と発表者
1)日和見感染症の定義-Dolphine
2)日和見感染症によって影響を受ける器官-Helida
3)マラリアと腸チフス-Gerald

議題
1)日和見感染症の定義-Dolphine
・日和見感染症とは、身体の免疫システムが下がったときに発症する病気である。
・人の体内のCD4細胞数が350㎣以下の時に発症する。
・日和見感染症はHIVではなく、日和見感染症の徴候と症状があるからといって、HIV陽性というわけではない。
・マラリアといった日和見感染症に対して、早期治療がなされなかった場合、母子感染のリスクが高まる。

2)日和見感染症によって影響を受ける器官-Helida
・髄膜炎やマラリアによって脳が影響を受ける可能性がある。
・肺(結核)
・性器(性感染症)
・胃腸(腸チフス)
・肌(帯状ヘルペス)

3)マラリアと腸チフス-Gerald
・マラリアはマラリア原虫によって引き起こされ、メスのハマダラカによって運ばれる。一方、腸チフスは人の排泄物に一般的にみられる細菌によって引き起こされる。
・マラリアの症状と徴候:吐き気と嘔吐、高熱、初期症状としての関節の痛み
・腸チフスの症状と徴候:変動的な発熱、吐き気と嘔吐、後期症状としての関節の痛み

地域住民から挙がった質問事項
1)継続的な腹痛に悩んでおり、食事すら拒否する子供がいる。どうすればこの子供を助けられるのか?
→Gerald:アレルギーが原因でそのようなことが起こっている可能性がある。しかし、そのような子供は病院で医療検査と診察を受けることが望ましい。
2)メスのハマダラカは、マラリアを引き起こすマラリア原虫をどこで入手するのか?
→Gerald:マラリア原虫が含まれる水でメスのハマダラカが繁殖したときや、マラリアに感染している人を刺した後にマラリア未感染の人を刺したときなどである。
3)お湯でも水でもお風呂に入れると、身体のかゆみを訴える子供がいる。病院にも行ったが、症状は改善されない。どうすればこの子を助けられるのか?
→Tobias:母乳に含まれるラクトースにアレルギーを起こす子供のように、水にアレルギー反応を起こしている可能性がある。すでに病院に連れて行ったのならば、さらに詳しい医療検査のために、別の病院に連れて行くことが望ましい。
4)結核の原因は何なのか?
→Gerald:細菌によって引き起こされる病気で、空気感染する。低い身体免疫力によっても引き起こされる可能性があり、早期治療がなされなかった場合、重症化する恐れがある。

3. モビライザーへの指摘事項
・マラリアと腸チフスは似ているため、医療検査を受けてどちらの病気か判断すべきだということを地域住民が分かるように、二つの間に見られる共通点と相違点を啓発の際扱うよう、トビアスからモビライザーに助言があった。

4. スタッフの考察(ジョスフレッド)
・地域住民はモビライザーに感謝し、そしてそれ以上に質疑応答の際有益な情報をくれたトビアスに感謝した。彼女たちは、活動計画書を作成する際にいつも自分たちのグループを対象にするよう、モビライザーに依頼した。


4 事業評価と振り返り

4‐1 妥当性

計画設計は妥当性があったか。 (Are these the right things to do?、DAC評価5項目の「妥当性」に相当)について評価する。


4‐1‐1 対象地について

本事業実施地域はケニア国内でHIV感染率が一番高く、HIV/エイズ対策が急務となっている地域であり、これまでに国連機関や多くの外資系大手NGOなどがHIV感染予防のために様々な事業を展開してきた。

その中でこれまでに多くの住民が研修を受け、コミュニティヘルスワーカーが育成されていたため、HIVの基礎知識の認知度はある程度あると推測していた。

ところが事業開始後ほどなくして、ごく基本的なHIV知識すら持たない住民が多くいることが当会モビライザーより報告された。母子感染について理解する上でHIVの基本知識が重要であるため、HIVの基本知識をわかりやすく伝え、その上で、同国内では性感染に続いて2つ目に大きなHIV感染源である母子感染予防についての情報を啓発した。

