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ドリアン・グレイの肖像

"美は表面的なものにすぎぬというひとがある。あるいはそうかもしれない。だが、少なくとも思想ほど表面的ではないでしょう"1891年発刊の本書は、耽美的・退廃的・懐疑的な19世紀末文学の旗手とされた著者によるシンプルなれど唯一無比な輝きをはなつ悪徳についての寓話作品。

個人的には、若い時に手にとった時には耽美的な世界観、同性愛的な三角関係に興味が持ちにくかったのだけれど。あらためて向き合ってみました。

さて、そんな本書は物語としては割とシンプルで、類いなる美貌に恵まれた若者ドリアン・グレイ、ドリアンをモデルに肖像画を描く芸術家のバジル、そして2人の友人である快楽主義者のヘンリー卿の【3人のやりとりを中心に】純粋であったドリアン・グレイが『肖像画』の完成と【あることをきっかけにして】悪徳の道、破滅の道へと加速度的に踏み入れていくのを描いているのですが。

やはり印象に残るのはヘンリー卿の芸術や結婚、人生や英国社会に対しての【独特で偏見に満ちながらも】諧謔的、諷刺的な台詞回し(『三十五を超えているのに、ピンクのリボンが好きだというような女も信頼できない』等)それに対する、作中では"弟子"的な立場で影響を受け続ける(汚される)ドリアン・グレイとの【戯曲的なやりとり】でしょうか。どこかで機会があったら『思わず引用したくなる魅力的な言葉』を沢山見つけることができました。

また、作品と作者は『本来は切り離して捉えないといけない』のですが。やはりヘンリー卿、そして作品全体に漂う世界観には【完全な創作というより】著者自身の当時においては禁忌とされたホモセクシャル、そして美的価値観が【公然と示されている】ように感じられ、結果として、この作品をきっかけに知り合った十六歳年下の青年、アルフレッド・ダグラスとの恋愛や破滅についても、どうしても重ねて考えてしまいます。

耽美的、怪奇的な作品が好きな人へ。同性愛的な背徳感溢れる作品好きな方にもオススメ。

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