京都の中華
"『京都の中華』は、ちょっと違う。中華というもののとらえ方と育ち方が、ほかの店とはちょっと違う。花街の習慣『ごはんたべ』にもたえる、店のしつらいと、気働き(中略)独特のだしのとり方"2012年発刊の本書は点を線に、京都人の記憶や感覚、ルーツを探索した良書。
個人的には京都といえど、発祥チェーン店の『王将』やヴォーリズ唯一のレストラン建築としても観光客に人気の『東華菜館 本店』とも"また違う"魅力を持っている個人経営の多い、こじんまりした街の中華について知りたいと思って本書を手にとりました。
さて、そんな本書は京都に育った著者自身が個人的に好きな中華料理店を訪ね、餃子、春巻、カラシ鶏、すぶた、天津飯、炒飯等々【どのように今の味に落ち着いたのか】を写真と共に紹介しつつ、それだけに留まらず『時代別コラム』として大陸から入ってきた『中華料理の京都化』に大きな影響を与えた高華吉(こうかきち)そして、彼を料理長として迎えいれた濱村保三などの【文化・歴史エピソードも紹介してくれている】わけですが。
まず解説で、誠光社の堀部篤史が"(単純な定義をしないように注意深く言葉を選び)【食べる側と提供する側の独特な関係性こそが『京都の中華』の本質としたことに普遍性と強度がある"と本書の意義を見出した様に、一見すると"ニンニクを多用しない、独特の出汁"といった京都独特の『中華料理店ガイド』と思わせつつも、実は、これまで【存在したものの名付けられなかった感覚を言語化した文化論』であるのが、非常に新鮮かつ興味深かった。
また、こういった個人経営で古くから続くお店が京都に限らず、高齢化社会や、昨今のコロナ禍で次々に廃業していくことが【単なる『飲食店の廃業』ではなく『文化の喪失』である】ことをあらためて本書を読み進めながら実感し、微力ではあっても、せめてお世話になってきた(なっている)馴染みの店には"微力であっても応援する気持ちで"足繁く通わせていただこう。そんな気持ちも自然と浮かんできます。
京都好き、中華好きはもちろん。食の文化史としてもオススメです。
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