横浜駅SF
"『18きっぷだ。エキナカの古い階層から見つけだしたんだ。これを持っていれば、Suikaを体内に入れていない人間でもエキナカを自由に歩ける』"2016年発刊の本書は1915年以来工事が続く『日本のサクラダ・ファミリア』横浜駅から着想、駅自体が自己増殖生命体となった世界を描くSF作品。
個人的には、先に外伝短編集である『全国版』を読んで、とても面白かったことから手にとりました。
さて、そんな本書は2015年に著者が、弐瓶勉の『BLAME!』パロディ色強く、横浜駅が生命体として日本を覆い尽くすSFの簡単なプロットをTwitterで書いたところ、好評を得て半年ほどかけて長編小説化、話題となった作品で。横浜駅の自己増殖により本州の99%が"駅化"(エキナカ化)した世界、その外側で暮らす非Suika住民(笑)のヒロトが男から『18きっぷ』と、ある使命を託された事で、出会いとローカルネタに満ちた横浜駅構内5日間400キロの旅が始まるのですが。
まあ、当然かもしれないが。題名の横浜駅のある神奈川県でよく売れたらしいですが。ではいわゆる斬新な設定だけのローカルネタ本か?と言われると全くそんな事はなく【よく練られたディストピアSF小説】として読みやすい文体で描かれていて。2017年日本SF大賞で最終候補作に残った他、漫画化されたりするなど、話題になったのもよくわかります。
また、ローカルや鉄道ネタ以外にも、各章のタイトルが『時計じかけのオレンジ』『海底二万マイル』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『あるいは牡蠣でいっぱいの海』『造物主の掟』『虐殺器官』といった【国内外のSFを元ネタにしていたり】最終目的地となる42番出口が『銀河ヒッチハイク・ガイド』からとられたりしている所も”著者の遊び心”としてSF好きの一人として嬉しくなりました。
横浜駅、神奈川県に縁のある人はもちろん。ディストピアSF、ハードSF好きな方にもオススメ。
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