道頓堀裁判
"判決言渡しのあと、安井さんは『お金ではありません。先祖の功績が認められ満足』とさわやかに語ったという(中略)こうして、道頓堀河川敷の土地所有に関する争いは終止符がうたれた。"1981年発刊の本書は1965年に話題になった道頓堀裁判を丁寧に記録した良書。
個人的には、大阪は道頓堀界隈。いわゆる大阪ミナミ好きにも関わらず、この裁判を知らなかったので興味を持って手にとりました。
さて、そんな本書は大阪万博開催を5年後にひかえた昭和40年(1965年)に提出された、国と大阪府、大阪市を相手どり、道頓堀川の河川敷は【太閤(豊臣秀吉)から先祖に与えられた自分の所有地である】ことを確認してほしい。という、道頓堀の開削に参加した1人、安井九兵衛の12代子孫、安井朝雄氏からの訴え。当時の紙面を賑わした、いわゆる【『道頓堀裁判』の経緯や顛末】を、被告でもあった"大阪市"の市立大学法学部教授の著者が判決後に豊富な資料や引用と共に丁寧にまとめたものなのですが。
まず、以前はミナミ周辺のまちあるきガイドとしても【道頓堀の名は、慶長17年(1612)に私財をなげうって川を開削した安井道頓の名前に由来】と当たり前の様に解説してきた自分ですが。この裁判はもとより【道頓。そして安井家の家系や由来のことは全く知らなかった】ので、大変に興味深く勉強になりました。
また豊臣秀吉の時代はもちろん、そのまま【江戸時代にも引き継がれた土地所有権】を現代ではどう考えるか。といった視点も新鮮で。土地所有に関する意味や法的な解釈の違いも含めて面白かった。(裁判終結後の爽やかさもいい。誰か映画化してくれないかな?)
大阪ミナミ、道頓堀を愛する皆様へ。また歴史好きな方にもオススメ。