きつねうどん口伝
"この三つがうまく噛み合わんと能率も上がらんし、うまいうどんがでけへんのです。私はこの"手もみ"のタッチ、リズム、ハーモニーを、『うどん屋の音楽』といわしてもろてます。"1991年発刊の本書は、きつねうどん発祥店、松葉屋(現うさみ亭マツバヤ)2代目のこだわりを細部にわたり、丁寧に引き出している一冊。
個人的には、縁が合って大阪に何十年も住んでいるにも関わらず【きつねうどん発祥の店】が心斎橋にあるのを不覚にも?全く知らなかったことから、訪れる前の予習に本書を手にとりました。
さて、そんな本書は日本ではじめて私設の食専門図書室を開設した著者夫婦が講演依頼で知り合った船場のうどん屋『松葉屋』の2代目店主、宇佐美氏のこだわりを取材して形にしたもので、うどんとだし、素材の本質、仕事と道具、船場での思い出や生い立ちが6章にわたって、船場言葉のまま、そして豊富なイラストと共に紹介してくれているわけですが。
やはり、きつねうどんの誕生が、かけうどんに添えておあげを出したところ【お客さんがうどんに一緒に入れて食べるので、最初からのせて出すようになった】とか。最初はおあげがお稲荷さんのきつねに合わせて二枚で【『こんこんさん』と親しまれていた】という話にまず素直な驚きを感じました。
くわえて、味に厳しい大阪、船場で叩き上げてきた料理人としての【経験と博学さに裏打ちされて語られる】讃岐うどんとも違う大阪の『手もみうどん』の工程話や、素材や水へのこだわり話は、仮に【うどんが大好きでなくても充分に引き込まれる内容】で、とても楽しかったです。地元に愛されながら、現在は3代目にバトンタッチしているお店の方にも親しみを勝手に感じて、何度も立ち寄りたくなります。
うどん好きな方やうどん屋を目指す人の貴重な資料として、また大阪観光に来られる方にもオススメです。
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