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ロベルトは今夜

"『あなたのいうサドにはどうにも賛成できませんわ。だってじつに奇妙な手段をつかって、われわれを説得しようとするんですもの。つまり無神論者はかならず悪人だというわけでしょう?まったく奇妙な論理ですわ』"1953年発表の本書は背徳的情熱に取り憑かれた夫婦達による神学論争小説。

個人的にはピカソ曰く『20世紀最後の巨匠』画家の【バルティスの実兄】として名前だけは知ってはいたも、著作は未読だったので今回はじめて手にとりました。

さて、そんなサドやニーチェ研究者でもある著者による本書は、昨日紹介したA・アルトーの『神の裁きと訣別するために』とは違って、内容を要約するなら容易く、60歳を過ぎた偏屈な神学教授が自宅を訪問する【男たちを相手構わず若く美人な妻に近づけて不倫の関係を結ばせていく】様子が谷崎潤一郎の『鍵』風に夫婦の日記が交代して描かれた『ナントの勅令破棄』が約160ページ、そして同じ様子が今度は夫婦たちの会話劇風にさらに妻が淫らになっていく『ロベルトは今夜』が約100ページで併録されているのですが。

率直に言うと『著者自身による独特の挿絵』も挿入されている本書は、どのページからも表層的には【映像的、濃厚な倒錯したエロティシズムに溢れていて】ぶっちゃけ、例えばナポコフの『ロリータ』を手にしていると『往々にして誤解されがち』な様に【気軽に他者に紹介するのは難しい】ですが。カトリックの厳しい性欲に対する戒律が皮肉にもサドによって『戒律を信じる=エロスに陶酔できる』と転嫁された事が本書の背景にあることがわかってくると、極東の島国住人の一人として、共感。とまでは流石にいかなくても、本書が【単なるポルノ小説ではない】のは理解できました。

一方で、本書は後に著者自身と妻が実際に夫オクターブ、妻ロベルトを演じて(!)映画化されているらしく、残念ながら私は未鑑賞なのですが。WEBで『映画だけ』を鑑賞した人の感想を眺めるに随分に『実験的な内容』らしく、また今でも『奇想天外映画』として怪作扱いになっているらしいのですが。サロンに集まった人々が『名画の様子を自ら即興で演じる余興』活人画がテーマだし、確かに映像的な描写が多い本書ですが。とはいえ説明なしに『映像だけ』で内容やメッセージを理解するのは【そりゃ無理だろうな】と心中を察してしまいました。(お節介すいません)

サド作品や谷崎潤一郎の『鍵』が好き、倒錯的なエロティシズム作品が好きな方。またキリスト教の神学論争に興味ある方にもオススメ。

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