ハイペリオン
"そこでだー残された数日のあいだに、それぞれの動機をみなで分かち合ってはどうかな"1989年発刊にしてヒューゴ賞、ローカス賞受賞の本書は、長編ハイペリオン4部作の導入部として、7人の巡礼者が参加動機を短編的に語り合う、ジョン・キーツの物語詩を元に再構築された枠物語。
個人的には、池澤夏樹の娘にしてSFにも詳しい声優、池澤春菜が本書を紹介していたのをキッカケに手にとりました。(『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門本としてもファンの間では有名ですね)
さて、そんな本書は28世紀の宇宙を舞台にして、謎の時間超越する殺戮者シュライクを封じ込めた謎の遺跡『時間の墓標』のある惑星、ハイペリオンに向かう7人の男女の旅を描いているのですが。最初に驚かされたのは、いかにもスペースオペラ!血湧き肉躍る冒険の旅!っぽい表紙から受ける印象と違って【旅自体は意外と順調に淡々と進む所】でしょうか。あっさりした結末も含めて、ちょっと驚きました。
一方で、7人が旅の合間に互いの『旅への参加動機』を語り合う様子は【ホラー、恋愛、ハードボイルド、戦記、ファンタジー等】と、それぞれが様々な作品からのオマージュを流用しながら趣向を凝らした短編小説として【絡み合いながらも成立していて】読み応えありました。正直、本書『ハイペリオン』上下だけでは消化不良でしたが、続編の『ハイペリオンの没落』『エンデュミオン』『エンデュミオンの覚醒』を読み進める事が前提になっているとしたら、導入部として【これはこれであり】だと思いました。(=読み進めていきます)
ライトではない、骨太かつ壮大なSF小説を探す方へオススメ。