
能力主義は正義なのか?サンデル教授と東京工業大学、そして自己責任論
東京工業大学未来の人類研究センター
ハーバード大学教授政治哲学者マイケル・サンデル教授
東京工業大学 伊藤教授
東京工業大学 中島教授
マイケル・サンデル氏:能力主義は正義か?
能力主義と「能力の専制」実力も運のうち
本:Tyranny of merit What's become of the Common Good
能力によって職業や社会的役割を得ることは基本的に良い意味で使われるが、ここ数十年、能力主義に根差した社会が不平等や怒りを生んでいる。新自由主義な経済政策やグローバライゼーション(Neo-liberal economic policy and Neo-liberal globalization)により、勝ち組と負け組の格差が深まり、政治が毒されている。成功に対する認識の変化も問題。成功して頂点に立った人たちは、それが自分の努力の結果であり、市場の恩恵を受けて当然と考えるようになった。
同時に、苦しんでいる人々のことを「自業自得」だと考えるようにもなった。(deserve their own fate)
Lose our sense of community and responsibility
Social divide
Divide between winners & losers has been deepening
Poising our politics
If everyone has equal chance, then their meritocratic idea that winner should be praised
To achieve equal opportunity to learn, access to education and access to culture to compete
1. Neo-liberal economic policy
2. Changing attitude toward success
Our responsibility
共同体を破壊、他者に対する尊敬の念
Paradox
能力主義 アイデア
もし皆が平等に競争の機会が与えられているのであれば、勝者は成功に価する
Society, education, equality
Equal opportunity to achieve background condition access to learning, culture... Luck, good fortune
恩師や家族、共同体や国家、生きている時代の恩恵を忘れてはいけない(the time which we live)
~が人気の時代に生きている、それも幸運のひとつ
周囲の支えに感謝すること
”angry politics” アメリカを含め多くの国で政治をめぐる怒りと分断が顕著
Polarized politics
社会格差、アメリカ国民の過半数が学位を持っていない
大学進学率が高いアメリカや日本にも当てはまる
「努力して大学へ行け」というのは、労働の尊厳を無視することになる
社会の一人ひとりに、敬意が払われなければならない
経済的にまともな暮らし、尊厳ある生活が送れるように
健全な民主主義のために
Dignity of work
Importance of respecting
家族や共同体にとって重要な貢献をしている
Can begin to erode the social bond
Humanity that can come in realizing the roles of luck
Responsibility, Respect, Dignity
Health democracy
東工大「利他プロジェクト」
日本社会における自己責任論の高まり
・新自由主義の導入(2000年頃から)
・コロナウイルスへの感染を「自業自得」と考える人の多さ
利他
「私はあなたでもありうる」という感覚
(他人に何かをするというよりも)
男性
女性
人の好意を受け取ることの難しさ
自分は~に価しないという結果
男性:自己肯定の低さ
女性:相手がくれた好意を返さない
サンデル教授
「利他」は英語のaltruism利他主義とは少し違うと感じた
利他は、自己と他者の境界が曖昧
自己と他者を明確に区別した上で、その境界線を乗り越えるという概念
人助けをする場合も、善意活動として行うのではなく、自己と他者の利害を区別しない状態 人をケアするとき、その人もケアされている
利他と利己をそう簡単にわけることができない
(能動性と受動性、私とあなたの境界線が曖昧な状態)
サンデル教授
成功を自分の努力、意志だけの結果だと思い込む風潮を批判している
Role of change, accident
他人から受けた恩恵を見過ごしている
Consistent with my book
Philosophical issue
Their success by their own effort
Ignore the role of chance, luck
→Leads to the social division and undermine the sense of community
「コロナ感染も個人の意見、個人の選択の結果であり、その人の責任で感染した」One is responsible for the consequences
Health, wealth, prosperity .. individual responsibility と考えてしまうと同様に、貧困や病気等も同じくindividual responsibilityと責任を押し付ける
Individual responsibility creates social division & undermines sense of community
Generic technology of enhancement
遺伝子工学によるエンハンスメント
Designers' body
遺伝子操作によりある特性を持った子どもを作る
➡children are assumed deliberate products
子は親の意図的な意志の産物
意志に過度な役割を持たせている
新自由主義の時代が自己責任論の高まり
Neoliberal approach to globalization in the last decades
この傾向は日本よりアメリカのほうが強いと思っていた
more extreme
コロナの影響で日本でも強まっていると思う
Why?
