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葬儀を終えて
"コーラ・ランスケネはびっくりした目つきで親類の人たちを見わたし、それから小鳥のように首をちょっと片方にかしげると、『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』と言い放った。1953年発刊の本書はポアロシリーズ25作目にして、意外なる結末を迎える本格ミステリ。
アガサ・クリスティ生誕130周年、そして名探偵ポアロシリーズ出版100周年として、来年は『ナイル殺人事件』が上映されることもあって、隠れた傑作とも言われる本書を手にとりました。
そんな本書は、大富豪のアバネシー家の当主リチャードの葬儀が終わり、その遺言公開の席上で末妹の"恐るべき子供"コーラが無邪気に発した言葉をきっかけに殺人事件が、そして遺産を巡って一族同士の葛藤や感情が次第に明らかになっていくのですが。
"悲しむべきことです。今日ではもはや、ちゃんとした教育がありません。残念です"と自分から『一応名の知れた人間でした』と忘れさられている事を嘆く作中のポアロではありませんが、すでに本格黄金時代が過ぎ去った時代に【あえて古臭い設定、手法】持ち出してくる著者の余裕たっぷりな描き方に読みながら、まずニヤリとさせられてしまう。
また、犯罪動機の合理性などで犯人を考えてしまうと【おそらくはミスリードさせられてしまう結末】(私だけ?)も秀逸でしたが。でもやっぱり、このシリーズは"曲線の塊みたいな存在である。お腹は適度に丸味を帯びて突き出ているし、頭は卵の形そっくりだし"の【私立探偵のポアロの抜群の存在感】がとにかく魅力的だと、あらためて思いました。
著者ファンはもちろん、伊丹十三監督の『お葬式』みたいな葬儀を巡る群像劇的な作品好きな方にもオススメ。