天と地が青さを競い合う|ウズベキスタン2023 #3
前回:サマルカンドは右も左もティムール
ビビハニムモスク 掃除中
朝、宿で朝食。家族でやっている小さな宿なので、どこが食堂なのだろうと思っていたが、まさかの中庭。さすがほとんど雨の降らない国。
しっかりめの食事をしていると、宿のおじさんが隣に座って話しかけてくる。英語が通じないのでお互いスマホのGoogle 翻訳越しに「タクシーを呼ぼうか?」「両替は大丈夫か?」などいろいろと世話を焼いてくれた。親切を感じて、朝からテンションが上がる。
この日はサマルカンドの北東方面の散策。まず向かったのはビビハニムモスク。ティムールの最愛の妻の名を冠したモスクである。隣にはシヨブバザールというサマルカンド最大のバザールもあり、旅行者向けの店が並ぶスポットだ。
そこには宿から出てまっすぐ北に向かえばよいのだが、そこは方向音痴、旅行者向けどころか生活感あふれる住宅街を抜け、バザールの裏口に出た。商品をバザールに搬入しているウズベキおじさん達の横を抜け、ビビハニムモスクの裏手から大きく迂回してようやく入口に辿り着いた。
ビビハニムモスクは、これまた巨大な建築。朝ということもあってか、観光客も少なく、ゆったり見学することができた。朝のテンションもあり、自撮りに精を出す。
モスク中央には巨大なラウヒ(コーランを置く書見台)がある。ティムールが侵攻した先から持ってきたものだそうだ。おじさん達がしっかり掃除をしており、このモスクの日常を感じる。
ウルグベク天文台 徒歩
ビビハニムモスクを出て、まだ体力のあるうちにと郊外にあるウルグベク天文台へ。
遠い。ひたすら遠い。距離は4~5kmだが、炎天下の何も無い道の先なのでより長く感じる。
宿のおじさんの「タクシーを呼ぼうか」は、果たして正しかった。
ようやく到着したウルグベク天文台。なぜか欧米からのツアー一行と一緒に見学してまわる。
ウルグベクというのは、ティムールの孫でティムール朝君主の4代目あたる人物。サマルカンドの建築・文化に力を入れた人で、自身も優れた天文学者でもあったという、完璧超人。
そんなウルグベクの天文台は、当時世界最大の四分儀があり、そのレールが現在も残されているほか、ウルグベクの小さい博物館が併設されている。博物館内では、ツアーガイドの各国言語の声が響いていた。言葉の意味は分からねど、完璧超人ウルグベクの功績を讃えていることを想像する。
天文台を後に来た道を戻る。もはやこの段階で辛いが、ここまできてタクシーを呼ぶのは負けた気がするのでそのまま徒歩である。いったい何と戦っているのか。
戻る途中、ダニエル廟に立ち寄る。ダニエルというと欧米系の名前だが、その元祖と言われるのはこのダニエルさんだそう。旧約聖書の聖人とのことで、聖人の遺体をティムールが持って帰ってきて祀ったというものらしい。
霊廟なので、当然中にはダニエルの棺がある。ただこの棺、18mあるという巨大なもの。ダニエルの骨が成長するという謎の伝説があるためこの巨大さらしい。そんなもの、なぜ持ってきたティムール。
さておき、聖地であることは間違いないので、巡礼者も多いようで、熱心なおじさんのお祈りの声が響いていた。
ダニエル廟近くの公園で少し休憩を挟む。ウズベキスタンは極端に乾燥しているため、日差しは強烈だが、日陰に入ればかなり涼しい。室内にいるよりも風が抜ける東屋の方が快適なのだ。
もう一つ、街中にに戻る途中でアフラシャブ博物館に立ち寄り。アフラシャブというのは昔に街の中心部があった場所で、チンギスハーンに破壊されて廃墟となった場所。その後ティムールによって現在のサマルカンドが作られた。
そのためアフラシャブは掘れば掘っただけチンギスハーン以前の遺跡が出てくるため、それらを展示しているのがこの博物館である。目玉となるのは巨大なフレスコ画で、シルクロードの中継地として栄えた当時の様子が描かれている。
シャーヒズィンダ廟群 競い合う
ようやく街中に戻ってきて、レギスタン広場と並びサマルカンドを代表するシャーヒズィンダ廟群へ向かう。廟群と言う通り、いくつかの廟が連なっているのだが、ここの見どころは視界を埋め尽くす青いタイルの数々。
サマルカンドは「天と地が、その青さを競い合う」という言葉があるくらい、美しい青。サマルカンドブルーと呼ばれ、泣く子も黙る”映える”場所である。
夢中になって写真を撮ったが、この青さを表現するのはなかなか難しい。目一杯に広がるサマルカンドブルーの世界は、現地に行ってこそと感じた。これだから旅も写真もやめられない。
美しい青さを目に焼き付けながらも、また来たいと思いながら廟群を後にした。
日本人が珍しい
時刻は夕方、レギスタン広場に戻ってきた。さすがに往復10km以上の徒歩の疲れから、広々した公園の木陰で休んでいた。
と、そこへ学校帰りらしき中学生くらいの少年が近付いてきた。やはり日本人が珍しいらしく、カタコトの英語で言葉を交わす。そしてスマホでどこかに電話をかけて、僕にしゃべってみろとせがんでくる。
珍しい日本人を友達に紹介したいとか、そんなところと思われる。こうした絡みは面白い話のタネになるので、テンションを上げながら電話の向こうに声をかけてみる。
隣の少年は、その相手のことを紹介したいようで「ビューティフルビューティフル」と言っているので、なるほど少年の彼女か好きな人だろうと察した。
少年は、自分の言う通り電話で話してくれ、と言うので、彼のウズベク語を聞き取りながら、意味の分からぬまま電話で話した。そして少年の次の依頼が、
「I love you.」
「なんでだよ」
思わず笑いながら日本語でツッコんだ。
少年も笑いながら「ロウエンロウエン」と言っている。楽しんでもらったようで良かった。日本人であるだけで珍しい、という体験はなかなか無い。
少年と別れ、宿へと戻った。さすがに昨日今日で20km以上歩いているので、疲れからそのまま眠りについてしまった。
・・・ で、ロウエンって何?
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