Amazon Prime Videoで観れる!大失敗に終わったSF映画[3選]|⑤
こんばんは ぷらねったです
様々な理由で興行的大失敗を引き起こした SF映画たち...
今回は「Amazon Prime Videoで観れる!大失敗に終わったSF映画」というテーマで そんなSF映画を紹介していきます
1.ハイ・ライフ (2018年)
監督は クレール・ドニ
製作費は 800万ユーロ 概算13億1500万円
それに対する興行収入は 280万ドル 概算約4億6000万円
元囚人の人々を乗せた宇宙船を描く フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス・アメリカ合作のSF映画です
広告費などを除いた単純計算で 8億5500万円ほどの損失を生みだしてしまいました
舞台は 太陽系を越えて 宇宙を突き進む1隻の宇宙船
この宇宙船の乗組員たちは 科学者のディブス1名を除き かつて重い刑を科された元囚人という共通点がありました
彼らは刑の免除という条件と引き換えに ブラックホールから代替エネルギーを抽出するというミッションを課されています
また 彼らは禁欲的な生活を強制されており 科学者のディブスが行う生殖実験に参加させられ まるで実験用モルモットのような扱いを受けていました
そんな中 地球を離れて3年以上が経ち 密室で終わりなき旅を続ける宇宙船の前に ついにミッションの最終目標地となるブラックホールが現れる...というストーリーです
本作品はクレール・ドニ監督が15年間ほどあたためてきたアイデアを元に制作されました
『TENET』でお馴染みの ロバート・パティンソンが主演しており デヴィッド・クローネンバーグ監督の『コズモポリス』に続いて ジュリエット・ビノシュとの共演となっています
ドニ監督にとって初めて英語で制作した映画のようですが これは『宇宙で人々がフランス語を話すことは想像できない』という理由であり 英語・ロシア語という選択肢の中で 英語を選択したという理由だそうです
印象的なタイトルの『ハイ・ライフ』とは『宇宙での生活』を示しているそうですが アフリカでは『白人の生活』を意味することもある言葉だそうです
そんなこの映画の中では 死刑囚を乗せた宇宙船がブラックホールへ向かうまでの物語が描かれます
(元)死刑囚を乗せた宇宙船という設定は 知る人ぞ知る怪作 マルク・キャロ監督の『ダンテ01』と共通する部分のあるテーマです
今作では宇宙船での生殖実験が主なテーマとなっており 詳しい内容は伏せますが かなり大人向けな内容になっています
「宇宙で赤ちゃんが生まれる」というテーマは 長期の宇宙探査において スティーブン・ホーキング博士が提唱した案にインスピレーションを受けたそうです
作中で宇宙船の乗員が着る服には数字の7が書かれているものがありますが これは映画内で描かれているのと同じような宇宙船が他にも存在することを 暗に示しているのだといいます
性にまつわる内容の描写では一部過激な演出も含まれており トロント国際映画祭でワールドプレミア上映された際は 退場者が続出したそうですが 評論家からは好評だったといいます
主演のロバート・パティンソンは 元々クレール・ドニ監督の大ファンだったそうです
監督との顔合わせの前にはとても緊張し ブラックホールやひも理論についてウィキペディアで学んで準備し 初対面に備えたそうです
撮影が始まった時点では 台本にはわずか30ページほどの内容しか書かれておらず クレール・ドニ監督の映画に対するビジョンのみが書かれていたそうです
俳優たちの中には混乱した者もいたために 撮影前には緊急ミーティングを開くことになったほどだといいます
クレール・ドニ監督は演出の意図として『未知の世界を舞台に 自分がなぜそこにいるのかをはっきりと理解していない登場人物たち』を描くため このように俳優陣にすべてを理解させない手法を取ったことを明かしたそうです
宇宙船を舞台にした映画であり クセのある尖った内容になっている 本作品
万人ウケしないのは間違いないですが 気になる方はぜひ観てみてください
2.アース・フォール JIU JITSU (2020年)
監督は ディミトリ・ロゴセティス
製作費は 2500万ドル
それに対する興行収入は なんと約10万ドル
とにかく格闘シーンに重きを置いた アメリカ・キプロス合作のSFアクション映画です
広告費などを除いた単純計算で 製作費のほぼ全額に当たる 2490万ドルほどの損失を生みだしてしまいました
主人公は 米軍諜報部から連れ去られた 記憶喪失のジェイクという男
彼を連れ去ったケウンは銃撃をものともせず 米兵を鮮やかに倒して姿を消しました
ケウンの仲間の元に連れていかれたジェイクは「彗星とともにはるか遠くの銀河からエイリアンが現れ 最強の人類に闘いを挑んでくる」ということを知らされます
彼ら9人は人類の存亡を賭け 命を賭してエイリアンとの決戦に挑む...というストーリーです
本作品では ギリシャ生まれのディミトリ・ロゴセティスが監督をつとめました
「コンティニュー」などにも出演した アクション俳優として知られるフランク・グリロや 日本でもお馴染みのニコラス・ケイジが出演しています
キプロスでハリウッド映画が撮影されたのは 史上初のことだといいます
