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夏におすすめのホラー映画①

こんばんは ぷらねったです
とにかく暑い 2024年の夏にぴったりな 一風変わったホラー映画たち
今回は「暑すぎる夏に観たい名作・傑作・カルトSFホラー映画」というテーマで そんな作品を紹介していきます


1.デッドリー・スポーン 原題:The Deadly Spawn (1983年)

監督は ダグラス・マッケオン
隕石と共に地球にやってきた肉食エイリアンを描く アメリカのSFホラー映画です

ある晩 人里離れた山林に 突如として隕石が落下します
その隕石には 未知のエイリアンの卵が付着していました
この落下の衝撃によって卵は孵化し エイリアンが誕生してしまいます
運悪く近くでキャンプをしていた二人の若者を殺害したエイリアンは その後 近くの別荘の地下室に潜り込み 猛烈な勢いで繁殖しはじめました
彼らはそれでも飽き足りず 人々を次々と襲いながら増殖していく...というストーリーです

製作費は 自主製作ということもあり 超低予算の25000ドル
元高校教師,元俳優であり 演劇の舞台装置や衣装デザインの経歴をもつ ダグラス・マッケオンが監督をつとめました
彼にとっては唯一の監督作品であり 映画監督デビュー作でもありますが こういった経歴や 大学時代に映画撮影について学んだということもあって デビュー作とは思えない仕上がりが印象的な映画です

そんなこの映画では 隕石から生まれたエイリアンが大量に繁殖し 人間を襲う物語が描かれます
超低予算映画らしく ほとんど1軒の家だけで物語が展開されていきますが 暗闇やカメラワーク工夫されていることもあり チープさが軽減されています
スプラッター映画的に演出されている中で 悪魔的で緊張感のある音楽もかなり秀逸で この映画の個性を増幅させています

そして何といってもエイリアンの造形が主役と言っていい内容ですが 特殊メイクを担当したのは『スキャナーズ』や『エクソシスト』で知られるディック・スミスの門下生であり『死霊のはらわた』や『エイリアン4』などで活躍した ジョン・ドッズです
彼は自宅の地下室で 衝撃的なエイリアン"マザースポーン"を製作しましたが あまりにサイズが大きかったため ドアを通すことができなかったといいます
そのため 一旦マザースポーンの一部を切り落としてから運び出し セットで再び組み立てる必要があったそうです
また お下品な造形で まるで生きているようにうねうね動く"ミニスポーン"は 床にS字の切り込みを入れ 床下から操作するというアイデアなどによって実現されたそうで 素晴らしい出来栄えとなっています

物語の舞台となっている家は『スター・ウォーズ』の秀逸なポスターデザインなどで知られるイラストレーターであるヒルデブラント兄弟の内 ティム・ヒルデブラントの住居が撮影に使用されたのだといいます
彼はノンクレジットながら 本作品の製作総指揮もつとめていたそうです
子役として チャールス・ジョージ・ヒルデブラントという人物も出演しているのですが もしかして彼の息子なのでしょうか...

そんな本作品の構想にあたっては プロデューサーのテッド・A・ボーハスが 北極から回収された種子に関するナショナルジオグラフィックの記事に触発されたことがきっかけになったといいます
1979年の『エイリアン』が成功したあと 地球外生命体をテーマにした映画が溢れかえる中で制作された本作品は 自主製作とは思えない魅力を放っています

非公式の続編として 1990年の『デッドリー・スポーン2/惑星からの物体X』が存在します
こちらでは 本作品と同じくプロデューサーをテッド・A・ボーハスが担当し 予算も増額されていますが あくまで邦題で続編のように仕立て上げられただけで 特にストーリーの繋がりはありません
また テッド・A・ボーハスはそこで収まらず 1994年に『デッドリー・スポーン3』なる映画で監督をつとめました

少し逸れましたが...わずかな予算ながら 気合いの入った内容に共感せざるを得ない 本作品
衝撃的なラストが印象的で ホラー映画全盛の時代に生まれた 傑作カルトSFホラー映画となっています


2.テラービジョン 原題:TerrorVision (1986年)