性交渉により感染することは多くの住民が認識していたが、母子感染予防については正しい知識を持たない住民がほとんどであり、親がHIV陽性=子どもも必ずHIV陽性、と考えている住民が大半であった。

保健省管轄のコミュニティヘルスワーカーも母子感染についての知識はさほど学ばないため、住民が母子感染のメカニズムや予防法について学ぶ機会は極めて少ない。そのような状況の中で当会モビライザーの伝える情報は大変貴重であり、住民からも医療機関スタッフからも歓迎された。

このことから、HIVの基礎知識のみでなく、そこからさらに踏み込んで母子感染予防について啓発する本事業の展開は同地域においてニーズが高かったと考えられる。

事業終了時、直近2年間で出産経験のある地域の女性20名を対象にインタビューを実施した。20名のうち10名は保健省管轄のコミュニティヘルスワーカーにより紹介を受けた女性で、残り10名はモビライザーより紹介を受けた女性である。

インタビュー結果によれば、モビライザーを知っていると答えた女性13名のうち、61%にあたる9名は、直近の出産を医療機関で経験していた。残る4名についても、医療機関への交通手段を手配している間に出産してしまった、または一度医療機関へ行ったが出産できず自宅に帰され、その後自宅で出産してしまったなどの事情があるが、4名全員が医療機関で出産する意思を持っていたことがうかがえた。

一方、モビライザーを知らないと答えた女性7名のうち、43%にあたる3名は直近の出産を医療機関で経験していたが、残る4名は自宅分娩や伝統的助産師(TBA)を利用していることがわかった。このことから、モビライザーから母子感染予防の啓発を受けた女性は、母子感染の危険のみならず分娩中の合併症等に対応しきれない伝統的助産師(TBA)の利用を避け、医療機関での出産を選ぶ傾向があると言え、このことからも母子感染予防についての情報は対象地でニーズが高かったと言える。

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(グラフ)直近の出産場所聞き取り結果比較


4‐1‐2 外部条件の認識

同地域は他団体の大規模な事業の経験があるためか、住民が支援機関の実施する事業に慣れている様子が見受けられ、事業に対する“見返り”への期待が過度に高いことが見て取れた。

住民が啓発活動に参加するのは知識を得るためではなく、そこで配布される(交通費という名目の)金銭や食料が目当てであったり、育成されるコミュニティヘルスワーカーも一時的な収入源確保と捉えている者が少なくない。

そのような中で、当会は啓発活動で住民に物品を一切配布しない方針だったため、「○○NGOの啓発では参加すると飲み物が配布された」「食料か薬をくれるのではないのか?」というような不満や疑問をモビライザーが啓発活動中に住民から受けることも少なくなかった。物質的見返りに対する期待が余りにも高かったために、モビライザーからの説明では納得できず、啓発活動の対象から外さざるを得なかった地域団体もあった。

同様に、モビライザー自身のモチベーション維持についても、大手機関の事業で活動経験があったり、コミュニティヘルスワーカーとして活動した経験のあるモビライザーは次々と脱退するなど、NGO等の支援機関へ過度に期待を寄せていたことが伺えた。

このような地域の傾向は、当会が事業を展開する上で障害となることも多く、対象地域選定時点での他団体の動向や認識不足があったと言える。モビライザーのモチベーション維持のためのインセンティブ充実など、施策を増やすことにより脱退者を減らすことができたと考えられる。

その一方で、地域やモビライザー自身の意識に課題がある中で、活動を継続したモビライザーが地域住民に地道に知識の重要性を説いてまわった結果、残った32名で指標となっていた2万3千人を上回る住民へ啓発活動を届けることができた。


4‐1‐3 モビライザー選出方法

本事業においては、HIV母子感染予防の啓発をおこなうモビライザーを地域住民自身が選出するというプロセスをとったが、住民が責任を持って選出するという民主的なプロセスを経たことは妥当だった。また、コミュニティヘルスワーカー枠と一般住民枠を半数ずつとるという規定も妥当性があった。

