その土地に慣れたら始まり|ウズベキスタン2023 #4
前日:とりあえず歩きすぎ
Google翻訳のありがたみ
サマルカンド3日目の朝。今回の旅はもともと、サマルカンドだけではなくブハラやヒヴァにも行く予定だったが、高速鉄道や夜行列車の時間がうまくいかず、結果、サマルカンド3泊4日たっぷりコースである。つまりまだあと1泊ある。
ウズベキスタンの京都的なポジションにあるサマルカンドとはいえ、主要観光地は2泊3日で十分みてまわれるため、ほとんどの場所は前日までにみてしまっていた。そのため今日は休み休み、ゆっくりしよう。
・・・と思っていたのだが、その土地に慣れた3日目くらいに話のネタは起きるものなのだ。
前日と同様に、青空中庭でゆっくり朝食。前日にはいた、宿泊客がおらず、どうも自分一人のようだ。それもあってか、宿のおじさんが食事を出してくれた後、隣に座ってGoogle翻訳を介してのトークが始まった。
「サマルカンドは初めて?」「今日はどこに行く?」「職業は何か?」といった質問と会話を交わす。一問一答なので、Google翻訳を介さずともどうにか会話がつながる。
そしておそらくは定番だろう「結婚はしているのか?」の質問。僕が首をふると、おじさん、「なぜ?」と聞いてくる。
なぜと言われても!
どう答えたものかと考えていると、
おじさん「男が好きなのか?」
いやいやいやいや!!
どうにかGoogle翻訳を駆使して説明したが、果たしておじさんに伝わったかどうか。
グル・アミール廟 当時の職人
前日までに主要な場所はみてしまっていたが、一応一箇所だけ残しておいた。それがグル・アミール廟という、ティムールが埋葬されている廟である。
青いドームの幾何学模様の装飾が、立体的で超細密なタイルで覆われており、作った人が「やってられるか!」とならなかったが心配になるほどの美しさ。
そして中の霊廟は、所狭しと黄金のタイルで装飾されており、中央にあるティムールの墓石を彩っていた。これもこれで「こっちもかよ!もうやってられねぇ!」と建築時の様子が思い浮かぶ。
と、当時の職人の想像をしながら廟を見て回っていると、団体客がワイワイと入ってきた。3日ぶりに聞く日本語から、日本人客であることが分かった。顔を向けると、
・・・同じ飛行機で来た人たちじゃん。
初日の韓国経由の便で、仁川空港で45分乗り継ぎをした仲間であった。以前ウズベキスタンを訪れた友人が言っていた「ウズベキスタンは観光地が限られているから、だいたいみんな同じ行程になる」というのは、果たして本当だった。(なお、この団体客とは、行く先々で遭遇し、最後の帰りの便も同じになる。)
団体客の一人と少し言葉を交わして別れ、再び建物正面で写真を撮っていると、今度はテンション高めの欧米系バックパッカー兄さんに話しかけられた。
「Hey! ちょっと写真を撮ってくれないかい!?自撮りをしようとしたんだけど、僕の腕はそれほど長くなくてね!HAHAHA!」(もちろん英語。)
オーバーなアクションとテンションの高さから、なんとなくアメリカ人を想像してしまうが、実際のところは分からない。聞いておけばよかった。
ともあれ、オーバーなポーズの彼を何枚か撮影し、スマホを返すと、これまたオーバーリアクションで、
「Amazing! なんて素晴らしい写真なんだ!キミは最高のフォログラファーだな!ありがとう!!」
と満足げに去っていった。
悪い気はしない。いやむしろ、めっちゃ嬉しい。
サマルカンド・セントラルパーク 地元女子学生
グル・アミール廟を出ると、まだ午前10時ごろだというのに、すでにやることがなくなってしまった。前日・前々日に歩きすぎたことによる足の痛みもあるため、グル・アミール廟の近くのセントラルパークを散歩しつつ、木陰で休憩することにした。
すると今度は、地元の女子大学生二人組に話しかけられた。英語で「どこから来たのか?」「英語は話せるか?」などと言葉を交わしていくと、
「サマルカンドの観光を勉強しているから、旅行者の意見として、サマルカンドの魅力をおしえてほしい。」
との、しっかりした質問。後で友人から聞いたことがだが、この周辺は学校が多く、特に外国語大学に通う学生は、学んだ英語が通じるかを旅行者と会話したいことが多いらしい。
ともかく、詐欺では無さそうだと考え、質問に対してそれっぽい回答を返した。すると今度は、
「どうもありがとう。とても参考になった。できれば今の話を動画でして欲しいのだけど、、、」
動画で?
さすがに、僕の適当英語が記録に残るのは恥ずかしいが過ぎる。やんわり断ると、彼女たちは残念そうにしながらも「Thank you. Have a nice trip.」と言って去っていった。
応えてあげた方が、話のネタにはなっただろうか・・・?
2周目の始まり
女子学生たちと別れたのち、急にお腹の具合が悪くなる。これは女子学生の動画を断ったバチが当たったか。
ウズベキスタンのトイレ事情として、公衆トイレはあるが基本有料で、側にいる謎のおばさんに数円を渡して利用する。水洗ではあるが紙は流せずゴミ箱に入れるシステム。また、トイレの紙は紙やすりのように硬いので、日本の感覚で拭くとお尻が破ける。
そんなトイレ事情なので、できるだけ綺麗なトイレで快適に事を成したい。ただお腹も急を要する事態のため、近くで確実にあるトイレに向かいたい。
グル・アミール廟(2回目)
まさかこんな短時間で再訪するとは思わなかった。トイレ前の謎のおばさんにお金を渡し中に入ると、まさかの個室の壁がないトイレ。昔、ネタであったニーハオトイレを、こんなところで体験することになるとは。
幸い他の利用者はいなかったため、事を成しはじめた。
・・・が、ドアを開けて白人の旅行者が入ってきた。どうしようかとしていると、彼は「No probrem.」と、空いているトイレで事を成しはじめた。確かに彼の姿にはNo probrem感しかない。
とてもNo probremだったグル・アミール廟を出て落ち着いたところで、このどうにもならなさが海外旅だよな、と思いつつ、なんだか笑えてきた。
ある意味で開き直り、残り半日、サマルカンド2周目が始まる。