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太陽肛門

"世界が純粋にパロディであるのは明白なことだ。つまり人が目にする事物はどれも他の事物のパロディなのである"1927年100部限定で発刊された原書の新訳版である本書は、訳文20ページ+解説40ページの構成、セックス・ピストルズの写真と黒光沢の洒落た装丁が読書人の所有欲を刺激する。

個人的には、読書会で同席した人からすすめられて本書を手にとったのですが。わずか20ページ、されど20ページ。このテキストを初見でさらさらーと読んで"ああなるほど。わかるわかる"なんて感想を述べる人がいたならダウト!指差し思わず糾弾したくなるほどの圧倒的な【迫力を感じさせるわけのわからなさ】でした(ちなみに著者に原稿を見せられた友人は"ちょっと病院いきたまえ"と発言→"うん、わかった"と1年間精神分析へ。というエピソードあり)

そんなわけで、20世紀のフランスで過激なテキストを書いた文学者、思想家としてジャック・デリダやミシェル・フーコーらのポスト構造主義に大きな影響を与えたとされる著者が29才の時に書いた本書については、多くの人が【タイタニックから投げ出された救いを求める乗客の様に】藁をも掴む思いで解説を目にすることになると思うのですが。

これが実に素晴らしく。まるで父親のようなあたたかい眼差しとユーモアを交えながらも丁寧に語られる著者の本書執筆までの【過酷な人生、カトリックへの救い、排泄物へのこだわりや、ベルクソンやニーチェ、ダダイズムの影響について】によって、ようやく"わかった"というより"かんじる"ところまで辿りつけるわけですが。

そんな【目覚めながら夢を見る。贅沢な経験】を僅か60ページちょっとで与えてくれる本書、貴重です。

バタイユ、ピストルズといった、いつだって20代の若者たちの叫びが世界を揺さぶってきた事を確認したい誰か、あるいは【役に立つー立たない、わかるーわからない】といったツマラナイ事から一呼吸ついて、太陽を眺めたい誰かにオススメ。

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