にわか〈京都人〉宣言
"京都の風土と人に畏れを抱いていて、移住をためらっている方も多いらしい。そういう方々に助言を求められれば、一言で済む。『住んでみなはれ』人生は一度きりしかない。何をためらうことがあろうか。"2020年発刊の本書は元・文芸誌編集長による5年間の"にわか京都人"生活文化エッセイ。
個人的には、たまに訪ねる『観光の場』から移住して毎日の『生活空間』になった京都について。私自身も色々な違いに驚くことがあるので、本書に惹かれて手にとりました。
さて、そんな本書は定年退職した元『小説新潮』編集長である著者が、京都芸術大学(旧・京都造形芸術大学)の特任教授として過ごした5年間の"京都生活"。観光ガイドブックには載っていない京都の姿を地元ではお馴染みのスーパーフレスコから始まり(笑)地蔵盆、京都中華、そして【文芸編集者としての視点で】作家と絡めて紹介してくれたりしているわけですが。
まず、重ねて私事で恐縮ですが。60代にして『生まれて初めての一人暮らし』をすることになった著者の【物件探しから家電、電動自転車購入といった試行錯誤から描かれている】本書。引っ越しの際に同じく悩んでいた自分と重ね合わせながら読んでいく感覚があって、とても共感できました。
また、長らく東京住まい。そして豊富な知見を持つ著者による、割と【はっきりというか素直に感じた事が綴られていて】"『京都』と『ヴェネツィア』は似ている"といった感想や、京都のみならず『関西のハブ都市』と京都を位置づけた上での大阪、神戸、奈良、大津といった関西の大都市圏に対する感想に関しても、関西在住者としては新鮮で興味深いところがありました。
東京、関東から京都に住むことになった、いつか住みたい人へ。また京都在住の人にもオススメ。