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ぼくには数字が風景に見える

"数字はぼくの友だちで、いつでもそばにある。ひとつひとつの数字はかけがえのないもので、それぞれに独自の『個性』がある。11は人なつこく、5は騒々しい、4は内気で物静かだ"2007年発刊、アスペルガー症候群にしてサヴァン症候群の著者の自伝である本書は【違いを認めて生きる】驚嘆と感動の一冊。

個人的には、映画『レインマン』のきっかけとなった、こちらは驚異的な記憶力を持っていた故キム・ピークを通じ障がいをもっている人のうち【特定分野に限り優れた能力を発揮する人】をサヴァン症候群と呼ぶのは知ってましたが。数字と形と色が感覚として繋がっている『共感覚』の持ち主にして【語学や計算に高い能力を発揮している】著者の眺める世界にも触れたいと思って本書を手にとりました。

そんな本書は、著者の共感覚の紹介から始まり、ページの多くを【抜群の記憶力と素直な文体で】自身の生い立ちから成人後の2004年の円周率暗唱のヨーロッパ記録樹立(のちミスが判明)やTVドキュメンタリー出演までを描いているわけですが。相手の気持ちがわからない事での苦労から【努力を重ねて成長し社会に適応していく】著者の姿に感動しつつ、その人柄もあるのでしょう。感謝も込めて描写される両親や友人、そしてパートナーの【サポートする姿や著者との良好な関係性】に何とも胸を打たれます。

また、著者が抜群の語学理解力があり11ヶ国語を操る一方で、直接的、具体的な文書が形式として少ないからでしょうか?読書家ではあるものの【小説にはあまり関心がない】のには、私自身はもっぱら文書の余白を色々とイメージしたりする楽しさを求め小説ばかりを読んでいるので、それが【容易に可能な事自体が恵まれている事】にあらためて気づかされ、ハッとさせられました。

本人自らが語る『共感覚の世界』に関心のある誰か、あるいはコミュニケーションにハンデを抱える人の自立に勇気づけられたい人へ。またアスペルガー&サヴァン症候群理解を深めたい人にもオススメ。

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