ティムールの始まり|ウズベキスタン2023 #2
前回:乱暴な乗り継ぎの果て
アフラシャブ号 まだ移動
ウズベキスタンの首都タシケントで迎えた朝、ホテルの朝食ブッフェをいただく。ウズベキスタン入国後初のまともな食事である。
ちゃんと美味しい。ただ洋風と言っていいのかどうなのか分からないあたりが、中央アジア感なのだろう。
朝食後ホテルをチェックアウトし、再びの移動のためにタシケント南駅へと向かう。今回の旅のメインどころはサマルカンド(ウズベキスタンの京都的な立ち位置の古都)であるのだ。
今回タシケント南駅から高速鉄道アフラシャブ号に乗るわけだが、実はこれは例外的なもの。通常アフラシャブ号はタシケント中心部にあり地下鉄も通っているタシケント北駅に発着する。が、どういうわけか、今回の旅程中では少し離れたタシケント南駅に発着するため、タクシーで向かう必要があるのだ。
というわけで、ホテルの前でタクシー手配。旧ソ連圏で使われているタクシー配車アプリの”Yandex Go”を使用。ウズベキスタンは白タクが多く、昔はタクシーに乗るときに料金交渉が必要だったようだが、このアプリができてから格段に移動が楽になったそうだ。確かに英語が通じない国での料金交渉は大変。
Yandex Go で手配したタクシーに乗り込み、タシケント南駅へと向かう。運転手が何やら話しかけてくるが、さっぱり何言っているかは分からないので、とりあえず「ウズベキスタン、ナイス!」で乗り切る。
タシケント南駅でアフラシャブ号に乗り込む。タシケントを離れると街が点在するものの、街と街の間は荒涼としたステップが続き、シルクロードのオアシスの国ということを実感する。
乗車時間はおよそ3時間ほど。乗車中、新幹線よろしく車内販売があるほか、無料のパンとコーヒーが配られる。そしてそのスタッフの多くが10代半ば〜20代くらいの若者たち。ウズベキスタンは若者が多い国らしく、こんなところでも他の国との違いを見つけることができた。
サマルカンド 徒歩で行くムチャ
昼ごろにサマルカンド駅に到着。サマルカンド市内にはトラムが走っており、鉄道駅から市内中心部までの7kmを巡回している。このトラムに乗っていこうと思っていたのだが、
停留所が分からない。
さらに片道2~3車線の道の中央をトラムが走っており、信号機も無い中をトラムまで近づかなくてはならない。ちょっとこれに乗るには僕のレベルが足りなかった。
この場合、Yandex Go でタクシーを手配することが普通なのだが、僕はなんとなく徒歩で歩きはじめた。7kmの道のりなら歩いていけなくもない。今回、サマルカンドたっぷりコースなので、時間的余裕もあるのだ。
そうして歩き始めて数km。強い日差しに大いにやられる。
ウズベキスタンは世界に二つしかない二重内陸国(隣接する国も内陸国)であり、とにかく乾燥した国。そのため日差しがとにかく強く喉が渇きやすい。日本と違い、日陰に入ると涼しいのが救いではあり、あまり汗もかかないので、そこは良いのではあるが。
道中、海外恒例のウソ日本を楽しみながら、7kmの道のりを歩ききり、中心部へとたどり着いた。己との戦いは一人旅の醍醐味である。
レギスタン広場 ティムール
サマルカンドの中心にあるのがレギスタン広場という、かつてのイスラム教神学校がある場所なのだが、今回その近くにホテルを予約していた。そのため、レギスタン広場を通り抜け、まずはチェックイン。
家族で経営している小さいホテルであるが、比較的安価なことと新しくて綺麗そうなため、今回3泊分を予約していた。ただ英語が通じず、ウズベク語とロシア語のみ。対応してくれた若い女性にパスポートを渡してどうにか鍵を受け取った。
荷物を置き、とりあえずは先ほど通り過ぎたレギスタン広場を見学に行く。
レギスタン広場は、ウズベキスタンで検索すると真っ先に出てくる、この国の象徴的な世界遺産。かつてシルクロードの中継地として栄えていたこの地域が、チンギスハーンの侵略によって破壊され、その後同国のティムールによって再建されたときに建てられたのがこのレギスタンの神学校とのこと。
ティムールと言えば、ティムール朝の創始者であり、世界史最強ランキングにも名を連ねる。チンギスハーン亡き後の中央アジアを取り仕切り、ペルシャを傘下に置くわエジプトマムルーク朝を倒すわインドデリーを占拠するわオスマン帝国を撃退するわと、その最強っぷりが世界史的にも有名。さらにはチンギスハーンに破壊された国を復興させるために、文化人を保護したりしているので人気が高い。
そんなティムールなので、どうやらウズベキスタンの精神的支柱にもなっている模様。あちこちにティムールの遺したものを見ることができ、このレギスタン広場もその一つ。
3つの神学校は、中に入ると大きな中庭がありそれを取り囲むように部屋が並んでいる。かつてはモスクや宿舎、教室だったりしたのだろう、その場所は、現在はお土産屋が並んでいる。
建築を見ていくと、どれも細かなモザイクタイルで埋め尽くされている。イスラム教は偶像崇拝禁止なので、他宗教のような彫像などが無い分、こうした細密な模様を使っているのだろうか。
ただ、とにかく天井が細密なので、見上げていると首がやられる。
レギスタン広場では、夜間にプロジェクションマッピングが行われている日があるらしい。そのため、7km歩いた疲れを日陰のベンチで休みつつ、その時間を待った。
夕方以降になると、旅行客以外の人たちも観にくるようで、広場前はたくさんの地元の若者たちで盛り上がっている。が、どうもこの日はプロジェクションマッピングではなくライトアップのみのようだった。(ライトアップはライトアップで綺麗ではある。)
どうせ近くにホテルをとっているのだから、また来ればいいと思い、ホテルへと戻ると、帰宅したホテルのオーナーのおじさんが出迎えてくれた。背が高く一見強面なおじさんだったが、熱い握手とともに人の良さそうな笑顔を見せてくれた。
ただ相変わらず英語は通じない。
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