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博物図譜展~博物の肖像画~(武蔵野市立吉祥寺美術館・2004年5月)

2004.05.19 Wednesday
武蔵野市立吉祥寺美術館は、吉祥寺伊勢丹(現:コピス吉祥寺)の中にある美術館。

「美術館と呼べるかどうかわからないほど小さな美術館」という触れ込みだったが、なかなか立派な美術館だった。

わたしはライフワークとして、植物画(ボタニカルアート)を描いている。

ボタニカルアートが植物の肖像画だとしたら、博物画は名の通り「博物(自然に広く存在するもの)」の肖像画。
植物画も博物画の一種である。

博物画(はくぶつが、英: natural history illustration)もしくは図鑑絵・図譜・画譜とは、動物・植物および鉱物などの観察対象の姿を詳細に記録するために描かれる絵である。植物画(英: botanical art)と動物画(英: zoological art)に大別され、動物画はさらに外形を描く肖像画(英: portrait)と内部を描く解剖画(英: anatomical art)に区分される

博物画とは「真実を写すもの」・・・写真技術のなかった時代に、そのものを正確に伝えるために描かれたのが始まり。それは当然、写真の登場によって存在意義は失われたように思われがち。

しかし博物画は、ただ自然の事物を「正確に写したもの」というだけにとどまらない。美しさや輝きを放つ芸術作品にまで昇華しているものが多いという。その存在意義の大きさを再認識させられる機会が多くなってきている。

日本の植物学の父と呼ばれる牧野富太郎博士の神技のような『ムナジモ』の植物図譜、博物画御三家と呼ばれる関根雲停、服部雪斎、中島仰山などの博物画。

特に、雪斎の植物の絵は素晴らしかった。仰山の動物の絵も、もちろんすごいし、平木政次の絵の細密さも素晴らしい。

これらの絵は、それぞれ高知県立牧野植物園、国立科学博物館、玉川大学教育博物館の所蔵である。

余談ではあるが、上野には「国立科学博物館」と「東京国立博物館」があってちょっとややこしい。このふたつはもともと1つの博物館が途中でふたつに分かれた博物館なのだそうだ。

特に関東大震災で資料をすべて失った科学博物館は、国立博物館に資料を譲り受けて再出発していると言う経緯がある。この二つの博物館の間には、今までに何度も資料の行き来があったそうである。

ところで日本では、植物画=ボタニカル・アートという言葉は随分浸透している。

欧米では、植物図=ボタニカル・イラストレーションと植物画=ボタニカル・アートを明確に区別しているそうなのだ。

つまり、植物図(ボタニカル・イラストレーション)は「学術的に正確さを極めたもの」、植物画(ボタニカルアート)は、そこに「芸術的な要素」が含まれ「目で見て楽しめるもの」。そういった違いがあるそうである。

もともと「イラストレーション」とは「絵」ではなく「図」のことだという。イラストレーターとは「何かを説明する図」を描く仕事であるとスクールで聞いたことがある。

わたしの描いていたものは完全に「アート」のほう。自分で「アート」というのはおこがましいけど、「イラストレーション」と呼ぶハードルが高すぎるんだから、仕方がない。

シクラメン(2002年)
カイツブリ(2013年)


この美術館、企画展以外に二つの記念室での展示も見られて、なかなか見ごたえがある。これで¥100って、安すぎ・・・(笑)

記念室の展示は、4/1~7/27までは以下の展示が見られる。
浜口陽三記念室・・・『続・原版にみる浜口陽三の技術』
萩原英雄記念室・・・『続・萩原英雄60年代の傑作』

萩原さんのは抽象的な木版画で、ちょっとわたしには難解。
浜口さんのはすごい。メゾティントという技法を使った銅版画。多色刷りの版画なのです。重なって絵になっていくのがすごく繊細な技術で、ほおぉぉぉぉぉ~って感じだった。


武蔵野市立「吉祥寺美術館」
〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目8番16号
FFビル7階(コピス吉祥寺A館7階)
開館時間:10:00〜19:30
音楽室:9:00〜21:00
休館日:毎月最終水曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
*展示替および施設の保守点検等のため、臨時に休館することがあります。
入館料
常設展:100円
企画展:300円(一般)、100円(中高生)
※ 企画展の料金には常設展の料金を含みます
※ 小学生以下・65歳以上・障がい者は無料

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