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東京育ちの京都案内

"京都について書かれた本の悪影響で、最初の頃は、何かと私、好戦的だったんです。排他的というなら、受けて立とう、というようなね(中略)肩で風切って歩いてましたからね。"1999年発刊の本書は作詞家・エッセイストの著者が移住3年目。雰囲気ではなく暮らしから見えた京都を描いた一冊。

個人的には無数にあって食傷気味な『生粋の京都人による京都本』というよりは、自身と同じく【外から引っ越してきた人が感じる京都】に興味があって、本書を手にとりました。

さて、そんな本書は1980年代のアイドル全盛時には作詞家として(私にとっては懐かしい)ヒット曲を多数手掛けた後、1990年代には建築家の夫についていく形で東京から京都に移住、若い女性向けや京都の暮らし・文化エッセイを発刊している著者が【移住3年間で感じたこと】を四季と共に、また生活者としての心情の変化を含めて"ぶぶ漬け伝説""赤くないマクドナルド""京町屋に住みたい"と【興味の赴くままに】軽妙な文体で描いているのですが。

まず、あとがきで著者が執筆理由としてあげている"観光客向けのガイドブック、それも京都人が書いたものほど、しっくりこない"(つまり)【住んでる(=一歩踏み込んだ)観光客には実は頃合いのもの(本)がない】には、引っ越して半年、ちょうど今の私が感じている困った感覚とシンクロする為、大いに共感する部分がありました。

また、著者のテキスト自体【割と独特なリズムがあると思う】のですが。変にマニアックに執着せず、さりとて興味を持った事はちゃんと自分の足で軽やかに訪れていく姿にとてもマッチしていて、終始気持ち良い読み心地でした。(現在はそんな京都も離れて、ロンドン暮らしを一年。今は滋賀県の琵琶湖畔の家で暮らしているらしいですが。何だか、それも"著者らしい"姿だと思えます)

インバウンド前、ちょっと昔の京都を著者と追体験したい人。また他から京都に引っ越してきて数年。そんな方にもオススメ。

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