作中では 基本的に格闘技だけでエイリアンと戦う 9人の人間たちの物語が描かれます
相手のエイリアンは人型であり 彼らも同じく格闘技を駆使して戦い どこか日本の特撮的なデザインが施されています
このエイリアンは 遥か昔から6年ごとに地球に現れることになっており「かつて人類の先祖に戦い方を教えたことがある」という かなり特殊な設定です
そして エイリアンは6年ごとに地球に訪れ その際に行われる戦いを人間側が拒めば 人類はエイリアンに絶滅させられる...つまり 曲がったことを許さない とにかく戦いを求むエイリアンなのです
主人公側のキャラクターは 素手,剣,刀,ヌンチャク,トンファーなど 様々な武器を使って交戦します
しかし人間側にとっては負けて死ぬことを前提とした戦いであり 使命を負った者たち9人が エイリアンに無謀な戦いを挑む物語なのです
あらすじだけ聞くと少しおもしろそうに聞こえるかもしれないのですが 少し注意が必要です
まず エイリアンが登場するのは中盤以降なので そこまでは単なるアクション映画となっており 少しの辛抱が必要です
さらに タイトルに"柔術"を表す言葉が入っているのに その柔術が作中で使用されていないという 不思議な映画なのです
とにかく格闘シーンの描写に使う時間が多いのですが それにも関わらず そのアクションがあまり良くないという 致命的な仕上がりになっています
製作費は2500万ドルですが その内20%になる500万ドルは ニコラス・ケイジのギャラだったそうです
彼の演じる役はブルース・ウィリスが演じる予定もあったといいます
撮影は5週間行われ ニコラスケイジは最初の3日間だけしか登場していないそうです
そんなこの映画にはまさかの続編の計画もあるという噂なのですが 個人的には実現しないのでは...と思っています
『エイリアンと格闘技はこんなに合わないのか』ということを感じさせてくれるような内容で かなり空虚な中身になっている 本作品
映画としてのバランスは良くないと思うので 自信をもってのおすすめはできませんが 怖いもの見たさで興味がある方は チェックしてみてください
3.マトリックス レザレクションズ (2021年)
監督は ラナ・ウォシャウスキー
製作費は 1億9000万ドル
それに対する興行収入は 約1億5700万ドル
人気シリーズの第4作目となる アメリカのSFアクション映画です
広告費などを除いた単純計算で 3300万ドルほどの損失を生みだしてしまいました
マトリックスの世界において デウス・マキナ社の社員として生きるトーマス・アンダーソンは "モーダル"という仮想世界の中でプレイできるビデオゲーム『マトリックス』シリーズ三部作のデザイナーとして大成功を収めました
しかしそれは植え付けられた偽物の記憶であり 救世主ネオとしての過去の記憶は 自身が構想したゲーム内のストーリーだと思わされていました
彼は現実と夢が混同するような症状に悩んでおり そのため医師から青い錠剤を処方され それを毎日服用しています
そんな中 アンダーソンの目の前にバッグスという女性が現れ モーフィアスの前に案内された彼は 赤い錠剤を服用するように指示を受ける...というストーリーです
本作品では ラナ・ウォシャウスキーが単独で監督をつとめました
これまでのシリーズでは兄弟での共同監督だったことを考えると これは大きな変更点となります
また 主演のキアヌ・リーブスとキャリー=アン・モスが続投する一方で エージェントスミス役のヒューゴ・ウィーヴィングは スケジュールの都合でアーカイブ映像のみの出演となり 代役としてジョナサン・グロフが演じることに
モーフィアス役のローレンス・フィッシュバーンもアーカイブ映像のみの出演となり ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世に変更となっているなど 俳優陣の変更もされています
さらに音楽も過去作品とは違い 傑作ループ映画『ラン・ローラ・ラン』や『クラウド アトラス』でも知られる トム・ティクヴァが担当しました
作中では もはや救世主とは程遠く 薬漬けとなってしまったトーマス・アンダーソンことネオが 世界を取り戻そうとする物語が描かれます
全体を通してメタ視点での演出がかなり目立ち 特に序盤は"マトリックスの続編を作りたくなかった ラナ・ウォシャウスキー監督自身"を投影したような 皮肉たっぷりの会話シーンが多いです
例えば会社側から「シリーズ4作目を作らなければ 契約を解除する」と言われたり「リブートは売れる」など 現代の映画製作に関する痛烈な批判もセリフには含まれています
これまでの『マトリックス』シリーズから考えると やはり俳優陣の変更は痛いところで 特にエージェントスミス役のヒューゴ・ウィーヴィングがいないことは もったいないと感じるところです
俳優の変更により エージェントスミスは人間味のあるキャラクターに変貌しており 以前までの無機質な雰囲気は無くなってしまったように感じます
また バレットタイムを始めとするアクションシーンもこのシリーズの大きな特徴だと思いますが なぜか目立った特殊効果の使用頻度は少なく 映像面での主張は控えめです
この辺りは何か意図があったのでしょうか...