1980年代 中曽根内閣 国家運営→民営化 大きな政府
1990年代 新自由主義 小さな政府
日本の今の政府:自助・共助・公助
弱者だった人々が成り上がりで上へ行ったときに、共助より自助(自己責任)を強調する傾向が日本にある
菅首相は秋田のいちご農家出身→自助論強い
get education/ pursue different pass
自らの努力で運命を変えようとする
speaking generally, not particularly someone
2 interpretations(解釈)
1. 貧困がどんなものか知っているので、今でも貧困に苦しんでいる人々を助けたい(連帯、共感、equality, solidarity or at least equality of condition)
2. 自分はここまで出世したのに、なぜ他人はできないのか→自己責任(individual responsibility)、自助努力(self-help)(社会的流動性、自助努力)
この違いにより、貧困に対する政策も分かれていく
→政治的プロジェクトや公共哲学にも影響してくる
→この違いは、政治的な立場やイデオロギーだけに留まらない
→成功が個人の意志によるものなのか、それとも運によるものなのか、という議論にも繋がる
Individual responsibility to self-reliance
全ての人々の生活を向上すること、
社会の絆がどんどん失われ浸食されている
コミュニティの連帯責任が失われている
Community, solidarity
Social bond that bring us together is eroding in part because we focus too much on individual responsibility and not enough for the responsibility of the community as a whole
本のテーマ:
individual mobility
アメリカは個人の社会的流動性を強調するあまり、コミュニティや連帯の大切さ、出世できない人も含めた全ての人の生活向上を疎かにしている
異なるpolitical ethic
「能力の再定義」が必要
障害を持った人々は、必ず周りの人々を巻き込む必要性
この能力がネットワーク化する
例えば、目の不自由な人と美術館に行って作品を説明すること
初めて自分が感じていることを言語化しようとする
→ネットワーク化
Who here is providing the gifts to whom?
説明している人もgiftを受け取っている
Who may now see the work of art in a way that she/he never had seen before
「全ての人間が貢献できるものを持っている」
労働に対する尊厳、共有 dignity of work
インド:あなたのダルマを果せ
ガンディー:あらゆる宗教にある宗教
コモンズ:共通善
東洋哲学
与えるということ、受け取るということ
教えること、学ぶことにおいては、誰が誰に贈り物を与えているか
Common good
Not only philosophy of governing but also orientation of life to live together
One way giving → dialogue/ exchange gifts
他人が置かれている状況を理解できなくなることがあってはならない
Appreciate the role of luck, accident, humility
These are dangerous times for democracy.
We live in an age of winners & losers, where the odds are stacked in favor of the already fortunate. Stalled social mobility and entrenched inequality give the lie to the promise that "you can make it if you try". And the consequence is a brew of anger and frustration that has fueled populist protest, with the triumph of Brexit and election of Donald Trump. Michael Sandel argues that to overcome the polarized politics of our time, we must rethink the attitudes toward success and failure that have accompanies globalizations and rising inequality.
サンデル氏:能力主義が生む競争と分断を変えよう
「私が教育システム全般について言いたいのは、能力主義的な競争に変えてしまうと、本来の目的である学ぶことへの愛が薄れ、何を本当に勉強したいのか、何を学びたいのかを自問する能力が失われてしまうということ。市場主導型の能力主義社会である現代は、個人の成長や知的探求という教育を評価できず、競争や比較を動機とした別のものに変えてしまう危険性があります。それは、音楽を楽しむことから得られる喜びや幸せを、私達から奪うことになるかもしれないということです。」
「働く、ということは、お金を稼ぐための手段であると同時に、尊厳や尊敬、名誉の源泉でもあるということ。勝者が自分の成功は自分のおかげだと思ってしまうと、自分より恵まれない人を見下す傾向があります。そしてそれは、勝者の間にある一種のプライド、一種の思い上がりを生み出します。そして、負けた人のやる気を失わせます。こうして、社会はバラバラになっていくのです。」
「裕福な人と、資力の貧しい人は、日々の生活で交わることがほとんどない。それぞれが別々の場所で暮らし、働き、買い物をし、遊ぶ。子供たちは別々の学校へ行く。そして、能力主義の選別装置が作動したあと、最上層にいる人は、自分は自らの成功に価し、最下層の人たちもその階層に値するという考えにあらがえなくなる」
「多くの移民が、いわゆる安い労働力を提供しているという話がありましたね。新参者をアウトサイダーとして扱い、社会の完全な一員として尊重しない傾向があるからです。移民に対する差別もしばしば見受けられます。移民は経済的機能を果たすためだけに来ているのではない、ということを忘れてはいけません。」
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