若きウェルテルの悩み
"弾丸はこめてあります。十二時が打っています。ではやります。ーロッテ、ロッテ、さようなら"1774年、著者の失恋と友人の自殺から構想を得て発刊された本書は、ナポレオンの愛読書にして、当時のヨーロッパ中でベストセラーとなり、聖地巡礼や自殺の連鎖も巻き起こして"精神的インフルエンザの病原体"とも呼ばれた普遍的な魅力を持つ書簡体小説。
個人的には誰もが名前は知っているものの、実は読んだことのない一冊として、またドイツ文学史を学ぶ上で外すことのできない一冊として手にとりました。
そんな本書は古典的な作品らしく【物語自体はシンプルで】許婚者のいる美貌の女性ロッテに恋したウェルテルの苦悩、そして(当時の宗教観では衝撃的な結末)自殺までを描いているのですが。特筆すべきはやはりウェルテルの心情の変化を友人へ宛てた手紙という形式で描写した【言葉の美しさ、切実さか】翻訳された文章だとしても、また時代が違っても胸に迫ってくる強さがあって引き込まれます。(特にロッテと初めて出会った舞踏会後の高揚感が伝わる手紙が印象的でした)
また【友人へ宛てた手紙】書簡体小説としての展開が確かに大半なのですが。最後に【編集から読者へ】として、それまでのウェルテルの一人称カメラを切り替えて【俯瞰的かつ客観的な形で】第三者的な振り返りをしているのも、物語の悲劇性を高めるのに効果的な仕掛けになっていて素晴らしいと思いました。
普遍的な魅力を持つ恋愛小説を探す誰かへ。また美しい言葉を浴びたい誰かにもオススメ。
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