見出し画像

ぼくは猟師になった

"ありきたりな意見ですが、スーパーでパック詰めの肉が売られているのを当然と思い、その肉にかけられた労力を想像しなくなっている状況はおかしいと思います。"2008年発刊の本書は保護や害獣といった『上から目線』ではなく、人間も共に生かされている自然の一部である事を教えてくれる。

個人的には、発刊当時に私の周囲で話題になっていたものの(うち何人かは猟師になりました)結局読む機会がなかったのですが。人気漫画(アニメ)ゴールデンカムイにてアイヌのヒロインが毎回【鮮やかに獲物を捕まえては、感謝して食するシーン】で本書をふと思い出し手にとりました。

さて、本書は当時30代の若者猟師だった著者が狩猟の技術に関する本やベテラン猟師の聞き書きのような本はあっても『実際に狩猟を始めてみました』(ましてやワナ猟)といった本が【皆無に等しい】と感じた事、また【多くの人に狩猟、猟師の生活を知ってもらえたら】と思った事を執筆動機として、獣医を目指していた著者が【どうして猟師を目指す事になったか】そして実際に駆け出し猟師になってからの日々が11月から2月までの猟期、それ以外の休猟期のDIYや山菜・野草採り、漁生活にわけて書かれているわけですが。著者の朴訥ながら熱い語り、豊富な写真もあって、猟師としての成長を【自分が追体験している】様な楽しさがありました。(そして著者の思惑通り?狩猟試験の用紙をダウンロードしてしまいました)

また、10年前は著者の【運送会社で働きながら猟を続けている】事に『それだけを収入とする専業ではないなら猟師を名乗るな』的な批判的な意見もあったらしいのですが。複業の本格解禁から数年の2019年現在、むしろ著者の【稼ぐお金の上限を決めた上で】狩猟を『生活の営み』と捉えて、週3〜4程度だけ会社で働き、残りを猟はもちろん執筆や講演、家族との時間に充てているライフスタイルこそ【自然である】と、ようやく【時代が(人材不足や環境の変化などで)消極的に追いつきつつある】感じがして、こちらも何とも感慨深いものがありました。そして、やっぱり人生において【自分だけの軸が確かに在る】って大切だな。とそんな事もあらためて思ったり。

狩猟生活やワナ猟に関心のある誰か、あるいは自然や動物たちと共に生きる。そんなライフスタイルを考えている誰かにオススメ。

いいなと思ったら応援しよう!