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青い夜道
"白い石の上に冬はいる うつくしき人よ 私のつめたい靴をふんでください"2006年発刊の本書は、銀行員として働きつつ、郷愁をテーマに多くの詩作を行い「青い夜道の詩人」とも評された著者の第一詩集を底本に八十八編の詩を収め、夜ー治安維持法、昭和恐慌といった亡びを予感させる一冊。
個人的に縁や縁はなくても、名前はもちろん、重なっている部分が多い人は他人とはいえ、やはり気になるもので、会社員として働きつつ、また多作ではなくても最終的に日本現代詩人会会長に就任した著者の人生にはどこか勇気づけられる事から師走の忙しい最中、久しぶりに手にとりました。
そんな本書、というか詩集に関しては当たり前ですが【それぞれが感じるままで良い】と思うのですが。安田家の縁故採用という周囲の視線、大学出の後輩に次々と追い抜かれていく人事といった状況で、帰宅してはひたすらに部屋にこもった試作の結実、アイデンティティのあらわれとして眺めると、悪く言えば現実逃避、それでも【何かで認められたいという切実な気持ち】が伝わってくるようにも思うのです。
生活に根ざしたやわらかい言葉に、真夜中にそっと癒されたい人にオススメ。