ギケイキ2 奈落への飛翔
"六条殿に反乱軍が押し寄せました。現在応戦中ですが大変、混雑しております。レジ応援、お願いします(中略)京都在住の武士は完全武装のうえ、お集まりください。"2018年発刊の本書は古典『義経記』を下敷きに義経と愉快な仲間たちを現代風に描いた抱腹絶倒シリーズ2作目。
個人的には第1作目もすこぶる面白かったのですが、そろそろ3作目がでるらしい。と知って、慌てて手にとりました。
さて、そんな本書はパンクミュージシャンでもあり、その流れるような音楽的で独特な文体で(私含めて)ファンの多い著者が、南北朝時代から室町時代初期に成立したと考えられている、作者不詳の軍記物語『義経記』を超現代語訳した【全4巻予定シリーズの二作目】で、本書では兄、頼朝との"いい感じの"再会も束の間、天才的な軍略であっさり平家を滅ぼした義経は兄に疎まれ、差し向けられた刺客を返り討ちにするも西国へと下っていく様子が【魂的存在として現代人感覚を持つ】義経自身の視点で語られているのですが。
1作目を手にした時は『メンヘラ弁慶』とか、歌舞伎やドラマで【固定化したイメージを軽々と越えてくる斬新さ】に笑いながらひきつけられましたが。私事ですが、京都に引っ越しついでに様々な歴史旧跡を巡っている現在。特に『義経による例えまじえた当時解説』がとにかく適切で驚かされた。というか、本書を訳するにあたっての【著者の下調べの深さ】を感じました。
また、オトマトベ的な言葉の繰り返しが独特のリズムを奏でている本書ですが。そもそもが琵琶法師などのストーリーテリング【語りを描写するにあたっては適切な選択】だとあらためて感じ。特に滅びに向かう【義経一行含めて、沢山の死人が出る】本書内容に相応しく【生の鮮やかさと絶妙な無常感】を与えているように感じました。
読みやすい古典超訳としてはもちろん。活き活きとした中世文学に興味ある方にもオススメ。