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超低予算でつくられた名作・傑作・カルトSF映画①

こんばんは ぷらねったです
わずかな製作費をもって アイデアと工夫で乗りきった 素晴らしいSF映画たち
今回は「驚異...超低予算で描かれた名作・傑作・カルトSF映画」をテーマに 素晴らしいSF映画を紹介していきます


1.アナザープラネット (2011年)

監督は マイク・ケイヒル
超低予算で製作された アメリカのSF映画です

主人公は 17歳で名門大学MITに合格した 頭脳明晰な少女のローダ
彼女はある夜 不思議な惑星が空にあるのを目撃しますが それに気を取られるあまりに衝突事故を起こしてしまい 相手家族の夫であるジョンは生き残りましたが 妊婦と子ども1人が亡くなってしまいます
4年の刑期を経て出所したローダは 被害者遺族の夫ジョンの元へ謝罪するために出向きますが 本来の目的を話せず 身分を偽ってしまいます
そして 清掃会社のスタッフと名乗りジョンの家へ定期的に通うことになる...というストーリーです


製作費は なんとたった10万ドル
主演のブリット・マーリングは製作・脚本にもクレジットされており 本作品の製作に大きく関わっています
「決死圏SOS宇宙船」と同様に 複製された地球をテーマにした映画ですが それに比べてより内向きな 人間ドラマを中心に描かれています


まるで満月のように空に浮かぶ 複製地球の姿が印象的なこの映画では 超低予算映画ならではと言える 製作における裏話があります
まず 監督のマイク・ケーヒルの故郷であるコネチカット州ニューヘイブンにて撮影がおこなわれました
家のシーンで撮影に使用するセットは 実家や友人の家を無料でレンタル
さらに 夜遅くに道路の一部を封鎖しておこなわれた撮影は 彼の友人である地元警察官の協力によって実現したと言います
また 刑務所から出てくるシーンがありますが これは主演のブリット・マーリングが ヨガインストラクターの振りをして刑務所内に入り すぐに出てくることで撮影が行われたと言います


ちなみに ジョン役のウィリアム・メイポーザーはトム・クルーズの従兄弟としても知られますが 彼は撮影1日につき100ドルで働く契約になっていたそうです
贖罪についてのストーリーが迎える ラストシーンも印象的な本作品
低予算ながらも見ごたえのある 奇妙な設定を活かしたSF映画となっています


2.地球、最後の男 (2011年)

監督は ウィリアム・ユーバンク
ひとりの男の孤独なストーリーが宇宙を舞台に描かれる SFサスペンス映画です

物語は 1864年の南北戦争における 北軍の孤独な兵士であるリー・ブリッグス大尉についてのシーンから始まります
戦時中 ブリッグスは謎の物体を調査する任務を任されたため 戦争を尻目に 目的地へ向けて出発します
そこから150年以上が経った 2039年
地球軌道上の宇宙ステーションには 保守任務をひとり孤独にこなす 宇宙飛行士のリー・ミラーがいました
そこでの作業途中に突然地球との交信が途絶えてしまったため ミラーは宇宙空間に取り残されてしまいます
生命維持装置が消耗していく中で ミラーは孤独なサバイバルに挑むことに...というストーリーです


製作費は 50万ドル
「アンダーウォーター」で知られる ウィリアム・ユーバンクが監督をつとめ 彼にとって 長編映画監督デビュー作となった映画です
本作品は「シン・レッド・ライン」に影響を受けて制作されたといいます
邦題はともかく 原題は『Love』というシンプルなものになっており 滅びゆく地球や 人との繋がり そして愛の重要性をテーマにしています
作中では主に 孤独な宇宙船で自分と向き合いながら 徐々に謎へ近づいていくような物語が描かれます
終始ミステリアスなシーンばかりで 小さなアクシデントなどの細かい展開こそありますが 大きな動きは終盤までないので 雰囲気を楽しむのがおすすめです


超低予算ながらも セットにお金が掛かりそうな宇宙船や 戦場を舞台にしていますが ここにはお金を掛けない工夫が凝らされています
当初 他の映画で使用されたセットをレンタルする予定だったそうですが これは予算オーバーのために断念
代わりに 9か月も掛けてセットを建設することになり 保冷バッグ,断熱材,クリスマス用のライトなどを用いて安く済ませたといいます
おそらく宇宙服は保冷バッグの生地をつなぎ合わせて作り 宇宙船のボタンは クリスマス用のライトを裏に忍ばせて光っているのでしょう


