リヴァイアサン1、2
"だれもを畏怖させるような共通の権力を欠いたまま生活している限り、人間は、戦争と呼ばれる状態、すなわち万人が万人を敵とする闘争状態から抜け出せない。"1651年、清教徒革命後に発表された本書は王権神授説を否定、市民合意による社会契約説を提唱、国家の正当性構築を試みた名著。
個人的には、主宰する読書会の課題図書として手にとりました。
さて、そんな本書は中流家庭出身ながら、その聡明さから有力貴族、チャールズ2世の家庭教師も務めた著者が、亡命先のパリ滞在期間中に執筆したもので。この新訳版では全四部のうち『人間について』を考察した第一部、その上で『国家について』を考察した第二部までを対象として全2冊で翻訳しているのですが。
本書の内容についての是非は哲学や政治学に詳しい方にお任せするとして。個人的な感想メインで書くと、解説でも触れられていますが【かなりの苦労と工夫が伺われる】丁寧な翻訳、編集になっていて。"どれだけスコラ哲学(キリスト教神学者)嫌いなんだ!"とツッコミながら、最後まで楽しませていただきました。
また、やはり単純に【『万人の万人に対する闘争』から『社会契約説』を提唱した人】と、教科書的な事前知識を読む前に持っていた程度だったのですが。その前提として『男女平等』や『人間理性優先』といった、現代においては当たり前ですが【当時においては斬新な考え】をもっていた先進性には驚きを。
また、著者自身は数年前におきた清教徒革命(内乱)に影響を受けて『国家について』を書いたらしいですが。2022年現在、コロナ禍。そして、まさかの侵略戦争が起きている中、本書はあらためて『国家』という、今でこそ当たり前になっている【共同幻想的な人工概念】を再考する機会にもなりました。
近代国家論、西洋政治思想の古典としてはもちろん。そもそも人間とは?国家とは?をモヤモヤしてる方にもオススメ。