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眼球綺譚

"それより問題は、これだ。わたしはデスクの上に視線を落とす。『読んでください。夜中に一人で。』縦書きの便箋に、黒いインクでそう書かれている。"1995年初刊の本書は、著者初めての短編集にしてコミック化もされている『由伊』という同じ名前の女性が登場する美しい7つの怪奇譚。

個人的には、寝苦しくなってきた夏を迎えて。ホラー風味の作品が読みたくなったのと、バタイユの『眼球譚』を彷彿とさせるタイトルに惹かれて手にとりました。

さて、そんな本書は最後の表題作にたどり着くまでに、不可解な体質を持つ女性を描く『再生』釣り上げた奇妙な魚を育てる『呼子池の怪魚』珍しい"食材"を提供してくれる料理店の話『特別料理』儀式的、不可解な誕生日『バースデー・プレゼント』夜行列車で大学生たちが怪談話をしていると『鉄橋』小説家の飼っている犬がのっぺらぼうの人形を拾ってくる『人形』といった計7作品、それぞれの作中で様々な役割が与えられている『由伊』という女性の物語が収録されているわけですが。

まず、いわゆる著者と言えばやはり『新本格ミステリ』という印象が強く、「十角館の殺人」から始まる『館シリーズ』を何冊か手にとってきましたが。様々なテイストの作品が収録されている本書全体については【怪奇・幻想小説も読み応えあるな】と自分の限りなく低い文才を棚に上げて(笑)強く感心させられました。

また、そんな収録作の中では個人的には幻想的なテキストから【インパクトのある映像が自然に浮かんできた】『再生』や『特別料理』そして表題作の『眼球譚』。そして【懐かしの育成シミュレーションゲーム、シーマンを想起させられた】『呼子池の怪魚』が印象に残りました。(『特別料理』は昆虫食に興味ある私には"普通に"美味しそうで。。)

著者ファンはもちろん、どこか懐かしい怪奇・幻想短編小説を探す人にもオススメ。

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