監督は テッド・ニコラウ
エンパイア・ピクチャーズが製作した アメリカのおバカなSFコメディホラー映画です

ある日 大型の衛星放送受信用アンテナを購入した 夫のスタン
妻のラクエルや娘のスージーなど 家族はそんなスタンを冷たい眼差しで見ますが スタンが意気揚々と庭先にアンテナを設置していると 突然空からアンテナに向けて稲妻が走ります
実はその稲妻は宇宙から地球に向けられたもので その正体は ある異性人が遺棄したモンスターでした
そんな事は気にも留めず アンテナが正常に作動したことを確認したスタンと家族一同は テレビのチャンネル争いを開始する...というストーリーです

本作品では『SFダンジョン・マスター/魔界からの脱出』にも監督としてクレジットされている テッド・ニコラウが監督をつとめました
製作会社がエンパイア・ピクチャーズということで 例のごとく制作にはアルバート・バンド, チャールズ・バンドらがクレジットされ 音楽はリチャード・バンドに加え アメリカのアートロックバンドであるThe Fibonaccisが数曲を提供しています
印象的なタイトルは"TV"というアルファベットをもじったものであり ポスターデザインは脚本の執筆前に描かれたものだとされています

そんなこの映画では The Fibonaccisによるチープなオープニング曲からはじまり とにかくチープさに特化した内容が描かれます
衛星放送受信用のアンテナがエイリアンをキャッチしてしまい テレビから出てきたエイリアンが次々と人間たちに襲い掛かる...そんな奇想天外な物語です
能天気な会話の連続に 下ネタやエグい演出満載で 賑やかな内容になっています

本作品はアメリカのみで劇場公開されましたが 公開からわずか4日で劇場から姿を消したそうです
もちろん興行収入は酷い有様ですが そのチープさや あまりにクセのある内容からか 後にカルト化しています
低予算でありながら 印象的なテーマソング, エキセントリックな登場人物たち そして衣装やヘアスタイル...意外にも見どころは多いです
特にそんな中でも 着ぐるみで動くエイリアンの造形はさすがの作り込みで 生々しい質感は迫力があり この映画の大きな見どころとなっており このエイリアンこそが映画を成立させていると感じます
エイリアンが食べた人間に擬態する設定は 1982年の『遊星からの物体X』からの引用でしょうか

そんな やはりエンパイア・ピクチャーズ製らしい 一部の人に刺さる内容になっている 本作品
深夜の時間帯でのテレビ放送が似合うような カルトなSFホラー映画となっています

3.バッド・テイスト 原題:Bad Taste (1987年)

監督は ピーター・ジャクソン
ゾンビ映画的な雰囲気でエイリアンを描く ニュージーランドのSFコメディホラー映画です

舞台は 暴力的なエイリアンによって乗っ取られた 海岸沿いの小さな町カイホロ
バリー,デレク,フランク,オジーの四人は エイリアン調査隊として派遣されました
彼らはカイホロの町が 青いシャツを着た人間に変装した人食い宇宙人によって占拠されていることを突きとめます
やがて人間の姿をしたエイリアンが立て籠もるアジトで激しい銃撃戦が展開されますが 次第にエイリアンたちは本性を現し 醜悪な戦いへと発展してゆくのだった...というストーリーです

製作費は 25000ドル
『ブレインデッド』,『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ,『キングコング』,『移動都市/モータル・エンジン』などで知られる ピーター・ジャクソンにとって 長編映画監督デビュー作となった作品です
彼は監督だけでなく 脚本・撮影・特撮をつとめ 出演もしました
印象的なタイトルは「悪趣味」を意味します

冒頭から タイトル通りのバッドテイストなグロ演出が映しだされる本作品では エイリアン調査協会のおバカな4人と 町の人々を乗っ取ったエイリアンの戦いが描かれます
このエイリアン達はほとんどが人間と同じような姿をしていますが なぜか基本的に青いシャツを着ており 地球人を食糧と見なしています
設定上はエイリアン映画を装っていますが その内容はジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』に通じるもので とにかくコメディ要素を強調した ゾンビ映画的なおもしろさを持っています
舞台となる街の名前「カイホロ」とは マオリ語で「食品の町」または「ファーストフード」のような意味を表すとされ 物語の内容を暗喩しています

小さな町を舞台にした物語でありながら エイリアン達が目指すのは地球侵略...そんな壮大な内容が 会話や工夫された特撮で表現されています
特に終盤では とあるきっかけで宇宙へ飛び立ってしまいますが 秀逸な特撮は必見でしょう
中盤では 食欲を減退させかねないおそろしいシーンもいくつか存在するので 注意が必要です
そんな一見ふざけたような演出とは裏腹に 臨場感のある凝ったカメラワークが随所で素晴らしい雰囲気を醸しだしています

