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スガリさんの感想文はいつだって斜め上

"『本の感想を人に見られるのって、よくよく考えると恥ずかしいことですよね。一種のヌードというか』(中略)『私、露出癖があるのかもしれません』"2019年発刊の本書は小説投稿サイトから誕生した著者デビュー作にして日常ミステリ、読書感想文テンプレを突き破ってくれるシリーズ第一弾。

個人的にはパラパラとめくっていて、夏目漱石『こゝろ』そして新見南吉『手袋を買いに』と本好きでなくても誰もが知る名作たちを『一体どんな風に"斜め上"に?』と興味を持って手にとりました。

さて、そんな本書は長野から家庭の事情で愛知県、名古屋の学校に引っ越してきたミステリアスかつ不敵な美少女、須賀田綴こと"スガリ"が、愛知初の男性家庭科教師、直山杏介。長身の割に打たれ弱く、手芸好きな気弱教師に読書感想部の立ち上げに伴う顧問を依頼した事から、スガリから渡された読書感想文を(読者の代わりに)読む杏介、そして、その【感想文とリンクし、触発されるかのように】杏介がワトソン役、スガリがホームズ役をつとめて、日常のちょっとした謎ときもしていく事になるのですが。

まず、作中でスガリが自ら説明しているように外見的には大人顔負け、太々しいまでに落ち着いた振る舞いをしているスガリ。と、感想文内での自由奔放な内面スガリ。それぞれに異なった魅力があって、いわゆる『文学美少女』から勝手に想像してしまう【先入観から外す工夫に成功している】と思いました。

また、私事ですが。毎日、ブログにアウトプットとして読書日記(この文章)を公開していく中で次第に、効率を優先して『ある程度形式を決めて、パターン化』させてしまっている現在なのですが。スガリの【読書感想文のユニークな着眼点、手書きならではの自由な表現方法】には、作中の杏介ほどの驚きはなくも"感想文仲間"として刺激を受けました。

読みやすい日常系ミステリ好きな方へ。また読書感想文、レビューを書いてる方、名古屋に縁ある方にもオススメ。

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