鍼治療と整形外科
わたしは定期的に鍼治療を受けています。
おもに腰のコリを解消するために腰まわりに鍼を打ってもらっています。大腰筋などの筋肉に直接に鍼を刺してもらうのですが、驚くほど効果があります。
鍼は、とても細いので刺したときのチクっとする痛みはほとんどありません。そのかわり硬結した筋肉に刺さると、ずずーん、と筋肉を直接マッサージされるような強い感覚が得られます。私は、これを痛気持ちいいと感じます。ストレッチやマッサージと同じような感覚です。
ストレッチや鍼では、痛みもあるけれども、ぽわーんと気持ち良い感覚がでますよね。エンドルフィンの効用でしょうか、非常に気持ち良いです。
逆に硬結していない筋肉に刺しても何の反応もありません。
で、面白いのが、そのまま鍼を1時間ほど刺したままにしておくと、だんだん硬結した筋肉がゆるんできます。翌日は筋肉痛のような感じで非常にだるいのですが、翌々日になると、めっちゃすっきりします。
とくにゴリゴリに凝り固まったツボ (最近はトリガーポイントとも言われます)に刺さると、「うひゃあ」って声を上げてしまうくらい強い反応があるのですが、そうなると勝利です。腰痛も吹っ飛びます。緊張型頭痛なんか一瞬で治ります。
硬結した筋肉に直接に鍼を刺す治療法は日本では「北京堂」という流派が有名ですが、他にもやっている先生はいるようなので、「大腰筋 鍼」などで検索すればお近くの鍼灸師が見つかるかもしれません。
鍼治療はしばしば「東洋医学」に分類されますが、私はそれはちょっと残念であると思います。
2024年に古代の文献を学ばされても、難解で理解に苦しむし、患者さんにも伝わらないでしょう。
「硬くなった筋肉のゴリゴリに刺して、しばらく鍼を置いておくと、筋肉が緩む」という経験則があるのであり、そこを重視して、実験を重ね、現代医学の一部として捉えなおすことが必要であると考えます。
北京堂の創始者である浅野先生は、中国の現代の文献を翻訳し、また古代の文献や知恵を現代的にひもとくという活動をされています。
さきほどのトリガーポイントの記事にもありますが、古代から言われている鍼灸のツボというのは、トリガーポイントと一致すると言われており、古代の理論も荒唐無稽というわけではないのです。役に立つ知恵が沢山あると言われています。
日本の薬学の父である長井長義先生は、漢方薬の麻黄から、現代でも使われる重要な薬であるエフェドリンを発見し、さらには覚醒剤のメタンフェタミンをも発見しました。
ノーベル賞を受賞した中国の学者は、忘れ去られた古い漢方薬から、マラリア治療に革命的効果のあるアルテミシニンを発見しました。
古代の知恵はバカになりません。おもに植物から薬を作っていた時代、西洋国家は、世界各地に「プラントハンター」と呼ばれる探検家兼学者を送り込み、現地の伝統医療を調べて、呪術師やシャーマンなどと呼ばれる人からも情報を得て、薬効のある植物を採取していました。
ですが、難解な古代の概念は捨てて、現代人にとって分かりやすい現代医学の言葉に翻訳していく作業が必要と考えます。
いまは鍼というとそれほど知名度がなく、まず身体が痛くなったら整形外科に行くのが普通でしょう。
残念ながらほとんどの整形外科医は、骨の治療を専門としており、筋肉の硬結に対してはなすすべもありません。
トリガーポイント注射や筋膜リリース注射やドライニードリングなどの鍼灸に類似した治療法や、ブロック注射などの治療法はあることはありますが、ほとんどの整形外科医は実践していません。湿布をだして終わりです。
整形外科医は、自分で鍼治療を受けてみるべきであり、患者が筋肉の硬結に苦しんでることがわかれば、積極的に鍼治療を受けるように紹介すべきであると考えます。
鍼の効果と即効性を身をもって知ったら、整形外科医は驚くでしょう。湿布を出して終わりにしてたのはなんだったんだと。腰痛が一瞬で治るじゃないかと。
逆に鍼灸師の側も、頑張って実験を積み重ねて、論文を書き、現代医学の一部として、より広く認められるように努力すべきでしょう。