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創るモノは夜空にきらめく星の数ほど無限にある―海洋堂物語

"『創るモノは夜空にきらめく星の数ほど無限にある』は海洋堂のキャッチフレーズの中では、最も気にいっているものである。"2003年発刊の本書は、模型業界では世界屈指の知名度、水準を誇る海洋堂創業者"館長"が創業からの夢を紡ぎ続けた"これまで"を振り返った一冊。

個人的には滋賀県の『海洋堂フィギュアミュージアム黒壁』にお邪魔して、この大阪を代表する企業の事をあまりに知らないな。と深く反省して?手にとってみました。

さて、そんな本書は今や「造形製作・海洋堂」の名前を冠すれば商品の売れ行きが上がる。とも言われるブランド力を誇る海洋堂のこれまでを70代になった著者が、36歳になって知識ゼロから一坪半のプラモ屋を"海好き、釣り好き"であったので『海洋堂』と名付けて【何となくはじめる所からはじまり】大手プラモ会社にアイデアとノウハウを持っていかれたり、資金繰りに困る一方で、ガレージキットやチョコエッグで成功したりといった数々の失敗や成功を繰り返すうちに【モノづくりは人類の遺産というよりは地球の遺産を再現する仕事ではないだろうか?】といったスケールの大きな心境にいたるまでが時系列に沿って、それぞれ当時の文章を引用し著者自らが振り返りながら描いているのですが。

まず、表紙の著者写真からも伝わってきますが、何十年もの間に例え様々な苦労があったとしても、晩年にはこんな『充実した心境でいたい』という気持ちを抱かせる、著者曰く"繊細"らしくも【人間味溢れる、そして幾つになっても少年の様に夢を語り続けてきた姿】が文章全体から伝わってきて気持ち良かったです。

一方で、ビジネス書的に『海洋堂の経営史』を期待して読むと肩透かしというか。率直に言って本書だけでは【全体は漠然としている】のですが(著者もそれは意図してないだろうが)しかし、やはり雇われではない【叩き上げの『創業者』としての姿】業界全体の浮き沈みを予測しての『素早い決断、行動』自社製品をアートプラ『文化として位置付け高付加価値化』得意先や社員でも『不義理には徹底して戦う』といった様子が垣間みえて刺激的でした。

海洋堂ファンはもちろん、プラモに限らずモノづくりが好きな方、モノづくりに仕事で関わる人にオススメ。

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