上記選出枠の規定については、事業開始時に本事業のカウンターパートであるウゲニャ県保健省関係者、医療機関担当者や対象区の区長及び助役を招待し、実施した関係者会議を経て決定された。

会議では、「これまでに既に他団体の研修を受講し、コミュニティヘルスワーカーとして活躍する人物の経験を最大限に有効活用するためにも、既存のヘルスワーカーのみから選出すべきだ」という保健省側の意見と、「一定の人材にのみ便益が集中しているため、別の人材にも機会が与えられるよう一般住民から選出する方が望ましい」という地方行政側の意見が対立する形となった。

同会議での議論を受け、当会は選出枠の半数をコミュニティヘルスワーカーから、もう半数を一般住民から選出するという規定を設け、地域住民が選挙をおこない選出するというプロセスをとった。

具体的には、区および準区レベルの行政官に地域会合を開いて住民を招集してもらい、その中で当会側から提示した条件に合う人を住民が推薦し(自薦・他薦問わない)、選挙により選出するというものであった。選出会議においては最低参加者数を設け、人数が満たなければ会議自体を延期するという措置をとった。これにより選出プロセスの透明性が確保され、一部の人間が贔屓されているという憶測を生まずに済んだ。

コミュニティヘルスワーカーと一般地域住民を混成したことで、医療機関と密接な連携をとれるコミュニティヘルスワーカーが医療機関へのリファーを容易にし、モビライザーのグループ内でうまく役割分担ができていた。さらに、4‐1‐2に記したような要因から、事業終了時点で活動を継続しているモビライザーのうち、半数以上が一般地域住民枠選出であったことを考慮しても、一般住民枠を確保したことは妥当だったと考えられる。


4-1-4 モビライザー選出にあたっての条件設定

選出にあたっては、当会側で英語能力やHIVの基本知識、地域での経験等を条件として提示していたものの、そのレベルを事前に確認する手段がなかったこともあり、事業開始後に研修の使用言語や内容を変更するなどして対応した。

理解度の低さは一般住民枠から選出されたモビライザーのみに見られた傾向ではなく、これまで長くコミュニティヘルスワーカーの経験がある者、また過去に他団体の研修を複数回受講したことのある者にも共通して見られた。

これを受け、研修ではHIVの基礎知識から丁寧に取扱い、各フォローアップ研修の内容もモビライザーの理解度に合わせて内容を組み、講義だけでなくグループワークを取り入れたり、モビライザーに知識が定着する工夫をおこなった。

これらの工夫の結果、当会モビライザーはこれまで地域で育成されたコミュニティヘルスワーカーよりも基礎知識を噛み砕いて住民に伝えるスキルが培われたと考えられる。啓発活動では、住民から「プラスのモビライザーはこれまで啓発に来てくれた人よりも知識が豊富である」という声も聞かれ、医療機関へ行くことを頭ごなしに押し付けられるのではなく、その重要性や必要性を理解した上で行動変容につながっていると考えられる。

選出条件の一つには地域の団体や組織等での活動経験があることを含めていたが、この条件を設定していたことにより、モビライザーが地域で啓発活動を展開する際に、対象グループとのネットワーク構築や対象グループをスムーズに確保するのに役立った。


4-1-5 指標の妥当性

プロジェクト目標には妊産婦検診の受診者増加を置いていたが、本事業では妊産婦検診の増加は特に見られなかった。代わりに医療機関での出産数が大幅に増えていることが確認されており、事業前と比較すると対象地域全体で120%増となっている。

妊産婦検診の増加がなく出産ケースのみが大幅に増加した要因としては、住民が妊娠期の感染リスクよりも分娩時の直接的な感染リスクを認識し、そちらに優先度を置いたため医療機関での出産が増えている可能性、または近隣住民にステータスを知られたくない人が妊産婦検診を遠方の病院で受診する等のケースがあると推測することもできるが、推測の域を出ない。


4-2 実績とプロセス

事業は予定通り行われたか。プロセス・マネジメントを含め、やるべきことをやったか(Are we doing what we said we would do?、DAC評価5項目の「効率性」に加え、プロセス・マネジメントの適切性)を評価する。