監督のウィリアム・ユーバンクは アメリカのオルタナティブロックバンドである"Angels & Airwaves"のミュージックビデオを本作品以前に制作しており その流れでバンドと共に この映画を制作することになったといいます
そのため Angels & Airwavesは 音楽だけでなく 製作にもクレジットされています
最近Netflixで公開された「スペースマン」にも通じる内容が描かれる 本作品
ミステリアスな映画や 宇宙船を舞台にした映画が好きな方は ぜひ観てみてください


3.シグナル (2014年)

こちらも監督は ウィリアム・ユーバンク
先ほどの「地球、最後の男」の編集中に構想が開始されたという SFスリラー映画です

マサチューセッツ工科大学に通うニックは 大学のパソコンにハッキングを仕掛けてきたハッカーの居場所を突き止めるため 友人のジョナスやガールフレンドのヘイリーとともにネバダを訪れます
しかし そこで何者かに拉致されてしまい 気が付くと政府の隔離施設に監禁されていました
職員の説明によれば"何か"に接触して感染したため隔離されているといいます
そんな時 どうにかして施設を出ようと試みたニックの身に 思いがけない力が発動する...というストーリーです


製作費は 400万ドル
先ほど紹介させていただいた「地球、最後の男」のウィリアム・ユーバンクが監督をつとめ 彼にとっては2つ目の監督作品となった映画です
脚本にクレジットされたカーライル・ユーバンクは 彼の兄弟です


本作品はデイヴィッド・リンチやスタンリー・キューブリックなどに影響を受けつつ「トワイライト・ゾーン」のドラマのように どこか捉えどころのはっきりしない 奇妙な物語を目指して制作されたと言います
これが影響したのか 観る側へ正解を提示するような内容ではなく 意味深なシーンばかりが映しだされます
そのため 作品に対してはっきりとした答えを求める方には あまり向かない映画かもしれません
大学生の青春を描いたロードムービーから 話は急展開をみせ 舞台は正体不明の研究所へ...
防護服に身を包んだ人々 そして自分は一体何者なのかを探るような物語になっています


登場人物が少なく ミニマルでスタイリッシュな世界観は 同じく低予算で製作された「月に囚われた男」なども連想させます
また 緊張感のある音楽も魅力的で 注目ポイントのひとつになっています
「マトリックス」のモーフィアス役でお馴染みの ローレンス・フィッシュバーンも出演していて 物語が思わぬ結末をむかえる 本作品
終始謎をはらんだ ミステリアスな雰囲気の低予算SF映画となっています


4.ザ・ゲーマーズ (2002年)

監督は パヴェル・サナエフ
おそるべき超低予算で製作された ロシアのSFアクション映画です

主人公は ゲーマーのグループであり 寮で暮らす若者たち
彼らはゲーム大会で優勝した副賞として 新作ゲームの収録されたディスクを手に入れました
そして 自分の部屋に戻ってPCにゲームのインストールを開始すると なぜか視界が歪み PCが壊れてしまいました
その後 彼らはこれが単なるゲームではなく ゲーム内のキャラクターと同じ能力を得るシステムだったことに気づく...というストーリーです


製作費は なんと1000ドル
作中では ゲーム大会で優勝したことをきっかけに おかしな運命に巻き込まれていく若者たちが描かれます
昨今流行している FPS視点の射撃ゲームにおけるスピード感や プレイヤーの射撃の正確性はおそろしいものがあるのですが それが現実で実現したらどうなるのか...そんな雰囲気の物語です


ガンアクションが多く見られる映画ですが サスペンス調の脚本はかなり凝っていて 各方向の陰謀が絡み合い 状況が二転三転していくため 中盤以降がすごくおもしろいです
ゲーム感覚で殺人をおこなう者と それに同意できない者たち
友だち同士だったはずが 徐々に壊れていく複雑な人間関係が描かれるのです
強大な力を手に入れてしまった者がむかえる悲劇は 作品内容は違えど 2012年の映画「クロニクル」を彷彿させます


最強の兵士となった若者たちの 度重なる裏切り合いが描かれる 本作品
1000ドルの超低予算映画とは思えない 見ごたえのある映画となっています


5.ザ・ワン・アイ・ラブ (2014年)

監督は チャーリー・マクダウェル
パラレルワールド的な内容の描かれる コメディスリラー映画です
個人的な判断基準からすればSFになるので 紹介させていただきます

結婚生活がうまくいかないためにセラピーに通っている イーサンとソフィーの夫妻は セラピストにおすすめされた 素敵な別荘で週末を過ごすことにしました
初めは久々にロマンチックな時間を過ごし うまくいっていたにも関わらず 奇妙な認識のすれ違いによって 微妙な空気が流れ始めてしまいました
"トワイライトゾーン的な状況"に陥る中で 2人の愛が試されることになる...というストーリーです