本作品の製作に至った経緯として ラナ・ウォシャウスキー監督に起きた出来事と 考え方の変化がありました
元々は『マトリックス レボリューションズ』以降 ワーナーブラザーズから毎年届く続編製作のオファーを断り続け シリーズ作品をこれ以上作るつもりはなかった ウォシャウスキー姉妹
しかし2019年に 両親 そしてラナの親友が亡くなるという悲しい出来事がありました
この悲しみの中で ラナはもう戻ってこない彼らのことを思い ネオとトリニティーが生き返る物語を思いつき ワーナーブラザーズに続編の構想を伝えたのだといいます
また 製作までには様々なうわさが飛び交いました
例えば スピンオフとしてモーフィアスを主人公にした前日譚を描いた映画だとか 次世代の新しい主人公による続編の製作など...
そして大手スタジオがリブートや続編を好む時代において 監督交代や"マトリックス・ユニバース"とでも言うべきリバイバルプロジェクトの可能性も報じられました
最終的には ラナ・ウォシャウスキーが単独で監督をつとめる続編ということで製作され ラナにとっては「両親や親友の死の悲しみを紛らわせるために制作した映画」という気持ちだったそうです
脚本はNetflixのドラマ『センス8』の最終シーズンと同じく アレクサンダル・ヘモン, デイヴィッド・ミッチェル, ラナ・ウォシャウスキーがクレジットされています
この内デイヴィッド・ミッチェルは ウォシャウスキー姉妹が監督した『クラウド アトラス』の原作小説の著者として知られる人物です
こういった布陣で製作が進み 2020年2月に撮影がはじまりました
オリジナル3部作の際は製作費削減の意味もあって主にオーストラリアで行われた撮影ですが 今作はアメリカ・ヨーロッパで撮影されました
撮影中の仮タイトルは『Project Ice Cream』というものだったそうですが サンフランシスコでの撮影では建物や街灯が損傷し 地元住民や市職員の間で不満の声があがったそうです
このこともあってサンフランシスコ警察に42万ドルを支払うことになってしまったといいます
その後コロナウイルスのパンデミックの影響をモロに受けてしまい 一時製作が中止され ラナ・ウォシャウスキー監督は"未完成の伝説的映画"として終わることまで考えたそうです
しかしキアヌ・リーヴスらキャストからの強い励ましもあり 約半年後に撮影が再開され 3か月ほどの撮影を経て完成に至ったといいます
一世を風靡したシリーズの最新作が20年近い時を経て公開されるということで 大きな注目を集めながらも評価は芳しくなく 興行的には失敗に終わっています
しかし2024年には『キャビン』で知られるドリュー・ゴダードが監督をつとめた続編の製作予定が明かされており ラナ・ウォシャウスキーが製作総指揮をつとめることが公表されています
そんな 時おりシュールな雰囲気も漂う シリーズ4作目となった本作品
過去作にあった貫禄は薄れ 世間の評判は著しく悪い印象ですが 個人的には嫌いではないです
まだ観ていない方は ぜひ観てみてください
あとがき
今回は「Amazon Prime Videoで観れる!大失敗に終わったSF映画」というテーマでのSF映画紹介でした
『マトリックス レザレクションズ』以外の2作はかなり無名かと思いますが そんな映画も配信してくれることに ひとりのSFファンとしては感謝したいところです
大失敗映画については 今後もまだまだ紹介させていただきたいと思っています
最後までご覧いただき ありがとうございました