4‐2‐1 アウトプットの達成

活動については、細かいスケジュールに多少の変更はあったが、概ね予定通りに実施された。目標としたアウトプットと指標は以下である。

1) 住民に対して母子感染予防啓発活動を行うモビライザーが育成される。
①住民に対して母子感染予防啓発活動を行うモビライザーが50名地域より選ばれる。
②モビライザーの内80%が、最終のフォローアップ研修で実施する研修理解度調査で5段階評価中4以上の評価を受ける。
③フォローアップ研修の出席率が平均して70%となる。

2) 育成されたモビライザーによって、対象地域住民へHIV/エイズや母子感染予防に関する知識が提供される。
①育成されたモビライザーが各区でグループを組み、グループで週に一回程度の啓発活動を行い、事業終了時には計約2万人の地域住民及び3千人の医療機関に通う妊産婦に啓発活動を提供する。
②組織されたグループのうち70%が月に4回以上の啓発活動を実施する。

3) 母子感染予防の知識と啓発活動方法についてのマニュアルが作成され、活用される。
①50%のモビライザーが出身のCBOの定期会合等で、CBOの所属メンバーらに対し、マニュアルを元に母子感染予防についての知識と啓発活動のノウハウを共有する。

4) モビライザーが地域で継続的かつ定期的な啓発活動を実施する体制が整えられる。
①組織されたモビライザーのグループのうち全てのグループが、活動計画を3ヶ月に1回作成し、提出している。また、平均して計画の70%が実施されている。
②啓発活動の各区のグループリーダー間の打ち合わせを月1回程度行われ、出席率が平均して65%以上となる。
③実施するフォローアップ研修の65%に県保健省のスタッフもしくはリファー先の医療機関関係者が参加している。
④医療機関での啓発活動の全ての回で、医療機関から場所の提供と広報の協力を得られ、また事業終了前半年~終了までの医療機関での活動のうち、70%の活動が医療機関側からの依頼となる。

アウトプットについて、概ね予定通りではあったが、予定通りに行かなかった点として、以下に記載するいくつかの事項以外を指摘する。


4‐2‐2 スタッフの人員配置

人員面について、日本人の現地調整員の人選に予定以上の時間を要したため、再配置が遅れた。事業実施に支障は出なかったものの、現場の職員に大きな負担がかかったため、不測の事態に備えて十分な人材を配置することが必要であった。

また、現地調整員補佐(現地スタッフ)を2名雇用していたが、当会側の人員配置の都合上、モビライザーの希望する活動予定が受け入れられないことが多々あったため、更に1名雇用できれば良かった。追加の1名がいることで、モビライザー計画する活動のほとんどを承認でき、モビライザーのモチベーションを下げることなく活動を継続し、さらに多くの住民に啓発を届けることができたと考えられる。


4‐2‐3 モビライザーの脱退

事業開始時にモビライザーを選出するにあたり、4‐1‐2で記した状況を考慮し、モビライザーとなった場合の条件を全て開示し、それを承諾した者のみがモビライザーとなるように働きかけた。

それにもかかわらず、事業開始後に「選出時と言っていることが違う」と過大な要求をするモビライザーが現れ、過去に同地域で事業を実施した団体の条件と比較し、当会の条件は厳しすぎると脱退していく者が出てきた。50名のうち3割強が脱退したが、うち多くは海外NGO=金銭的なインセンティブと捉えており、継続的な研修など他団体の提供しないメリットを考慮することなく、交通費・通信費補助額に不満をもらし脱退していった。

4‐1‐2で記した通り、対象地域で過去に他団体が行ってきた事業やその際の条件の認識が不足していたため、事前の調査を入念に行う必要がある。

結果的に、地域へ貢献したいという意思のある者だけがふるいにかけられ、残ったモビライザー32名でも指標の2万3千人を上回る地域住民にリーチできたことを考えても、脱退自体は大きな課題とはならなかったことがわかる。