Netflixで公開された映画「ザ・ディスカバリー」などで知られる チャーリー・マクダウェルが監督をつとめました
本作品は ある別荘で自らと同じ姿の人物に出会った 夫妻の物語になっています
そこでは『昨夜ケンカしたままのはずが 妻だけが仲直りしたと言い張る』,『ベーコン嫌いの妻が 朝からベーコン料理を作る』など まるで2人にケンカを引き起こさせるような 奇妙なすれ違い現象が起こります
そんなおかしな状況で 夫妻が協力して この"トワイライトゾーン的な現象"を解明しようとするという 一風変わった内容です


個人的にはそもそも コメディスリラーというジャンルの映画自体 あまり聞いたことがなく 不思議な感触の作品だと感じます
もう一人の自分たちとの不思議な物語がむかえるラストは 賛否両論あるであろう 本作品
特殊な設定が光る 一風変わった映画となっています

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6.ランダム 存在の確率 (2013年)

監督は ジェームズ・ウォード・バーキット
ある1軒の家を舞台にした SFスリラー映画です

その日は ミラー彗星が地球に最も接近する日でした
エムは恋人のケヴィンと共に 友人である リーとマイクのホームパーティーに訪れます
ワインと料理を囲み 久々に集まった男女8人は 彗星にまつわる奇妙な出来事の話題で盛り上がりました
そこで突然起きたある出来事により パニックになる8人
不安に思ったエムたちは 隣家の様子を見に行くことになりますが そこで目撃したのは まったく同じような外見の家にいる自分たちの姿だった...というストーリーです


製作費は 5万ドル
ジェームズ・ウォード・バーキット監督の 長編映画監督デビュー作です
作中では 自分たちと同じ姿をした人物に遭遇する 奇妙な物語が描かれます


監督をつとめたジェームズ・ウォード・バーキットは"スタッフなし 脚本無し"というアイデアを思いつき 本作品で試しました
その準備として まず 互いに面識のない俳優だけを起用
撮影が行われた5日間 俳優陣には台本が用意されず 台本の代わりに 毎日メモが渡されました
メモには その日に作中で起きたとされる出来事や裏話 そして行動の動機などが書かれていたそうです
また 他の俳優がどんなメモを受け取ったかは互いに知らされず 俳優陣は撮影中 自分が演じている映画がどんな内容になっているのかさえ はっきりと分からなかったといいます


パラレルワールドというテーマや“シュレディンガーの猫”など 量子力学の思考実験に着想を得て制作されたとされる 本作品
低予算でなければ生まれ得なかったであろう アイデアの光るSF映画となっています


7.ゼイラム (1991年)

監督は 雨宮慶太
宇宙の賞金稼ぎが主役で描かれる 日本の傑作映画です

凶悪な宇宙犯罪人であるゼイラムを追って 地球に来訪した バウンティハンターのイリア
イリアは 制限時間付きの亜空間ゾーンを作りだしてゼイラムを捕えようとしますが 地球人2人もその中に閉じ込められてしまいます
2人をかばいながらのゼイラムとの闘いがはじまりますが ゾーン消滅のタイムリミットは 刻一刻と近づいてくる...というストーリーです


今では「牙狼」でも有名な監督の雨宮慶太は 1988年のオリジナルビデオ映画「未来忍者 慶雲機忍外伝」の続編として 本作品を構想開始
そして 3,000万の低予算で出来る作品として再考した結果「ゼイラム」の製作にいたりました


超低予算で完成させるための節約がなされており 銃器など一部の小道具は「未来忍者」からの使いまわしになっています
しかし 低予算感が表出しないような特撮や コスチュームやクリーチャーのデザインなど とにかく素晴らしい内容です
また 主演の森山祐子の独特な存在感は素晴らしく 本作品を語る上では欠かせない人物と言えるでしょう
電気工事士を絡めたストーリーも独特で 素朴な日本の町並みを舞台にしている点も個性を感じます


シリーズとしては 今作をアニメ化した「I・Я・I・A ZЁIЯAM THE ANIMATION」や 続編の「ゼイラム2」も存在しており こちらもぜひ観ていただきたい内容です
一部から大きな支持を集める 本作品
特撮好きであれば必見の 傑作映画となっています


あとがき

今回は「驚異...超低予算で描かれた名作・傑作・カルトSF映画」をテーマにした SF映画紹介でした
低予算ながら 味わい深いSF映画はまだまだたくさんあります
決してよくできた映画ばかりではないですが 少しずつ紹介させていただきたいと思っています
最後までご覧いただき ありがとうございました

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