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The Original(2023年6月)

※ここ数年で載せ損ねた過去の展覧会の記事を載せます。

今の世の中に当たり前に存在する「デザイン」。おそらく数多ものデザインが生まれては消えて行った中で、残り続けているデザインとは、「並外れた独創の力」を持った「オリジナル」と呼ぶにふさわしい。そんな視点から選ばれた「デザイン」たちを一堂に並べた展示。

何とも心地いい空間だった。
ここにあるのは、長い歴史の中で選ばれしものたち、なのだから当然だろう。
美しいものに囲まれることで、こんなに心が安定するのだから、やはり「好きなものに囲まれて暮らす」のは大事なんだなと実感。

この日Xに書き残した言葉。

久しぶりの21。The Original。 美しいかたちをたくさん見るのは良き。 その後一件取材。 アートについて語る時間良き。

21_21 DESIGN SIGHTでは、2023年3月3日より企画展「The Original」を開催します。展覧会ディレクターには、デザインジャーナリストの土田貴宏を迎えます。
本展では、世の中に深く影響を与えるデザインを「The Original」と定義し、紹介します。ただし、ここでいう「The Original」は必ずしもものづくりの歴史における「始まり」という意味ではありません。多くのデザイナーを触発するような、根源的な魅力と影響力をそなえ、そのエッセンスが後にまでつながれていくものです。
これまで21_21 DESIGN SIGHTでは、「デザインは生活を楽しく、豊かにし、思考や行動の可能性を広げてくれるものである」という考えに基づき展覧会を開催してきました。生活の中にある多様なデザインは、その歴史のなかで影響し合い、時代に求められるかたちへと展開し続けています。しかし、生活様式が目まぐるしく変化する現代の社会では、そのデザインのエッセンスを見失いがちであるだけではなく、あふれる情報の中で、それに出会おうとする意欲すらも薄れているかもしれません。
世界の流行や潮流(トレンド)に適応することではなく、目の前にあるデザインの参照点であり、すべての端緒となる「The Original」をたどること。そしてあらためて見つめ直すことは、デザインの時間を超えた文脈と、それらを生み出したデザイナーたちとのつながりをもたらすでしょう。
会場では、デザインの第一線で活躍する3名—本展ディレクターの土田、企画原案の深澤直人と企画協力の田代かおるによって選ばれた約150点のプロダクトを展示。家具、食器からテキスタイルや玩具などの「The Original」が並びます。あわせてその魅力を伝える写真やテキスト、選考過程や関係性を説明する資料などを通して、「The Original」の背景にある考え方をあますところなく紹介します。
私たちの日常にあるデザインをつぶさに見ていくと、創造の原点となったものは個人と社会のヴィジョンの交点に生まれてきたとも言えます。それらに「The Original」として再び目を向けることが、未来のデザインを生み出し、思考や行動の可能性を広げることにつながると信じています。

タイトル
企画展「The Original」

会期 2023年3月3日(金) - 6月25日(日)
会場 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
休館日 火曜日(3月21日は開館)
開館時間 10:00 - 19:00 (入場は18:30まで)
入場料 一般1,400円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
主催 21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援 文化庁、経済産業省、港区教育委員会
特別協賛 三井不動産株式会社

展覧会ディレクター 土田貴宏
企画原案 深澤直人
アートディレクター 佐藤 卓
グラフィックデザイン 飯田将平(ido)
会場構成 吉田裕美佳(FLOOAT, Inc.)
企画協力 田代かおる
写真 ゴッティンガム

21_21 DESIGN SIGHTディレクター 佐藤 卓、深澤直人
アソシエイトディレクター 川上典李子
プログラム・マネージャー 中洞貴子
プログラム・オフィサー 石井潤美、鈴木麻耶

ディレクター
ディレクターズ・メッセージ

私たちの暮らしを取り囲む、きわめて多様なデザインの数々。それらのなかで、オリジナルという言葉にふさわしいものはどれくらい存在するでしょうか。確かな独創性と根源的な魅力、そして純粋さ、大胆さ、力強さをそなえたデザイナーによるプロダクトを、この展覧会では「The Original」と呼びたいと思います。

The Originalは、ひとつの点にたとえることができます。その点に十分な影響力があれば、点は線へ、さらに面へと展開するでしょう。つまり後に続くいくつものデザインが、原点に対するバリエーションとして長期にわたり生まれていきます。やがてひとつの点は、時代の中で見えにくくなってしまうかもしれません。しかし生活を本質的に豊かにしたのはThe Originalであり、そこに宿ったオリジナリティの力です。

