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乳癌日記

"『リンパ線全摘したら、絵が描けなくなるのでは』そう不安を感じて、主治医の先生に『これを描きたいんですけど』というのを実演で見せるために、乳癌になった漫画を描き始めたのがきっかけでした。"2020年発刊の本書は当事者目線から癌になってしまった人たちにそっと寄り添った良書。

個人的には親族の多くを癌で見送ってきた1人として、また著者と世代が近い事から他人事というより『いつかの自分事』として手にとりました。

さて、そんな本書は同人誌活動を趣味とする著者が、癌保険の営業ブースで【自身が乳癌と気づいた所から始まった闘病記】として、治療開始から、さよなら、おっぱい、治療後のエピソードと時系列に、また闘病中の日記をもとに金銭的な補償や主治医の"ステージという概念が古くなっている"といった【最新医療現場話と共に詳細に紹介されている】わけですが。

まず、最初に感じたのは手塚治虫が【あえて可愛らしい頭身の漫画キャラ】で描くことで厳しい現実を意図的にやわらげて表現したことを私的に連想させられた著者の絵柄でしょうか。推測するしかありませんが、おそらくは患者として、また女性として辛いことも沢山体験されたと思うのですが。どこか本書全体からは【不安が払拭される、あたたかな印象】を強く感じました。

また新しい患者、特に【30代〜40代の現役世代の患者が増える一方】で、【担当する乳腺外科の医師は少ない】ことで、多くが不安を抱えたまま悶々としがちかもしれない女性にとって、本書は立場を弱く感じてしまうであろう患者目線で【質問しづらくも気になってしまう事】にも多く、代弁するかの様に言及されていることも素晴らしく、多くの関係の方に手にとって欲しく思いました。

乳癌が気になる方はもちろん、癌全体について患者目線で知識を深めたい当事者、サポートする方にオススメ。

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