4‐2‐4 モビライザー脱退に伴う予定変更

モビライザーの脱退については事前にある程度予測していたものの、活動を継続しているモビライザーのモチベーション維持の施策を追加するなどした。

計画されていたIDカードの発行や当会ピンバッジの支給に加え定期的に表彰を実施したり、事業計画段階と比べて経済状況が変わっていることなどを考慮し、交通費と通信費の支給額を引き上げるなどした。

活動の一つにマニュアルの配布があったが、マニュアルの配布時期を予定よりも後ろにずらし、最終研修で配布するに至った背景はこの点にある。当初、マニュアルは事業終了数か月前に配布し、終了時期までマニュアルを使用してもらうことで活用状況についても確認の予定だったが、モビライザーのモチベーションを維持することを考慮する中で、事業後半に配布予定だったマニュアルがモビライザーにとって大きなモチベーションの一つとなっていることがわかってきた。

マニュアルを早めに配布してしまうと、その後活動を継続するモチベーションが失われて脱退人数が増える可能性を憂慮し、マニュアルの配布予定を後ろにずらし最終研修内で配布することとした。


4‐2‐5 医療機関からの依頼ベースによる活動の実施

アウトプットのひとつに、事業終盤にかけて医療機関での活動が医療機関からの依頼ベースになることを目標としてたてていたが、これについては目標が達成されなかった。

啓発活動実施において、参加者の最低人数やモビライザーの参加人数など、事業で定めたルールが医療機関での活動状況とそぐわない点がいくつかあったため、医療機関における活動自体があまり活発に行われてこなかったこと、そのことにより医療機関担当者とモビライザーの信頼関係があまり密に構築されなかったことが達成しなかった要因だと考える。

啓発活動を実施する上でのルールとして、参加者の最低人数や実施時間、モビライザーの参加人数等を定めていたが、ウクワラ区以外の遠隔の医療機関3件では患者の数もまばらで最低人数に達さないことが大部分であったり、人数に達するために長時間待機することが多かったため、モビライザーにとっては活動が中止となるリスクの高い実施場所であり、活動を敬遠するようになっていった。

保健省主導のコミュニティヘルスワーカーを兼任しているモビライザーについては定期的に各医療機関に出入りしており、担当者とも関係作りがある程度出来ていたものの、医療機関側から公式に依頼されるような強い関係性を作ることはできなかった。

また、2013年11月に北西ウゲニャ区の医療機関担当者からモビライザーへの不満があがったこと(事前連絡の不徹底、啓発内容への不満)を機に、それまでのルールに加え、事前に医療機関担当者から承認印をもらうルールが新たに設けられたため、モビライザーにとって医療機関での活動のハードルがさらに上がってしまったと考えられる。

一方で、ウクワラ区では複数のグループが交代で医療機関での活動を実施しており、コミュニティヘルスワーカーを兼任するモビライザーを通じて非公式に活動の依頼があったり、取り扱う項目についての要望があるなど、担当者との関係構築は他3区に比較して良好だったと言える。


4‐3 事業の効果

事業は良い変化をもたらしたか。(Are we making any difference?、DAC評価5項目の「有効性」・「インパクト」に相当)について評価する。事業によるプラスの効果およびマイナス面も含めて検証する。


4‐3‐1 目指していた変化と成果

プロジェクト目標として「対象地域の住民がHIV/エイズの母子感染のリスクと予防の重要性を知り、妊産婦検診を受診する人の数が増える。」をおいた。

妊産婦検診受診者数の増加は図れなかったが、妊産婦検診よりも直接的に母子感染予防に効果の高い、医療機関での出産数が増加していることが確認された。

妊産婦検診受診者数が増えなかった要因としては、地域の医療機関を利用することによって地域住民に自分がHIV陽性だと知られてしまうことを恐れた人が、スティグマを避けるために妊産婦検診は県外(ブシアやキスム)の大きな病院を利用し※、出産のみ近所で行うケースなども考えられるが、それを考慮に入れた場合でも、出産数が2倍以上増加しているにも関わらず妊産婦検診数が横ばいであることは考えにくく、妊産婦検診数も少なからず増加していると考えるのが自然である。そのため、妊産婦検診数については、データの正確さについて確証を持つことは難しく、医療機関で正しく記録されているかどうかの点に懸念が残る。