B級カルト感溢れる音楽も凄まじく ポップなサウンドに不協和音をぶつけてみたり 速弾きのギターソロを入れてみたり ハワイを思わせる楽天的な音楽を入れてみたり...やりたい放題の様相です
この音楽を担当したのはミシェル・スカリオンというニュージーランドのミュージシャンだそうで しっかりと大学で音楽教育を受けた女性だという事実には 驚きを隠せません

そんな強烈な映画の内容が影響したのか オーストラリアのクイーンズランド州では 本作品の上映が禁止されていた時期があったそうです
しかし後に 本作品がオーストラリアで認証を受けていたことが判明し これが原因でクイーンズランド州の検閲委員会は解散に追い込まれたとされ 上映禁止も解除されたそうです

映画の構想から完成までには 長い時間が掛けられています
この映画のためにウィングナット・フィルムという会社を立ち上げたピーター・ジャクソン監督ですが 制作当時はニュージーランドのウェリントンにある"イブニング・ポスト"という新聞社に勤務し 写真製版の仕事をしていたそうです
ここでは合計7年間ほど働き 稼いだお金で16ミリカメラを購入
週末に限ってコツコツと『バッド・テイスト』の撮影を重ね 4年半もの期間をかけて完成されたといいます

撮影に入るタイミングでは全体の脚本がまったく完成されておらず その週に思いついたアイデアを試し 脚本を繋いでいく...そんな特殊な状況だったといいます
元々は10分間の短編映画を予定していましたが ピーター・ジャクソン監督は編集のタイミングで50分近い映像が撮れていたことに気づき 長編映画化を目指して撮影を続行したといいます

超低予算のインディーズ映画ならではのエピソードも存在します
まず 出演者は知らない人ばかりですが これはピーター・ジャクソン監督が友人に頼み 無償で出演してもらったりしていたことが理由だといいます
バリーを演じるピート・オハーンは 最初の撮影で髭を伸ばしていたために 撮影が終わるまでの約4年間 土日に同じような髭を蓄えていなければならなかったそうです

要注意の嘔吐シーンについては ピーター・ジャクソン監督が演じるロバートが実際に行なったかのように見えますが 実は石膏でロバートを模した顔を製造し その顔の後ろに漏斗を用意し 嘔吐物を流し込むという力技で達成されています
この嘔吐物を模した液体は 着色したヨーグルトにミューズリーというシリアルを入れた ヘルシーなものだったというので一安心です
エイリアンを車で轢くシーンについては 予算の都合で別のカメラマンがボンネットに乗り ピーター・ジャクソンが運転して撮影したそうです

銃器については すべて見た目だけ模したレプリカであり フィモと呼ばれる粘土やアルミパイプ そして弾倉は木片で制作されたといいます
俳優陣が銃を撃つシーンでは 銃から放たれる閃光 いわゆるマズルフラッシュはポストプロダクションで追加されました
もちろん銃声も後付けの音声です
また 当時のピーター・ジャクソン監督には録音の知識があまりなかったことや 16ミリカメラのみで撮影されたシーンも多かったことで すべてのセリフもポストプロダクションで吹き替えられました

予算の問題もあって一時は完成が危ぶまれたそうですが 同じくピーター・ジャクソンが監督した『ブレインデッド』のプロデューサーであり 当時ニュージーランド映画協会に所属していたジム・ブースは同監督の才能を確信し 資金を注入したことでなんとか完成されたといいます

ポスターデザインにも描かれている 一部エイリアンの独特なマスクはラテックス製であり これは実家のキッチンにあるオーブンで固めたそうです
このマスクは特徴的な形をしていますが これは実家のオーブンのサイズ的に マスクを入れるためにはこの形にせざるを得なかったことが理由だといいます

後に『ロード・オブ・ザ・リング』を撮った監督の映画とは思えない 個人的な趣向に全振りしたような素晴らしい内容になっている 本作品
スプラッター・グロ描写が問題ない方はぜひ観ていただきたい 傑作SFホラー映画となっています


あとがき

今回は「暑すぎる夏に観たい名作・傑作・カルトSFホラー映画」というテーマでの SF映画紹介でした
2024年は 10月半ばまで30度越えするという噂もあるので ホラー映画のお世話になる機会は多そうです
また ホラー映画の紹介もさせていただきたいと思っていますので お楽しみにいただければ幸いです
最後までご覧いただき ありがとうございました

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