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魔の山

"『エンジニアー私は自分の表現をよく覚えています。(中略)礼節、進歩、労働、生命に対立する力、その悪魔的な息吹から青年の魂を守ることは、教育者のもっとも崇高な義務なのです』"1924年発刊の本書は【教養小説の名作】として思想・哲学・宗教・政治、そして時について考えさせてくれる。

個人的には随分昔の学生時に挫折してから今回、主宰する読書会の課題本に設定した事で再挑戦、長年にわたる積ん読本にからの解放を目指すべく手にとりました。

さて本書はダボス会議でも有名な、スイスはダボスにある国際サナトリウムを舞台に思わぬ挫折から【先が見えない療養生活を過ごす事になった若者】を一応の物語の主人公にして、中国やロシア、イタリア、オーストリアにオランダといった様々な国籍の魅力的な登場人物が現れては消えていくわけですが。名脇役の先生役ゼテブリーニの饒舌さ、そして論的となるナフタとの【討論における博識さ】には圧倒させられました。

また本書では、近年のサブカル文脈で言えば『セカイ系』【主人公とヒロインなどの個人の関係が世界の危機などの大問題に発展するストーリー展開を持つ作品】とも言うべきか。時間経過を前半スローペースから始まり、駆け足だったり、ばっさりだったりとアップダウンしながらも、舞台は7年間あくまで【サナトリウム周辺から動かず】思想・哲学・宗教・政治を語り尽くしていくわけですが。何度も出てくる豪勢な食事シーンとも合わさって【胃もたれ的な生のコッテリさ】と、一方で人生の縮図を眺めているような【確かで静かな死の余韻】が対比されている様で何ともジンワリとした読後感でした。

サナトリウム小説を探す誰か、あるいは人生の時間について考えたい誰かにもオススメ。

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