ポケコン哀歌、きみと一緒に歩いた一年。(4)
前回までのあらすじ:
Twitter for PC-G850 が学生リーグ決勝に進出とのメール。しかし開発状況も懐事情もカツカツであった。もくもく会で開発を進め、交通費のカンパをいただき、高速バスの余剰時間を注ぎ込んでなんとかプレゼンができるレベルに到達。ついに舞台は学生リーグ決勝へ!
圧倒的なコンピューティング・パワー。
どなたか忘れたが、「今年の学生リーグは AI・VR 作品が多かった」とツイートだか FB 投稿だかされている方がいらっしゃった。たしかにそうだ。
学生リーグ決勝進出の時点で、Connpass へのリンクはいただいていたので、そこに掲載されていたほかの作品にも一度目を通していたが、Twitter for PC-G850 は他作品と比べると圧倒的に計算機パワーがない。
PC-G850VS はポケコン最速級の処理性能を誇るが、悲しいかな所詮ポケコン、それでもファミコンの2倍強の計算能力しかもたない。
CPU アーキテクチャが違うので直接比較はできないが、クロックスピードだけでいえば Arduino Uno の半分である。
当然、できることも制限されてくる。Twitter for PC-G850 は、ラズパイならプログラムを書かなくてもできることを、ただ思想信条が許さないからという理由だけで、わざわざポケコンと 2,000 行分(1ヶ月でそれなりに増えた)の C++ プログラムを内蔵したカートリッジでやっているのだ。
おまけにここは学生リーグだから、ポケコンを知っている人もいないし、漢字を出力するまでにどれほどの苦労があったかわかる人もいないだろう。
そのうえ、一月かけて作った渾身のカートリッジデザインの元ネタも伝わらない。苦戦が予想された。
機能に限界があるのはハッキリわかっている。見せ方で勝負するしかない。
救いだったのは、審査員の n0bisuke さんとレッドハッカソンひろしま2018で直接面識があったこと。しかもその時の懇親会でポケコンを披露していたのである。
伏線を張ったわけではないけれど、いつでも携帯しておいた甲斐があった。当時はなにもプログラムを入れていなかったが、ついにここまできましたよ、と伝えよう!そう思って、プレゼンの冒頭はその懇親会の写真から始めた。
↓ 当時の n0bisuke さんの投稿。飲み会でポケコンを使うと(技術屋に)モテる。ポケコンは工学系の人の昔話を引き出す最高のツールだと思う。
ポケコン屋はいつもひとりだ。
ポケコンを携えると、いつだってひとりと一台で戦わなくてはいけない。開発もスライドづくりも発表もひとりと一台だ。他のチームの発表を見ていると、分業していたり、得意分野を活かし合っていたり、なんだか羨ましくなってしまう瞬間がある。
ポケコンでコードを書くのは、私がポケコンを手にするずっと前、ポケコンの現役世代からひとりでやることだった。開発の手法や言語の仕組みが、そもそも複数人での開発に向いていないからである。
今どきの言語と違って、ポケコンに搭載されている BASIC では、コマンド一発でライブラリを読み込むようなことはできない。取扱説明書以外のリファレンスはない。頼れる人や参考になる雑誌ももうない。だから、自分が持っている純粋なプログラミングの能力だけで勝負することになる。できないなりにやるしかない。
プログラミングをやる分にはこの妙な緊張感が楽しいのだが、プレゼンをするとなると話は別である。誰も知らないマシン、誰も書いたことがない言語、なのになぜかみんな使っている Twitter につながっている、というシロモノを発表しなければいけない。
高速バスで早朝に会場入りした都合で、イベント開始までかなり待たなければいけなかった。発表を待つ間はドキドキしっぱなしだった。
初めてのリーグ決勝プレゼン
@t_furu さんに写真を撮っていただいていた。ありがとうございます。
こういうものは始まるまでが一番緊張して、始まってしまえば得てして流れで進んでいけるものだ。ひたすらにこれまでの苦労を詰め込んだ。
LTの場数をそれなりに踏んでいた甲斐あってか、時間ちょうどでプレゼンができた。イベント用ハッシュタグ #ヒーローズリーグ があったので、それを設定しておいて Twitter でつぶやきまくるという手段が使えたのも良かった。
漢字が使えないので、このハッシュタグで検索していると明らかに異質なツイートが紛れてくる。ここだけ 80's の息吹を感じる(?)
きみはまだ戦える。
プレゼンの後の Touch & Try タイムでも好評をいただき、なんと学生リーグ優勝という結果に!
もう泣きそうだったのでまともな写真がない。よく戦ってくれた、という言葉に尽きる。
そうしてここが、また新たな旅の始まりとなった。
つづく。
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