一方、出産数については、対象地域の中心となっているウクワラヘルスセンターでは事業開始前に比較して250%以上の増加、また西ウゲニャ区のシフヨ診療所でも34%増加した。遠隔地にある残り2か所の診療所では増加傾向は見られなかったが、事業開始前は出産自体を受け入れていなかったり、診療所で対応できないケースをウクワラヘルスセンター等の大きな施設に照会している可能性も考えられる。いずれにしても、対象地全体の医療機関の出産数は事業開始前と比べて2倍以上に増加している。

保健省主導のコミュニティヘルスワーカーの設置や他団体の活動等もあるため、本事業の成果が当会事業によってのみもたらされた変化であるとは言いきれないものの、モビライザーの啓発によって少なからず医療機関での出産が促進していると考えられる。

事業終了時に当会が地域の女性に対して行ったインタビュー結果によると、当会の活動を認識していると答えた女性13名全てが、啓発活動から学んだ知識として“妊産婦検診の受診”や“医療機関での出産”をあげていた。また、当会の活動を認識していない女性よりも、認識している女性の方が直近の出産を医療機関でおこなう傾向にあった。13名中残る4名は結果的に自宅出産となったものの、医療機関で出産するために交通手段を手配している最中の出産など、医療機関で出産する意思があったこともわかっている。

当会活動を認識している女性の中には、陣痛が始まってからモビライザーに助けを求め、モビライザーに医療機関に連れていってもらったというケースが3件あり、さらに活動を認識している女性の中には、過去には自宅出産をしていたが、直近の出産は医療機関でおこなうという行動変容が複数ケースで見られた。

また、母子感染予防サービスを受けたことがある(HIV陽性、またはHIV陽性であると考えられる人)と答えた4名全てが当会の活動を認識しており、医療機関で出産をおこなったこともわかっている。

これらのことから、モビライザーの啓発によって医療機関で出産することの重要性を認識し、実際の行動変容を促していると考えられる。

※HIV陽性者が近隣住民からのスティグマを恐れ、自分のステータスを知られないよう敢えて他県の病院で治療を受けるというケースは、本事業対象地域のみならず、様々な場所で報告されている現象である。


4‐3‐2 上位目標

上位目標「対象地域での母子感染率が下がる。」については、母子感染率のデータが医療機関に蓄積されていないことが原因で確認できなかった。

医療機関からもらった一部の情報から分析すると、対象地のHIV感染率を考慮した場合、医療機関で出産した女性のうちHIV陽性者率があまり高くなく(10%程度)、医療機関を利用していないHIV陽性者が未だに数多くいることが予測される。

一方、当会が行った女性へのインタビュー結果によれば、全20名中、HIV陽性と答えた2名及びステータスを打ち明けたくないと答えた2名の計4名が母子感染予防サービスを受診し、医療機関で出産していることから、HIVステータスを把握している人の間では母子感染予防サービスは認知されていると言える。このことからも、対象地の母子感染予防は少なからず減少していると推測している。


4‐3‐3 予期した変化、予期しなかった変化

当会はモビライザーを育成するにあたり、地域から信頼されるモビライザーであることを目指して活動を展開した。

モビライザー2名以上でグループを組む、活動実施有無の事前連絡を徹底する、時間厳守などのルールはその一部であり、モビライザーからは「厳しすぎる」という声も上がっていたが、モビライザーが地域から信頼を得る上で大切な要素になったと考えられる。

事業開始当初、モビライザーの中には“普通の住民”として認識されていたため、啓発活動のために広報をおこなっても住民が集まらないことがあり、月例反省会では人集めに苦労していることが常に課題に挙がっていた。

ところが地道に啓発活動を続けていくにつれ、モビライザーの持つ情報の重要性を認識した住民が別のCBOを紹介したり、見知らぬCBOから啓発活動を依頼されるなど、「クチコミ」で活動の評判が伝わっていった。

