三体Ⅱ 黒暗森林(下)
"あなたは昨夜の講演でこう言いました。宇宙の本質は黒暗森林だと理解するのがこんなに遅れたのは、人類文明の進化が未熟で宇宙意識を欠いているからではなく、人類に愛があるからだ、と。"本書は第1作を遥かスケールアップして書かれたハードSF傑作。
さて、そんな下巻では三体世界の智子の監視に対して、人類が未来を託した『面壁者』のうち、200年の冷凍睡眠から目覚めた羅輯(ルオ・ジー)とハインズの2人の前には激変した未来社会、そして三体世界を圧倒的な自信をもって迎えうつ準備をしている太陽系艦隊が展開しているのですが。
いかにもSF的な近未来的ガジェット、宇宙船といった描写からの200ページ位からのいよいよ直接的な、三体文明の探査機"水滴"とのコンタクトから始まりスピードアップする展開(銀河英雄伝説を彷彿とさせるシーン多し!)そして羅輯による上巻冒頭の蟻の場面と繋げての息を突かせずラストまで。流石の完成度、良質のエンタメSFだと思いました。いやー。面白かったです。
また『フェルミのパラドックス』物理学者エンリコ・フェルミが最初に指摘した、地球外文明の存在の可能性の高さと、そのような文明との接触の証拠が皆無である事実の間にある矛盾ーの様々な解釈の一つとして、羅輯が上巻で放った『呪文』の結果をへて『黒暗森林』理論にたどり着くのですが。こちらも、まさかスケールがここまで大きくなるなんて!と驚きながらSF好きとして大満足でした。(さらに宇宙スケールが上がるらしい?第3部の翻訳が待ち遠しい!)
わかりやすいエンタメSF作として、同時にハードSFとしても傑作である本書!オススメです。