一四一七年、その一冊がすべてを変えた
"ルネサンスの誕生と、われわれの世界を形作ってきた力の解放の要因については諸説あるが、私は本書で(中略)『物の本質について』の再発見の物語を語ろうと試みた。"2011年発表の本書は、2011全米図書館ノンフィクション、2012年ピューリッツァー賞を受賞した知的好奇心を満たす一冊。
個人的には読書会主宰者の集まりを大阪で企画した際に"ブックハンター"と名乗る方に由来を聞いた際に本書を紹介していただき手にとりました。
さて、そんな本書はルネサンス期にローマ教皇に仕えた秘書官にして【古代ローマやギリシア時代の失われた古典作品の発掘をしていた】"ブックハンター"のポッジョの足跡紹介を中心に、1417年に発見されたエピクロス派のルクレティウスの本の再発見が【ルネサンス及び西洋世界に与えた影響】を大きなスケールでハーバード大教授、新歴史主義の創始者の1人でもある著者が描いているのですが。2つの意味で、とても面白かった。
1つは【ブックハンターという存在】グーテンブルグによる活版印刷技術、印刷革命以前の時代、写本の時代において、本書前半の【絶対数の少ない貴重な本を求めて】狩猟の様に各地の修道院を訪れるポッジョのブックハンターとしての姿がまるで再現映像のように生き生きと描写されていて、本好きの1人としてわくわくしました。
もう1つは【知識としての連鎖】また、ポッジョの生い立ち紹介を挟んで、本書後半においては発見されたルクレティウスの『物の本質について』が、『君主論』のマキャベリ、『ユートピア』のトマス・モア、モンテーニュ、シェイクスピア、そしてルネサンス前期の画家達に与えた影響を紹介していき、最後はトマト・ジェファーソンの『独立宣言』につながったとして終わるわけですが。別々に親しんでいた本や絵画作品がここに繋がるのか!と何百年にもわたる【リレーのような知識の連鎖】に興奮してしまいました。
建築や絵画ではなく、思想的なルネサンスの始めるを知りたい方や古代ギリシャ・ローマから繋がる西洋文明を理解したい方にもオススメ。