三月の五日間
"それじゃ『三月の5日間』ってのをはじめようって思うんですけど、第一日目は、まずこれは去年の三月の話っていう設定でこれからやっていこうと思ってるんですけど、朝起きたら、なんか、ミノベって男の話なんですけど"2005年発刊の本書は超リアル日本語演劇チェルフィッチュ初期戯曲集。
個人的には、もう10年以上前に表題作で話題になって興味を持ちつつ結局、劇場で観賞出来なかった事、また一方で私的に脚本を書く機会が増えてきた事から参考に手にとりました。
さて、そんな本書は読み物として出版前提に書かれたわけではなく、あくまで【舞台上映のための台本、戯曲集として】2003年、アメリカ軍がイラク空爆を開始した3月21日(アメリカでは20日)、この日を挟んだ5日間の若者の姿を渋谷のラブホテルで過ごす男女、ミノベとユッキーの二人を中心にすえて語った表題作他、バイト先の友達との待ち合わせ『マリファナの害について』結婚しようと思って別れ話をしようとする『労苦の終わり』の2作品を収録した作品集となっているわけですが。
まず、全体として印象的だったのは、いわゆる従来のオーバーアクション、腹式呼吸で声をはりあげる芝居に対してカウンター的な演劇論を打ち出した青年団、平田オリザの影響を受け、さらに突き進めたような読点を多用し、句点を打たない【だらだらと連なっていく】台詞回しでしょうか。率直に言って『本』として黙読するには読みづらいものの、声に出してみると意外にもリズミカルにすっと入ってくるのも面白かったです。
また、例えば表題作について。『〜の場面をやります』『〜なんですけど』という語り口の割に、また一応としてミノベとユッキーの5日間泊まり続けたラブホテルの話が中心としてあるも、わかりやすく起承転結的に回収せず【絶えず感じ、考えた事を前後しながら再現して】読者(観客)に違和感を与え続けるような展開は、個人的には文学上の手法"意識の流れ"と同じような感覚を受け、こちらもとても興味深かった。本書を読み終えてから映像も拝見しましたが、やはり実際に劇場で観たい!強く思いました。
脚本を書いてる方やチェルフィッチュに興味ある方はもちろん、日本の現代演劇"ポスト静かな演劇"に興味ある人にもオススメ。