今ある文化の価値を守るために、アップデートしていくこと
サパで出会った少数民族の子が、毎日黒モン族の伝統衣装を着て何キロもの山道をひたすら歩いていた。
山道はとても険しく、暑く、衣装はとても重いので、他の少数民族の方々は、Tシャツやサンダル等、街に溢れた安くて軽い中国やタイ製の服を着ることが増えているので、その子に、なぜ毎日着るのか、と聞くと「私が着ないと、子供たちも着なくなる。誰も縫わなくなる。文化が消える。子供たちには、いつでも伝統衣装を着た私を思い出してほしい。」と。その姿を観光客にも見せながら、「時には、私のことも思い出して、伝統を守ってね」と言っていた。
ベトナムに存在するの54民族の大半を占めるキン族の伝統衣装として、アオザイ(Áo dài)が有名だが、メコンデルタ地方にはアオババ(Áo bà ba)と呼ばれる上下セパレートの伝統衣装も存在する。
お祭りや公式会議の際、ベトナム人女性は、世代関係なくアオザイやアオババを着て写真を撮りまくっており、最初は「ほんま、よぅ写真撮るなぁー」と思って傍観していたけれど(笑)、こうして、それぞれのスタイルで、その時代にあった形で、伝統文化の「美」が更新されていく流れは良いなと思う。
この世には、時に、「伝統を守るために、私たちが変わらないといけないこと」が多々ある。そして、それに個人が気づくためには、他の伝統や文化に出会っていく必要があると思っている。
ちなみに、Áo dàiをアオザイと発音するのは主にベトナム北部で、南部はアオヤイと発音する。発音といえば、言語も同様、現在世界では7000程の言語が存在しているみたいだが、2週間に1言語の割合で消滅しており今世紀中に半減すると言われている。
国の人口が減る、というのは何も経済発展や軍事力の弱体化だけではなく、同時に、継承する話者が減るので言語や文化も消滅する危機でもある。
「今ある価値を守る」ということを常に意識したい。そんなことを思いながらのブース出展時間。