裏浅草通信/『スパイスカフェ』/美味しいお店が…。
「スパイスカフェ」は押上駅から下町の住宅街…まだこのあたりは昔の風情が残っている…を入ったところ、墨田区立花にある。浅草も下町というにはだいぶ手が入っている。まだ闇ならぬ薄暗がりが残っているのが、裏観音だけれども、立花に比べたら開けてしまっている。立花のあたりは、古いアパートや住宅をそのままにお店になっているところがあり、「スパイスカフェ」は、その中でも一段と古い佇まい。古民家とは云わないかもしれないが、充分古い住宅をお店にしている。本場で学んだスパイス料理を日本人だからできるスパイス料理にと謳っている。料理にペアリングドリンクのコースが選択出来る。
前に伺ったのは、コロナ前だからちょっと間があいた。途中、カレーだけの営業にしていたので、ちょっと物足りない感じで行っていなかった。コロナは明けていないけれど、お茶のペアリングコースが素晴らしいので、味わいにでかけた。予約して時間前について、開店、「さあどうぞ」となったのだけど、いつもはカウンターの奥にいる伊藤一城さんが扉をばんと開けて出てきた。一緒に待っていた友人がその開いた扉にばんとぶつけられて、店の壁の方によろよろと押し込められてしまった。
「どうぞ」気づいているのかいないのか、気づいていないはずはない、伊藤が抑えている扉の向こう側に挟まれたところから友人が出てきた。ちらりと見て、何も云わずに入っていった。ちょっと立ち直るのに時間がかかったが、気を取り直して席についた。夜はお任せのメニュー。ペアリングは、ワインだけになっていた。あらら。以前来た時には、鳳凰単欉を中心に、岩茶、東邦美人なども出され、大いに盛り上がった。(独りでだけど)東邦美人とかは自分でも擬をつくるので、担当の若い男の子と製茶体験に招待する話しなどをした。ないのか…残念!
で、蟹のビリヤニがメインで、さぁ…というところで、友人は、ナイフなしのスプーンとフォークじゃ食べられないし、かぶりつくの嫌だからと、取り分けられた蟹をこちらに、そっと、押し込んできた。口に入れたら、あ、そうかと食べない理由が分かった。臭い。魚介類独特の臭い匂いがする。冷凍か腐っているか…。で、当然、ビリヤニも臭い匂いが付いていて、二人とも一口も食べず、お土産にした。白いご飯をもらえるので、それでカレーを食べた。ビリヤニは香り米だと自慢していたが、白いご飯は、たぶん日本米。スパイスカレーにはちょっと合わない。
そうそうに、デザートまで食べて、デザートもチョイス。ミカンの凍らせたの——。固くてスプーンじゃ小分けにできない。一口で食べるには大き過ぎる。スプーンでどうにか割ったら粉々になってしまった。ふうううう。なんか、お客目線がゼロになってる。元々そうだったのかも知れないが、少なくとも僕は、気がつかなかった。お客が食べるということを全然、考えていない。
ドリンクは、ハーブティと珈琲。ハーブティはなんのことはないフアミレスでもでるような普通の薄い奴、珈琲は美味しくなく普通で半分以上残した。飲み物にも細心の心遣いをしていたのに。どうした!飲み物別で6000円、高いな。でも満員。みんな満足そう。
ビリヤニをテイクアウトして早々に退散した。会社に戻って、ちょっとこれを食べてみてくれる?全部食べなくてもいいので、一口で良いからと言って渡した。レンジでチンして、開けた瞬間、会社中に生臭い腐臭がただよった。あ!「いいよ食べなくて…」「チェックさせようとしたんでしょ。一口だけね。——!駄目だわこれは。」「うん」連れていってくれと頼まれて、間があいているから心配してとりあえず、行ってみたのだけれど、駄目だー。「早めに自分で行けば良かった」と、軽くジャブを打たれてしまった。
おそらくコロナとか戦争でのインフレとかがあるのだろうと思うが、この衰退ぶりは酷過ぎる。それほどに、災禍の影響は耐えられないものかと慮ったが、「スパイスカフェ」のHPを見たら元気に支店展開をしていて、ああ、そういうことね…と思った次第…。これが今の「スパイスカフェ」の日常なのだ。
災禍の影響は、こうしてじわじわと僕(たち)の生活を圧迫していく。もしサバイバルをするのだとしたら、根底から生活を見直さないといけないのだろう。生きている間に、それは、可能なのだろうか。