事業終盤になると「啓発活動の依頼を受けているがまわりきれない」という嬉しい悲鳴もモビライザーからあがるようになり、活動実施回数を引き上げてほしいという要望が多くあがるようになった。

結果として、モビライザーたちは私たちの予想を超える252の新規CBOにリーチし(ウクワラ区78団体、西ウゲニャ区46団体、北ウゲニャ区98団体、北西ウゲニャ区30団体)、目標値であった2万人を超える2万5千人以上の地域住民に対し啓発活動を実施した。

また、モビライザーが地域からの信頼を実感するようになった事業終盤には、モビライザーの身勝手な理由による活動の中止や延期が減ったことからも、地域からの信頼がモビライザーのモラルを保つことにも寄与していると推測される。


4‐4 事業の持続可能性

事業によってもたらされた変化はこれからも継続するか(How sustainable are the changes?、DAC評価5項目の「自立発展性」に相当)を評価する。


4‐4‐1 事業終了後の継続性

本事業は県をカウンターパートと置き、特に県保健省と連携して進めてきた。これまでの現地の状況を考慮すると、行政側がモビライザーの活動継続のインセンティブを担保するのは困難であることが容易に推測できたため、物的・金銭的にインセンティブに頼らず、地域からの“信頼”がモビライザーのインセンティブになるよう事業を組み立てた。

保健省を含めた行政とは、モビライザーをリソースパーソンとして認識し、地域の啓発活動等で積極的に起用する旨の合意をしている。

事業終了に先立ち、前述の保健省主導で配置しているコミュニティヘルスワーカーのうち何らかの理由で欠員となってしまった地域において、当会モビライザーが新たにコミュニティヘルスワーカーとして登用されていることを確認しており、モビライザーが保健省側からもリソースパーソンとして既に認識されていることが伺える。また、研修最終回以降に区長から依頼を受けて自主的に活動を実施したケースも確認されている。

これまでにもモビライザーによって、当会から交通費・通信費補助の発生しない自主的な啓発活動が多数実施されているが、それらは地域からの要望や信頼に紐づいて実施されているところが大きい。現在残っているモビライザーには、自分の助けを必要としている、情報を必要としている人たちのためになりたいと強く願う者が多い。

フォローアップ研修最終回で実施した質問票にも、地域から信頼されていることを誇りに思い、それが事業を通じて得た一番の成果と記述する者もいることが確認されている。地域住民から支えられるのみではなく、行政側からもコミュニティヘルスワーカーへの登用や活動依頼という形で信頼が示されることにより、モビライザーの活動継続にポジティブな影響を与えると考えられる。

なお、モビライザーにはマニュアルを2冊ずつ配布しているが、これはマニュアルを自宅に保管してしまうことで活用しなくなるリスクを回避するためにとった対応である。もともとモビライザーは地域のCBOに所属していることから、各自の団体でマニュアルを活用して身近な人たちから啓発を継続していかれる、また他団体へネットワークを広げながら、自分にできるペースでの継続が可能となる。

画像42

(写真)継続した活動を行ったモビライザーたち

※こちらの事業はJICAの草の根技術協力事業として実施されました。


終わりに

いかがでしたでしょうか。

普段、PLASが発信しているアフリカレポートは、なるべくわかりやすく、ご支援くださるみなさんに活動の様子をお伝えできるよう、写真やエピソードをいれて書いています。

今回は、玄人向けに、活動のニーズから実施、評価までを、一部は社内で使っている言葉をそのままに掲載しました。

国際協力の世界で活動したい、働きたいと思っている方、すでに働かれている方などに少しでもお役立ていただけたらと思います。

そして、現在PLASではこのレポートにあるような地道な活動を一緒に展開してくれる仲間を募集しています。PLASの海外事業のアシスタントマネージャーに関心がある方は、ぜひこちらの募集ページをご覧ください!


また、支援をご検討の方、寄付で応援したいと思ってくださった方は、マンスリーサポーター募集キャンペーンについて、ぜひご覧いただきたいです。



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