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もの食う人びと

"この褐色の赤ちゃんも、われわれ日々もの食う者たちの一人なのだ。(中略)世界にはこんな食の瞬間もある。ほんとうに静かだ。"1994年発刊の本書は、極限下での食を扱い講談社ノンフィクション賞を受賞、教育マンガ化や嵐の櫻井翔にキャスターを目指すきっかけを与えた事でも知られる『世界の眺め方を変えてくれる』一冊。

個人的には料理に食べあるきと、食分野に関しては普段から割と関心あって定期的に手にとるのですが。SDGsなどでフードロス問題などが世界的な注目を集める今、再読するなら本書かな?と久しぶりに手をとりました。

そんな本書は執筆当時、共同通信社のエース記者であった著者が、その職歴を存分に活かして社会や歴史の歪みを押し付けられている人たちと『できる限り同じもの、同じ場所で一緒に食べる』をルールとして、バングラデシュの残飯から始まり、旧東ドイツ刑務所、失意の前ポーランド大統領、飢餓に喘ぐソマリア、エイズに苦しむウガンダ、チェルノブイリの汚染地区と【アジア、欧州、アフリカ】を順に旅しながら様々な場所、人と出会っていくのですが。

読みながら。発刊当時は【飽食、お金持ち国】として在った日本がいつしか貧しかったアジア、混乱のロシアと同じく【貧困問題を抱え、放射線汚染された国】になってしまっている事に何とも将来世代に対して申し訳ないという責任感を感じてしまいました。

一方で、本書で秀逸なのは、著者自身が“国家単位でものを発想してはならない。このことは私にとって生命線である"と後書きに記しているように、著者の【取材、執筆姿勢の距離感の確かさ】か。おかげで離れて【他人事として知る】というより、著者と一緒に旅し、人と【実際に会ってるような】没入させてくれる読後感を与えてくれました。

世界へ羽ばたく旅好きな人へ。また【一つだけの真実や正解など世界には存在しない】そんな当たり前の事を再確認したい人にもオススメ。

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