にんじん
"それでどうしたっていうんだい?そんなことは、あんたに関係あることかい?自分のことだけを、ちゃんとやったらいいんだよ。ぼくのことなんかかまわないでくれ"1894年発刊の中編小説であり戯曲作品でも知られる本書は、愛情に飢えた少年の姿を生き生きと描き、読み手にも様々な想起を起こさせるコラージュ的な一冊。
個人的には、この本は子供時代に読むと人によっては少年に自分自身を重ねて【酷薄な親の虐待物語】としてトラウマ化するのではないか?と不安にもなってしまいますが。しかし、少年を【信頼できない語り手】何かしら【意図的に隠蔽された物語】として捉えてみると実存主義的先駆けな作品ではないかと感じました。(とはいえ、子供向けではありませんよね。。)
また、大人が描く少年像って、いわゆる【純真で元気一杯】とか、どこか極端に紋切り型で描かれることも多いと思うのですが。著者自身の幼少時が色濃く反映された本書の赤毛の少年【他者への残酷さを充分に発揮する少年】の姿はとてもリアルというか異色な印象で。私的には子供時代を振り返って突き刺さってくる読後感でした。
自身の子供時代を振り返ってみたい、かっての子供へ。また隠蔽された物語をあれこれ考えてみたい空想好きな誰かにもオススメ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?