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椿姫

"この椿の花は、月の二十五日のあいだは白で、あとの五日は紅だった。どんな理由でこんなふうに色を取り変えるのかはだれにも分からなかった。わたしもただこう書くだけで、その理由は全然知らない"1848年発刊の本書はヴェルデ作曲の歌劇としても知られる、高級娼婦と青年の恋愛小説傑作。

個人的には演劇や映画などで名前こそ知っていたものの原作を知らなかったことから手にとりました。

さて、そんな本書は実在の、そして著者自身も交際していた高級娼婦マリー・デュプレシをモデルにしたヒロインの"椿姫"マルグリット、彼女の若すぎる死後の競売シーンから始まり、青年アルマンが振り返って生前の彼女の事を語った『事実をありのままに記した』という形式になっているのですが。

本書の舞台化が写実的な表現を初めて持ち込んだといわれるのも納得の、まさかの死後の市民の"商売女"としてのマルグリットに対する冷淡な反応、さらには墓所での扱いや無惨な亡骸が容赦なく始めに描写されるのには【ちょっと展開としてびっくり】しました。

一方で、それが逆に効果的にはたらき、青年アルマンが後悔する形で語り出す、マルグリットとの出会い、そしてアルマンの一途な想いに応える所から始まる【マルグリットの変化や純粋な二人の手紙のやりとり】に説得力を与えていて。恋愛物語として予想以上に引き込まれるものがありました。うん、面白かった!

19世紀パリを舞台にした恋愛小説を探す人へ、また有名歌劇や映画の原作としてオススメ。

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