独裁者のデザイン ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法
"本書では、アドルフ・ヒトラーを中心に、ベニート・ムッソリーニ、ヨシフ・スターリン、毛沢東に代表される独裁者たちが、プロパガンダを駆使してどのように大衆を踊らせ、抑圧化していったかをデザインの観点から見直そうとしている"2019年発刊の本書はデザインー視点による刺激的な一冊。
個人的には文化芸術をテーマに企画した持ち寄り読書会で参加者にすすめられて手にとりました。
さて、そんな本書はグラフィック・デザイナーにして"デザインの歴史探偵"を自称する著者による、ヒトラー・ナチスなどの独裁者のデザインに関した三部作の最後として"人を人と思わない独裁者とデザインのかかわり方に興味を持ったから。と特に【ヒトラーのナチス体制、毛沢東の文化大革命を多くとり上げて】呪力のあり視線、燃える視線、拒否する視線、遠望する視線、反復する視線、記憶する視線と各章のテーマに掲げて、豊富な当時のプロパガンダポスターなどを掲載しながら【デザイナー視点で、意図やその効果】を解説してくれているわけですが。
まず本書で掲載されてきた政治家(独裁者)たちの時代における歴史的な資料。といった位での認識で眺めてきたロゴや出版物、看板が【制作する側、美術的な立場から解説を加えられる事で】ここまで面白く、また当時の思想統制・弾圧の怖さがわかってくるのか。というのが刺激的で。本書を読み終えて、この国のWEBや【街中で見かけるデザインに込められた意図を見直すきっかけ】になりました。
また、本書では"ほかの独裁体制と比較して、はるかにデザインに依存している"として、ヒトラーのナチス体制のデザイン紹介が一番多いのですが。その多くが同志にして年上のライバル、【ムーソリーニの手法を模倣、意識している】ことを知ったのも映画や漫画で2次創作され続けるナチスイメージの【原型を知れたような新鮮さがあって】興味深かった。
オリンピックでパフォーマンスが話題になったピクトグラムといった良い面もありますが。負の面もデザインにはこれまでにあったこと。忘れないようにしとかないといけませんね。フェイクニュース溢れる今。自戒的にあらためて。
ナチスドイツ他、独裁者に関心ある方はもちろん。デザインや美術の歴史を学ぶ人にもオススメ。