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【映画紹介】あまり知られていない コンピューターをテーマにした映画[3選]|①

こんばんは ぷらねったです
ジャンルとしてはSFでなくても SF的な雰囲気を感じることができる コンピューターをテーマにした映画たち
今回は「あまり知られていない コンピュータについて描かれた映画たち」というテーマで そんな作品を紹介していきます


1.サベイランス -監視- (2001年)

監督は ピーター・ハウイット
マイクロソフト社のような大企業が登場する アメリカのサスペンス映画です

スタンフォード大学卒の天才プログラマーであるマイロ・ホフマンは コンピューター・ソフトウェア業界を牛耳ろうとしている大企業NURVのCEOであるゲーリー・ウィンストンから直々に声をかけられ NURVに入社することになります
彼はそこで 衛星を活用した新しい配信システム「シナプス」の開発に携わることになりました
そんなある日 同じく天才プログラマーとして知られていた親友のテディーが何者かに殺される事件が発生
この事件を調べるの中で マイロはこの事件にNURVが関わっていることに気付く...というストーリーです

本作品は「スライディング・ドア」で知られる ピーター・ハウイットが監督をつとめました
主演したのは「ラストサマー」などで知られるライアン・フィリップです

作中では まるでマイクロソフト社のような コンピューターの分野を牛耳る大企業をテーマにした物語が描かれます
とある天才プログラマーの若者が才能を見出され 大企業のCEOから突如スカウトされる...そんな内容です

物語のメインとなる大企業 NURV社とは「Never Underestimate Radical Vision」の略称であり これは「急進的なビジョンを決して過小評価しない」という意味です
彼らは"シナプス"というプロジェクトを推進しており これは音声・画像・テキストをあらゆるメディアで受信できるシステムで"地球を一つに繋ぐ"という謳い文句になっています

そんな中で ティム・ロビンスが演じるNURV社のCEOは 明らかにマイクロソフト社のビル・ゲイツを意識した外見になっています
また 社員のモチベーションを向上させるスピーチの様子は おそらくアップル社のスティーヴ・ジョブスを意識したものでしょう

ところで 本作品の原題は「Antitrust」であり これは「独占禁止の」というような意味です
この単語に関連して アメリカでは"反トラスト法"と呼ばれる法律が制定されていますが この映画の公開当時 マイクロソフト社はこの法律に反しているという訴訟を受けた裁判の最中でした
これはアメリカの司法省と 各州の検事総長によって起こされた訴訟であり 内容としては"インターネットエクスプローラーの無償配布を行ったこと"や"OSをWindowsに限定する協定をPCのメーカーと結んだこと"などを問題視したものです
この件について いったんはマイクロソフト社が敗訴したものの 最終的にはマイクロソフト社が控訴し 勝訴しています
おそらく そんな裁判に乗じて映画化が企画されたのが本作品と思われ マイクロソフト社を悪徳企業として印象付ける意図が見られます

ちなみに 冒頭のクレジットでは HTMLコードが羅列されますが これは有名な映画サイト"IMDB"のホームぺージから取得されたものに一部修正を加えたものだという噂がありますが 真相は不明です

そんな本作品は 単にマイクロソフト社の評判を貶めるだけでない見どころがあります
オープンソースのもつ哲学性についても考えさせられる 傑作映画となっています


2.サイバーネット (1995年)

監督は イアン・ソフトリー
ハッキングをテーマにした アメリカのクライムスリラー映画です

11歳の天才ハッカーである少年デイドは ウォール街のコンピュータをクラッシュさせました
裁判の結果 彼の家族には多額の罰金が科され 彼自身は18歳までコンピューターを触ることを禁じられます
18歳になった彼のまわりには コンピュータを自由自在に操る連中が集まり 高校生活をエンジョイしていました
そんなある日 仲間がハッカー・キングと呼ばれるプレーグにハメられ 犯罪の片棒を担がされてしまいます
デイドたちはサイバーネットを使って世界中のネット仲間を集め ネットワークを通じた激しいバトルが始まることに...というストーリーです

製作費は2000万ドル
「光の旅人 K-PAX」で知られる イアン・ソフトリーが監督をつとめました
「トレインスポッティング」や「イーオン・フラックス」で知られ 今作が映画デビューとなった23歳のジョニー・リー・ミラーが主演
翌年に彼と結婚することになる20歳のアンジェリーナ・ジョリーが ヒロイン役を演じています

作中では 高校生の青春とハッキングを掛け合わせた内容の物語が描かれます
主人公のデイドは 11歳の時にハッキングによる大事件を起こした経歴をもつ 18歳の高校生です
冒頭では このハッキング事件についての描写がありますが これは"モリスワーム"というコンピューターウイルスが約6000台のPCに引き起こしたと言われる 損害額1億ドルの大事件が基になったと思われます
高校生になったデイドらがハッキングすることになるコンピューターは"ギブソン"という名前が付けられており これは「ニューロマンサー」などのサイバーパンク小説で有名なウィリアム・ギブスンを基にしたネーミングです