オリジナリティという概念は、さまざまに解釈することができます。そもそもあらゆるデザインには、何らかのオリジナリティがそなわっているようにも思えます。だからこそ、この展覧会であらためて紹介するのは、既存のプロダクトから現在の視点によって見出した「これはThe Originalではないか?」と考えられるものです。つまり1点1点の展示品はそれを観る人への問いかけであって、必ずしも歴然とした答えではありません。テキストや展示空間はじめ展覧会全体を通して、このテーマの輪郭を明らかにできたらと思います。

デザインにおいて「歴史に学ぶ」とは、過去のThe Originalに追従することではなく、そのすごさに触れた上で新しいThe Originalに挑むことではないでしょうか。デザインの意味がどれほど変化し、また拡張しても、こうした循環はきっと変わりません。The Originalは、揺れ動く時代においてなお、立ち返るべきところとしての重要性を高めていくはずです。

土田貴宏

プロフィール
土田貴宏 Takahiro Tsuchida
デザインジャーナリスト、ライター。
1970年、北海道生まれ。会社員を経て2001年からフリーランスで活動。国内外での数多くの取材やリサーチをもとに専門誌などに寄稿している。コンテンポラリーデザインを主なテーマとして、家具、インテリア、日用品について書くことが多い。東京藝術大学、専門学校桑沢デザイン研究所で非常勤講師を務める。近著『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』(PRINT & BUILD)。

企画原案
本展に寄せて

何がオリジナルかわからない時代が来た。真似、コピー、影響とかオマージュ。オリジナルではないものにさまざまな言い方がある。この中で積極的真似ではない言葉と現象が「影響」である。

影響は受けないわけにはいかない。避けられない。それくらいオリジナルに感動し引き込まれてしまうのである。これを意図的に避けて何かをデザインしようとしても、自然の発想とは異なる。影響は流行を生み、増殖が早い。
そんななかにあって、なかなか真似できないオリジナルがある。オリジナリティが強すぎてそのかたちが2度と使えないのである。もちろんそのオリジナルはすこぶる良いもので、デザインという言葉が誕生した頃に、同じくして生み出されたものが多い。しかし最近の社会がデザインに無頓着になったせいか、何がオリジナルで何が真似かなどはどうでもよくなってきてしまったきらいがある。おそらくオリジナルの良いデザインをあまり知らないのではないかと思う。それは勿体ないと思い、この展覧会を企画した。

オリジナルのすばらしさを感じて欲しいのと、一緒に感動を分かち合いたいのだ。
最近はデザインのツールが凄まじく進化したせいで、誰もが美しい線やフォルムを生み出せるようになった。しかしそういったコピペのようなものの氾濫が、デザインをつまらなくしているような気もする。

だからもっとオリジナルのすばらしさを知ろう。影響されないように歯をくい縛ろう。オリジナルに嫉妬しよう。いくら偉大なものを生み出した人でも、人生を生きた長さはあまり変わらない。生きているうちにすばらしく真似されないオリジナルを生み出そう。
この展覧会に"The"をつけたのはそんな思いがあってのことだ。「これってオリジナルだよね」という事柄を探すのも楽しいと思う。

深澤直人

「オリジナルである=The Original」と考えるプロダクト約150点を展示

土田と深澤、田代が議論を重ね、根源的な魅力と世の中に深く影響を与える力をそなえ、「オリジナルである=The Original」と考えるプロダクト約150点を、テキストや写真などとともに一同に紹介します。19世紀後半から現在のものまでを展示し、ひとつひとつのデザインの魅力を問い直します。

「知られざる名作」を紹介
展示品にはデザインの歴史をつくってきた名作が多数含まれます。そのほとんどはロングセラーまたは復刻生産されており、世の中に流通している量産品です。本展ではそれらのプロダクトを「The Original」という切り口で捉えます。ヴェルナー・マックス・モーザーによる椅子「モーザー」、ジオ・ポンティによるドアハンドル「ラーマ」、トゥルーデ・ペートリによる「ウルビーノ」など、世界的な評価は高いものの日本ではほとんど流通してこなかった「知られざる名作」と呼べるものも紹介します。

近年のプロダクトも「The Original」として紹介
知名度の高いデザインの歴史上の「The Original」だけでなく、それに並ぶものとして2000年代以降に生まれたプロダクトも同じひとつの流れにあるものとして扱います。見極めにくい現在進行形のデザインの流れをつかむことができるでしょう。

展示プロダクトの写真約50点を大きくレイアウトしたグラフィックの展示や、ギャラリーの中に部屋のような空間再現も
会場内壁面のグラフィックには、写真家ゴッティンガムが本展のために撮影した展示品約50点の写真を大きくレイアウトしています。実物と合わせてそれらの写真をご覧いただくことで、肉眼とも異なった視点で各プロダクトの魅力を存分に感じ取っていただけることでしょう。

また、一部のプロダクトは、実際の生活で使用する様子を体感できるよう、インテリアデザイナー吉田裕美佳のスタイリングにより部屋のように再現したインスタレーションの中で紹介します。


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