逝きし世の面影
"私の意図はただ、ひとつの滅んだ文明の諸相を追体験することにある。外国人のあるいは感激や錯覚で歪んでいるかもしれぬ記録を通じてこそ、古い日本の文明の奇妙な特性がいきいきと浮かんで来るのだと私はいいたい。"1998年発刊の本書は【西洋化で失われ分断された文明】を幕末維新の日本に滞在した外国人の感想のみを素材にして案内した名著。
個人的には歴史を学ぶと(現代風解釈の時代劇とかで)当然の様に感じであろう【江戸から明治。西洋化における断絶や歪み】が気になっていることから本書も手にとりました。
そんな本書は、チェンバレンやハ-ン、シッドモアやバードといった数多くの明治前後に日本を訪れて、様々に記録した外国人、いわば【外部の眼差しで】"昔は良かった"的な短絡思考ではなく【確実に失われた日本の面影を】『陽気な人びと』から始まり『心の垣根』まで14章にテーマをわけて、丁寧かつバランスよく紹介しながら【浮かび上がらせようと試みている】のですが。
既に何冊か、例えば近年では漫画化もされているバードなどを先に読んでいないと、本書は【それを前提として書いている】気がしているので読み難く感じるのではないかと思いました。(幸いにも私の場合は全員ではありませんが、何人か既に読んでいたので、内容を『客観的に振り返るような楽しみ』がありましたが。)
また、著者が冒頭で述べている様に、本書の意図は【歴史の真実や諸問題を明らかにする】とかではなく、誤っているかもしれない外国人の視線を追体験する事で、過去に【確かにあった日本文明を感じる】事に注力しているのですが。単純な言葉に置き換えるのは難しくも、表紙のイラスト他、本書で紹介される【陽気かつ天真爛漫なご先祖様たち】の姿を眺めながら【既に失われた文明】を『過度に美化したり』表面だけなぞって『都合よくねつ造する』のではなく。ちゃんと【覚えておく大切さ】を考える機会となりました。
近代化という西洋化で【失われた何か】を感じたい方へ、また江戸から明治において【歪められ何か】を考えたい人にもオススメ。