音楽面では多数の曲が使用されており 映画に合わせてテクノロジーを前面に押し出したかったそうで 電子音楽が中心の選曲となっています
例えばThe Prodigy, Underworld, Orbitalなど...そんな中で 個人的に大好きなMassive Attackの曲も使用されており 全体的にクールな雰囲気が漂っています

映像面では ハッキングシーンのかっこいい映像が印象的ですが これは監督の意向もあり CG映像ではなくモーションコントロールカメラを使用して実現されているそうです
また 映画公開と同年に発売されたレースゲーム「ワイプアウト」の試作版の映像が作中で使用されています

脚本のラファエル・モローは 1980年代初め頃からハッキングに興味を持っていたそうです
彼はハッキングを単なるカウンターカルチャーではなく 人類の進化における次のステップとして捉えていました
アメリカでは 1990年頃にハッキングの取り締まりが強化されたそうですが この時にハッキングにまつわる脚本を書くことを決意したそうです

メインキャスト達については 撮影前の3週間の期間で一緒に過ごし ローラーブレードの訓練を受けたりしながら親交を深めたそうです
また 作品のテーマとなるコンピューターの勉強を行う過程で 主演のジョニー・リー・ミラーらは 実際にハッカーが集まるミーティングに参加してハッカーと会話し ハッキングの知識を深めたともいいます

ちなみに 映画の公開前後には公式サイトにハッキングされたようなデザインが施されました
そこには"安っぽい映画の宣伝サイト"だという自虐的な文言や 同年に公開された近いテーマの映画「ザ・インターネット」を観るよう促すメッセージなども表示されていたといいます

そんな本作品ですが 興行収入は750万ドルほどで1000万ドル以上の赤字となり 興行的にはあまりうまくいきませんでした
しかし海外ではカルト的な人気もあり 2020年の時点では 続編についての議論もされていたようです
また アンジェリーナ・ジョリーに"銃をもったタフな女性"というイメージをもたらしたのは この映画だともされています

今では身近になったコンピューターをテーマにした 90年代を感じられる本作品
若かりしアンジェリーナ・ジョリーも出演したサイバーパンク的な世界観を ぜひ観てみてください


3.Revolution OS (2001年)

監督は J・T・S・ムーア
著名なハッカーや起業家も出演する オープンソースのソフトウェアをテーマにした アメリカのドキュメンタリー映画です

本作品は マイクロソフト社などによるソースコード未公開のソフトウェア開発に反発し オープンソース運動を始めた開発者,ハッカーたちの動きを描くドキュメンタリー作品です
日本では劇場公開されずにDVD発売されており すべて35mmフィルムで撮影されています

作中では マイクロソフト社を巨悪の根源として扱い オープンソース運動を始めたハッカーたちがヒーローとして描かれます
出演しているのは GNU,Linux,Apacheといったオープンソースを広めていった開発者,ハッカーたち本人であり シリコンバレーを中心に撮影が行われました
彼らがマイクロソフトの独占的な態度に反旗を翻し いかにオープンソースという概念を広め 市場に認められていったのか...その流れをこの映画から知ることができます
また 先ほど「サベイランス -監視-」で紹介させていただいた マイクロソフト社の反トラスト法に関する裁判についても 少し触れられています

そもそも 今作で大きく取り上げられている「オープンソース」とは...知的所有権の問題に悩むことなく 人々が協力してソフトを開発できる仕組みのことです
通常であれば まずソフトウェアの購入は有償であり そのソフトを改変することも禁じられています
これに対し オープンソースとは 世界中の誰でもソフトを改変できるような 自由な発展を可能にする仕組みです

このようなオープンソースの動きに繋がるフリーソフトウェア運動を生みだしたのは リチャード・ストールマンという人物であり 彼は大学時代に「GNU」というOSを開発し 開かれたフリーソフトウェアの発展 そして哲学やルールを確立しました
ここで使用される"フリー"とは"自由"を表しており"無料"を強調するものではありません
このフリーソフトウェアの考えは 誰でも自由にソフトウェアの閲覧・改変・配布ができるようにすることで コンピューターの可能性を高めるために考案されました
このような動きがLinuxというOSを生みだし 多数のオープンソースソフトウェアが生まれていくことに繋がっていくのです

ちなみに「OS」とは...コンピューターを動かすための オペレーションシステムのことです
映画内では「OS」について"プログラムがファイルを呼び出す時や 外部ネットワークと接続するときに動作を支援するシステム"という定義がされています

そんな本作品はニコニコ動画にアップロードされていますが このアップロード自体も 今作のテーマに通じる部分があると思いました
この映画では コンピューターの発展の歴史についても様々な情報を知ることができます
テクノロジーや開発に興味がある方には特におすすめしたい 素晴らしいドキュメンタリー映画となっています


あとがき

今回は「あまり知られていない コンピュータについて描かれた映画」というテーマの映画紹介でした
今回紹介させていただいた映画については ジャンルとしてSFに類さずとも SF映画に近い感覚で観れる部分があります
興味が湧いた方は ぜひそれぞれ観ていただきたいです
最後までご覧いただき ありがとうございました

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