プラントベースダイエットとは?
植物を中心とした「プラントベースダイエット」という食事法をご存知ですか?
この食事法は、近年、英語圏を中心に急速に広まってきています。
「プラントベースダイエット」や「プラントベース」という言葉を見聞きしたことがある方もいるかもしれませんが、まだまだ馴染みのない方も多いかと思いますので、ここで簡単に説明しておきたいと思います。
プラントベースダイエット1とは?
“plant-based(プラントベース)”という英単語は、「植物由来の」、「植物性の」などと訳されます。植物を中心とした、動物性の成分をある程度または完全に避けた食品や食事が「プラントベース」と呼ばれることは一般的で、肉のみを省いたベジタリアン食も、肉・魚・乳製品・蜂蜜などを完全に省いたヴィーガン食もまとめてそう呼ばれることがあります。
一方で、「プラントベースダイエット」と呼ばれる食事法が存在し、その定義を探すと以下が見つかります。2
“A plant-based diet consists of all minimally processed fruits, vegetables, whole grains, legumes, nuts and seeds, herbs, and spices and excludes all animal products, including red meat, poultry, fish, eggs, and dairy products.”(プラントベースダイエットとは、加工が最小のあらゆる果物、野菜、全粒穀物、豆類、ナッツ・種子、ハーブ、スパイスから成り、赤肉、家禽、魚、卵、乳製品を含むあらゆる動物性製品を除いた食事法である)
この定義によると、プラントベースダイエットは、あらゆる動物性製品を避けた、植物を中心とした食事のことで、植物の加工が最低限であることを特徴としていると読み取れます。
つまり、単純に植物由来であることを意味する「プラントベース」と、食事法を指す「プラントベースダイエット」には違いがあることが分かります。
ヴィーガン食との違い
「動物性製品を完全に排除した食事」と聞いたら、肉・魚・乳製品・蜂蜜などを完全に省いた食事であるヴィーガン食を思い浮かべるかもしれません。いずれも認知度が低いこともあってか、「ヴィーガン食」と同じような意味で「プラントベース(ダイエット)」という言葉が使われていることがあります(もちろん、単純に「植物由来」の意味で使用されている場合もあります)。しかし、食に関する話題において、この2つの言葉は必ずしも同義ではありません。「ヴィーガン食」は「プラントベースダイエット」と同じ食事法を指してはいないからです。
両者の違いを簡単に挙げるならば、
プラントベースダイエット:健康を目的として科学的根拠に基づいた植物を中心とした食事法。
ヴィーガン食:動物搾取の廃止を目的として動物性食品を排除した食事法。
といったところでしょうか。
この2つには重複する部分もありますし、しない部分もあります。
たとえば、ブルーベリーは動物性成分を含まないのでヴィーガンと呼ぶことができ、多数の研究で健康によいことが裏付けられているためプラントベースダイエットでも推奨される食品です。一方、サラダ油などの精製油脂は動物性成分を含まないためヴィーガンと呼ぶことができますが、加工度が高いためプラントベースダイエットでは推奨されません。同様に、精製された白米も動物性成分を含みませんが、加工度が高いためプラントベースダイエットで推奨される食品ではありません。
「プラントベース」という言葉を見たら、「動物性を含まない」(ヴィーガン食)という意味で使用されているのか、「プラントベースダイエットの略語」として使われているのかを判断するとよいでしょう。この違いを知っておけば、油がふんだんに使用されている料理や精製された白米を中心とした食事が「プラントベース」と説明されていても、それは健康を目的とした食事(プラントベースダイエット)ではないと判断することができるはずです。
ハーバード公衆衛生大学院の栄養学者が勧める食事
プラントベースダイエットが健康を目的とした食事方法であることは、以下のサイトからも分かります。(※上記のプラントベースダイエットの定義とは少しずれがあります。)
https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/the-right-plant-based-diet-for-you
(同じ図を示した日本語版はこちらhttps://www.hsph.harvard.edu/nutritionsource/healthy-eating-plate/translations/japanese/)
これは、ハーバード公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health:HSPH)の栄養学者が科学的根拠に基づいて作成した「健康的な食事プレート」と呼ばれるガイドです。この「健康的な食事プレート」の説明欄には、はっきりと”plant-based(プラントベース)”の文字が記されています。
リンク内の図が示すとおり、推奨されているのは野菜、果物、穀物、健康的なタンパク質などで構成された食事です。WHO(世界保健機関)によって発がん性との関連が指摘されている加工肉や赤肉だけでなく、チーズやバターなどの乳製品、牛乳、精製された白いお米やパン、砂糖を含む飲料などを制限することが提案されています。
ホールフーズプラントベースダイエットとは?
プラントベースダイエットの中でも特に注目されているのが、ホールフーズプラントベース(whole foods plant-based、以下WFPBと略します)と呼ばれる食事法です。3
ホールフーズとは「天然の形状にできるだけ近い食品」。りんごで例えるなら、アップルパイでもなく、りんごジュースでもなく、加工を施していない、木から採れた状態のりんごのことです。日本語では「自然食」とも呼ばれます。
WFPBは、加工度の低い野菜・果物・穀物・豆・ナッツ・種子などの植物で大部分が構成された食事です。精製された食品(白砂糖、白い小麦粉、オリーブオイル、ココナッツオイルなど)の他に、人体が本来認識できない食品添加物や保存料といった化学物質も避けることが推奨されています。
米国では、栄養科学研究の第一線で50年以上にわたり活躍されているコーネル大学栄養生化学部名誉教授であるT・コリン・キャンベル博士を初めとして多くの医師や栄養士がWFPBを推奨しており、近年、取り入れる人が増えてきています。心臓病、糖尿病、がん、肥満などといった問題は世界中で蔓延していますが、WFPBは、こういった病気を防ぎ、場合によっては逆転させ、長期的な健康を手に入れるのに最も適切な食事法であると考えられているためです。
菜食の健康に対する影響については様々な意見が見受けられますが、プラントベースダイエットは健康を犠牲にするどころか増進する食事法として提案されているということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
https://www.herbivofit.comでは、プラントベースダイエットを楽しく続けるコツやレシピなどをシェアしていますので、健康的な生活にお役立ていただければ幸いです。
1. この「ダイエット」は、「食事」「食事法」を意味するもので、日本で言われる「減量」を意味する単語ではありません。
2. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5466934/
3. 「ホールフーズプラントベース」ではなく「プラントベースホールフーズ」と呼ばれることもありますが、意味は同じです。