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貧困と飢饉

"飢餓とは、十分な食べ物を持っていない人々を特徴づける言葉である。十分な食べ物がそこにないという状況を特徴づける言葉ではない"1982年発表の本書はアジア初のノーヘル経済学賞受賞者が途上国の購買力と飢餓の関係を説明、貧困は『生産力ではなく市場の失敗』であることを明らかにした古典的名著。

個人的には主宰する読書会の課題図書として手にとりました。

さて、そんな本書は引用した冒頭から始まり、ある社会において正当な方法で【ある財の集まりを手に入れ、もしくは自由に用いることのできる能力・資格】あるいは、そのような能力・資格によって『ある人が手に入れ、もしくは自由に用いることができる財の組み合わせの集合』を【権限】(entitlement)と名付け、この言葉をキーに『飢饉と貧困』を理解するための分析を行ったインドの経済学者である著者の【1970年代の発表論文や事例研究を集成した】もので。

著者はインド大陸で起こった一連の飢餓を例にしながら、世界各地で発生した飢饉の問題が『一国レベルの食糧生産、供給能力不足』と考えられていた当時の通説を否定し、食糧が国に十分にあっても『食糧が届かない集団が存在する』ことを明らかににし【食糧の生産量(備蓄)と飢餓の間には自動的な関連がないことを証明、むしろ【政治体制や市場の失敗に原因がある】と考察しているのですが。

まあ、アカデミックな批評は専門の方にお任せするとして。飽食の時代、フードロス削減に貢献!と毎日のように近所のスーパーの夕方以降の割引食品を手にする私ですが。じわじわとした物価高にはため息つくも、餓死といった【極限状態は考えていなかった】ので、あらためて飽食の豊かな国に生まれている幸せを感じたり。

また、経済の長期低迷や直近だと記録的な円安もあり、各国にくらべて『貧しくなった』と報道される我が国ですが。本書を読み進めながら、この貧しさは、やはり考察されているように政治体制、総量ではなく富の配分に関係があるのかな。それとも?と色々と考えてしまいました。

経済学、開発経済学の必読書として。またタイトル通り『貧困と飢饉』問題を考えたい方にオススメ。

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